表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
後宮の魔女〜輿入れした薬学魔法マニア妃は宮中を魔改造ならぬ魔法改造する〜  作者: 朱坂卿
第五症 狼祖母の子による腐敗体質
19/40

#19 腐敗体質の治療①

「し、師匠が……あの血みどろの戦いの方に出向かれるってことですか!?」

「ええ……そうよ!」


 私に去魔はそう聞いて来たから、いっそ毅然と言い放ったわ。


 そう、私は北の郡に――禄斬が暴れている最前線に行く。


 だから去魔、あなたは――この時の見立てではだけど――まだ安心なここで、戦いをお願いするわ。


「ま、また子供扱いですか師匠!」

「いい加減になさい去魔ちゃん! ……いい? 本当だったら、この後宮でだって矢面に立たせたくない。でも、私はあなたと自分しか動かせないからあなたにここを任せる! これが最大限の譲歩よ、分かった?」

「師匠……」


 ええ、去魔。

 あなたのがっかりした顔を見るのは私も辛いけど、どうか分かって!


「それじゃあ私は行くわ……さあ、使い魔!」


 私はそうして、薬学魔法により。

 無数の蝶を呼び出して、その上に乗って。


 北の郡へ飛んで行く。


「もう、師匠は……後で覚えていてくださいよ!」


 あら、一体何を覚えていろって?

 まったく……あなた上下関係がなってないわよ!


 私はそう心の中で言いながら、都を後にした。


 ◆◇


「きゃああ!」

「衛兵らよ、早く持ち場につけ!」

「陛下、危のうございます! お下がりを!」


 その頃、後宮では。

 狼たちによって他の妃たちや宮女たちは大混乱。


 衛兵たちがようやく、武器を取って持ち場についた頃ね。


「……玉帝有勅、神硯四方! 金精(エーテル)木精(シルフ)所司五神之魂――薬克妖、急急如律令!」

「! あら……?」

「な!? こ、これは」


 と、そこへ。

 突如として、薬学魔法が発動し。


 数多の狼たちが、消滅していく!

 それは。


「妖魔たち……お待たせしましたね!」

「おお、そなたは!」

「こ、後宮魔女!」


 後宮魔女の装いをした、去魔が薬学魔法を使ったからよ!


金精(エーテル)木精(シルフ)所司五神之魂――薬克妖、急急如律令!」

「おお……さすがは後宮魔女! 狼たちを薬の力で消していくぞ!」

「え、ええそうですわね……」


 またも去魔――偽後宮魔女が薬で狼たちを撃退して行くのを陛下は純粋に喜んでくださっているけど。


 麗零様は、やっぱり面白くなさそうなお顔ね……

 でも、しゃーがないことですからね?


 わざと禄斬を泳がせたんだか何だか知りませんけど。


 そんな格好つけても既に事態があなた様方の手を離れているという事実に変わりはなくて、私や去魔や兵士たちがその尻拭いしなきゃいけないのが今なんですから弁えてください!


 ◆◇


「ははは、どうしたどうした国悌の忌まわしき軍よ! 左様なことで私に勝てるなどと思うてか!」

「……玉帝有勅、神硯四方! 金精(エーテル)木精(シルフ)所司五神之魂――薬克妖、急急如律令!」

「な……ぐう!」


 その頃。

 禄斬率いる反乱軍が暴虐の限りを尽くす北の郡でも、後宮で唱えられたのと同じ呪文が唱えられ。


 それと同時に立ち込めた煙により、狼たちが消えていく。


「まったく、禄斬の反乱なんて簡単に潰せると思っておきながらこの体たらくとは情けないわ……まあそもそも、反乱はいけないことよ禄斬!」

「く……貴様、後宮魔女か!」


 そこに高らかに声を響かせ、この官軍と賊軍の狭間に私が登場したわ。


 ◆◇


「き、貴様何奴だ!」

「待て、者たちよ! ……そなたには、まだ養母を救ってくれしことへの礼がまだだったな。感謝する。」


 ふん、抜け抜けと。

 禄斬は兵を制止して、私に礼を言って来た。


「いいわ、今そんなことは! ……そのお養母上(ははうえ)様に刃をあんたが向けている、今となってはね!」

「ふん……私は養母上(ははうえ)や陛下に刃を向けるつもりはない! 陽国悌こそ、この大錦を乱す者だと言っているだけだ!」


 ……は? 

 まったく……あんたって人は!


「……ざけんじゃないわよ。」

「……何?」

「……ふざけんじゃないわよ!」


 私は思わず、そう叫んでた。


「あんた散々殺しておいて、たかだか国悌殿にそんな一言言いたいためだけにこんなこと始めただあ? ふざけんじゃないわよ!」


 ――まったく……私はそなたの育て方を間違えたのか、深愛?


 父の言葉が、また頭に浮かぶ。

 でも、度々申し訳ありませんがお父様……こいつのような奴にだけは!


 こいつのような奴にだけは、かけるべき情けはないのです!


 ですから申し訳ありません、お許しください!


