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後宮の魔女〜輿入れした薬学魔法マニア妃は宮中を魔改造ならぬ魔法改造する〜  作者: 朱坂卿
第八症 妖樹公主による母性依存症及び雪獅子妃・不可殺王女との合併症 
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#31 後宮大陸代理戦争

「妖樹が……師匠、これって」

「ええ、また活動再開って所かしら……行くわ、去魔ちゃん!」


 私は去魔を促し。

 屋根上を走り、妖樹の元へと急ぐ!


「来たわね……後宮魔女!」

「! し、師匠! 枝がこちらに!」


 おっと!

 妖樹め、私に枝を早速向けて来た!


「玉帝有勅、神硯四方! 金精(エーテル)木精(シルフ)所司五行之木、急急如律令!」


 私はすぐさま、そこに薬をお見舞いし。

 たちまち枝は、枯れていく。


「あの妖樹……厄介さは随一だけど、力の大きさはそうでもないから何とかならなくもなさげよ!」


 とはいえ。

 やはり今も、枝葉にしか薬が届いていないから全て枯らすには至っていない。


 だから。


「後は根本に届かせることさえできれば、この妖樹は攻略できるわ!」

「ふふ……さて、どうかしらっ!」

「え? ……く!」

「! し、師匠!」


 私はそう考えたけど。

 その次の瞬間には妖樹公主の声と共に、何かが放たれた。


 それは。


「む!? 今のは……氷塊!?」

「ええ……私には今、強い味方がいるのよ! さあ、誰だかあなたならわかるでしょ!」


 ……なるほどね。

 この時私は、初めて知った。


 雪獅子妃――すなわち、ミンマー妃が(色んな意味で)取り込まれているって!


 だけど私の考えは、そこでは止まらなかった。


「それじゃあ、不可殺王女――保明妃も……? まったく……嫌な予感が的中したじゃない! これじゃあまるで」


 私は歯軋りをしながら、妖樹を睨み。


「この後宮は……小さな大陸よ!」

「ほほ!」


 そう言い放ったら妖樹からは、妖樹公主の笑い声が響くわ!


「小さな大陸とは言い得て妙ね! ……ええええ、これは大錦を滅ぼすための戦いよ!」


 妖樹公主は自分が毘那妃であること――ひいては、保明妃とミンマー妃を半ば強引に取り込んで三国手を組んでいることを悟らせまいとしてか、ややぼかして発言をする。


「そうよ、この後宮――ひいては都を潰せば大錦の力は大きく削がれる! だから……あなたに邪魔される訳にはいかないのよ後宮魔女!」

「む! く……金精(エーテル)木精(シルフ)所司五行之木、急急如律令!」


 くっ、妖樹公主!

 私にこれまでの怒りの全てをぶつけようとしてか、渾身の力を込めた枝を私に振り下ろして来た!


 まあ私も、そこに薬を食らわせて枝を枯らして上げたけどね!


「ほほほ……いいのかしら、そんな攻めばかりで?」

「何ですって? ……くう!」


 ……と、思ったら。

 何と、さっき枯らした枝に生気が戻ったかと思えば枝中に口が無数について蠢き。


 私に、噛みつこうとして来た!


「む……金精(エーテル)木精(シルフ)所司五行之木、急急如律令!」

「ほほほほ、だから無理よ! もうその薬はこの妖樹には効かないわ、克服したからねえ!」


 く……本当ね!

 この枝、というか妖樹にいくらさっきまでの薬を与えても与えても。


 まったく効かないわ!


 これは。


「……樹が、薬に慣れて来たってことかしら!」


 私は歯軋りする。


「さあさあ、どうしたのかしら! 改めて枝がつける不可殺の口と雪獅子の冷気に、ひれ伏しなさい!」

「く! さ、寒い!」


 そうしていたら。

 妖樹の枝は、周囲に冷気を撒き散らし。


 更にはさっきから枝に無数につく口で、尚も噛みつこうとして来る!


「ああもう! これは、ジリジリ相手してるだけじゃしゃーがないわね……」


 だけど私も、やられっぱなしでは済まさないわ。


「……玉帝有勅、神硯四方! 土精(ノーム)所司五行之土……」


 私は呪文を唱えながら、別の薬を周りの枝にぶち撒けた!


「ほほほほ、何を血迷ったのかしら後宮魔女! やぶれかぶれに別の薬を打ち込んだって、何もならないのよ?」


 ええ、油断してくれてるみたいね。

 よかった……油断してくれれば足元も掬いやすいと言うものよ!


「……生金精(エーテル)木精(シルフ)所司五行之木、急急如律令!」

「ん!? こ、これは……ぐう!?」


 そこで私は、更に魔法を発動させた。

 そう、このやり方はまだ慣れてないでしょ?


 今薬を食らった枝が、みるみる枯れて行くものねえ!


「ふん、なるほど油断したわ……だけど!」


 む!?

 また枝が、生気を取り戻して行く!?


「甘いわ……私の妖樹ちゃんが持っている性は、今や一つじゃないって忘れたかしら!?」


 そ、そうかつまり……

 取り込んでいる雪獅子妃か不可殺王女、あるいはその両方で妖樹が苦手とする薬の力を無効化することもできるってことね!


「さあ後宮魔女……どうしたの!? もう、打つ手がないのかしら!?」


 むう、また蘇った枝が!

 私に向かい、攻め入って来るわ!


 このままじゃ――


「えいっ!」

「ん!? これは……薬?」


 と、その時。

 私に迫り来る枝に、上から薬が撒かれた!


「師匠、離れて下さい!」

「!? き、去魔ちゃん!」

「玉帝有勅、神硯四方! 木精(シルフ)所司五行之木……」


 き、去魔!