「だったら話は早いわよ、今すぐにでも都にあんた一人で武器持たずに来なさい! それで一言、陛下にも正妃様にも国悌殿にもそう言えば済む話じゃないのよ!」

「ふん……言って聞き入れられると思うてか! 所詮は女が! それではお分かりいただけぬからこそ、こうして我が本気を分かっていただく必要あってのこと!」


 ブッチーン!

 所詮は女だあ?


 へえ……言ってくれるじゃないのよ!


「言ってくれたわね……なら見せてやるわよ! あんたこそ男の癖に、女の私に負けんじゃないわよ?」

「ははは、笑止! 良かろう……ならば作法として、こちらも全力をもって当たらせていただく! さあ来るがよい、狼たちよ!」


 私が啖呵を切ると。

 禄斬もまた啖呵を切り、両腕を広げる。


 と、そこへ。


「ははは、さあさあ来るがよい我が僕たちよ! これより新たな狼祖とならんこの私の所に!」


 く、狼たちが!

 禄斬の身体へと、吸い込まれていく!


 そうして禄斬は。

 その身に、さながら禍々しき光背のごとく炎を滾らせる姿に変化したわ!


「さあ後宮魔女よ……先ほどの自らの言葉、忘れてはおるまいな? ならば……これを受けてみよ!」


 言うが早いか、禄斬は。

 自分の持つ大刀を大きく変化させ、そこにも禍々しき炎を纏わせて振り下ろした!


「く……玉帝有勅、神硯四方! 金精(エーテル)木精(シルフ)所司五主之筋、急急如律令!」


 私は咄嗟に、薬学魔法を発動し。

 金鎖を生み出して操り、大刀を止めた!


「ほう、これを受け止めたとは中々やるのう!」

「ええ……あんたに言われても嬉しくはないけどね!」


 できるできないじゃなくて、やるしかないのよ! 

 これを受け止めなきゃ、避けるしかないけど。


 そうすると、私の後ろにいる兵士さんたちがこれを食らっちゃうから!


「ふん、相も変わらず強情な女め! ……者たちよ、今が隙である! 後宮魔女に矢を放て!」

「はっ!!」


 く、だけど!

 禄斬はその隙に、制止していた兵たちを煽って私に矢を射掛けて来た!


 このままじゃ……

 だけど、その時だったわ。


「はっ!」

「くっ、さすがは狩を嗜む蛮族の矢よ! だが我らには効かぬ!」


 な! 

 へ、兵士の皆さんが。


 私を矢から、防いでくださった!


「よくわからぬが……後宮魔女殿とやらを守れ! 逆賊共を魔女殿に近づけさせるな、あの康禄斬を討てるはこの方のみじゃ!」

「応!!」


 い、いいえそんな!

 わ、私は皆さんを助けに来たんです!


 なのに、皆さんが私の代わりになるなんて!


「何の、こちらは予てより死ぬ定めの兵! そなたの盾になるなど、造作もない!」


 く……

 私、また情け無いわ!


 こんなんじゃ……


「……忌々しき者共め! だがよい……ならば後宮魔女、貴様諸共私が手ずから軍を葬って」

「舐めんじゃないわよ!」

「な……? ぐう!?」


 ……もー、頭に来たわ私!

 さあ禄斬、あんたなんかには絶対負けない!


「さあくたばりなさい腐敗体質そのもの! ……玉帝有勅、神硯四方! 金精(エーテル)木精(シルフ)所司五神之魂――薬克妖、急急如律令!」


 私は、気合いで禄斬の巨大化した大刀を鎖で打ち返しながら!


 その大刀の刃に薬学魔法を施し!

 その大刀は禄斬に打ち返され、奴を両断する!


「ぐああ!」

「ぐああ!!」


 衝撃で、禄斬諸共何人かの遊牧民の兵たちが吹き飛ぶ!


 でもごめんなさい、手加減はしていられないのおお!


 ◆◇


「や……やった! 康禄斬を倒したぞ!」


 そうして、官軍は勝利に沸くけど。

 ……ごめんなさい、まだそれは早いわ!


「え……えーんえーん母上え! 僕やられちゃったよお、悔しいよお!」

「な!? 何故だ、あれほどの攻撃でまだ!?」


 ……へ!?

 あ、唖然としたわ。


 いや、あんたがまだ死んでないことは気配で分かったけど。


 な、何言ってんのこいつは!?

 あ、頭おかしいなったの?


「くっ……母上え! ならば……あなた様がせめて、都を破壊してくださいいい!」

「!? は、母上!?」


 私はその禄斬の声を聞いて驚く。

 そして、その刹那。


 禄斬の身体からは、さっき取り込まれた狼たちが大きな火の玉となり抜け出し。


 そのまま都の方へ、飛んで行く!


「さあ我が生母たる狼祖母阿使那氏様! あなた様のお力で!」

「……く、もう!」


 私はこの時、自分の見立て違いにようやく気づいた。

 そう、この狼たちの本体たる妖魔はよりにもよってあの後宮にいる!


 だとしたら……去魔が危ない!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