 え、木精(シルフ)の薬!?


 いやいやいや、そんなことしたら!

 妖樹と相性良すぎて枯らせないわ!


「……生火精(サラマンダー)使木精(シルフ)所司五行之木燃!」

「ぐっ!? あ、熱い……熱い!」


 と、思ったら。

 あ、あら……こ、こういうことなのね……


「今です、師匠! 一旦退却しましょう!」

「え、ええ……わ、分かったわ!」


 あ、あなたにしては中々やるじゃない去魔……

 私は、そのまま。


 去魔に手を引かれ、屋根下へと潜って行く。


 ◆◇


「ありがとう、去魔ちゃん。」

「い、いえそんな……」


 私が褒めると、あら去魔ったら。

 顔を赤らめて、頭を掻いてる。


 ふふ、可愛い。


「く、後宮魔女お! よくも……でも無駄だったわね! 火なんて、雪獅子妃の力を使えばすぐ無効化できんのよ? さあて……お礼に、もっとあなたたちにはやりづらい状況にしてあげるわ!」


 と、睦み合っている暇もなく。

 妖樹公主から、そんな声が発せられた!


「や、やりづらい状況ですって?」

「し、師匠! あ、あれは!」

「え……あ!? あれは」


 私と去魔が、物陰から覗き込むと何と。


「よ、妖樹公主様の邪魔はさせん……」

「こ、この樹には手出しさせぬ……」


 それは妖樹の、根本辺り。

 そこに妖樹が、枝で掴んで次々と降ろし行くのは。


 昼間、妖樹の甘い汁に毒されていた阿青や我吽ら宦官に宮女たちにお妃方だった!


「もしかしたら……千里の眼薬、力を貸して。玉帝有勅、神硯四方……木精(シルフ)司五塵之色、視千里、急急如律令!」

「師匠!」


 私はそれを見て、ふと思う所があり。

 千里の眼薬を差した!


 ◆◇


「へ、陛下……兵たちを押し留めていた者たちが、妖樹により連れ去られました。」

「うむ……」


 その頃。

 玉座の間ではまだ起きていらした陛下や麗零様、さらに超金剛様が。


 兵たちも起きていて、今の今まで妖樹の動きを阿青たちに邪魔されつつも睨んでいたようだわ。


 と、その時。


「へ、陛下! お逃げ下さ……ぐあ!」

「な……何だこれは!?」


 玉座の間に兵が駆け込んで陛下を守ろうとするけど。

 そこに飛び込んで来た妖樹の枝により払い除けられ。


 その枝からは、甘い匂いがする汁が。


 そう、阿青たちを毒したあの汁――甘いといっても果物や樹液の甘さじゃない、何か懐かしい自分の生の初めに聞いたような甘さを持つ汁――が。


「……陛下。私、その汁を飲んでみたいです……」

「ああ正妃よ、私もだ……」

「わ、私もです……」


 ……だめよ、陛下たち!

 く、このままじゃ!



 ◆◇


「まずいわ、陛下や麗零様や超金剛様まであの妖樹の根本にいる人たちみたいになっちゃう!」

「え!? そ、そんな……」


 千里の眼薬でそれを知った私は、歯軋りする。

 そう、このままじゃ。


「あの妖樹の根本に今から調合する薬を食らわせれば、一発で終わるんでしょうけど……ああやって人々を置いて守っている以上、少しでもこちらがそれを疑われたらあの人たちの命が危ないわ。」

「そ、そんな……」


 ええ、あの人たちは厄介ね。

 だけど、守らなくちゃいけない。


 今すぐにでも、夢幻の香で眠ってもらわないと――


「……でも、その後は? 眠らせても、根本にそのまま倒れ込んじゃう以上は結局妖樹公主に肉の壁にされてしまうわ……」

「い、いや師匠肉の壁って……な、なかなかえげつないこと言ってますよ?」


 あ、ごめんなさい……

 私ったら、また育てじゃなくて育ちの悪さが出ちゃったわ……


 い、いやでもね!


「わ、私が言いたかったのは! む、夢幻の香であの人たちを眠らせても意味ないんじゃないかって……ん!?」

「え、し、師匠?」


 私はそこで、ふと声を上げた。


 ◆◇


「ほほ、さあどうするのかしら後宮魔女! このままじゃ」

「玉帝有勅、神硯四方! 土精(ノーム)所司五志之思、夢幻之香使人眠! 急急如律令!」

「む!? ……あら、これは。」


 妖樹公主が、私を煽っていると。

 私が焚いた夢幻之香の煙が、妖樹の根本一帯に立ち込め。


「妖樹公主様に手を出すな……あ、ね、眠気が……」

「ああ、パタリ。おやすみなさい……」


 根本の人たちは、眠りこけた。


「あら……ひとまずは眠らせたのね、後宮魔女。」

「ええ、そうよ……」


 私はそうして、屋根上に出た。


「このままただでは済ませません妖樹公主、さあ……これで終わりにしましょう!」


 言うが早いか、私は。

 走り出した!


「師匠!」

「我が弟子……ちゃんと着いて来なさい!」


 その後ろには。

 去魔の姿も。


「ほほほほ、ええええ、いいわいいわ! さあ……かかって来なさい後宮魔女!」


 妖樹公主も、歓迎してやるとばかりに。

 枝を伸ばし、そこに無数の口を現してパクパクさせ。


 更に、冷気を周囲に立ち込めさせた!


「ええ……言われなくても今向かってあげてるわ!」


 私は薬の瓶を取り出し。

 妖樹の懐に、飛び込まん勢いで走る――

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