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【SS追加済】ホワイト・イノセント  作者: 遊一(Crocotta)
【SS】続・ホワイト・イノセント(序章)/始まりのカンタータ
38/48

4

(やばい……)


「そういえば俺、いつもステッキ持ってるだけでちゃんと唱えたことないんだった!!」

 暴れだすステッキと格闘をしながら必死で考えてみるが、最初の一文字からもう思い出せない。そもそも当時の現国ですら赤点ギリギリだった俺が、あんな古めかしい文章を覚えていられるはずがない。


「そのまま持ってて」

 聞き覚えのない声が聞こえると同時、肩へ小さな手が添えられた。


「掛けまくも畏かしこき 掛けまくも畏かしこき」


 聞き覚えのある文章が、聞き覚えのない声で紡がれていく。


「……其の者 彼の者

 魂 諸諸の渦事まがごと 罪 穢けがれ

 有らむをば祓へ給ひ清め給へと白まをす事を

 聞こし食めせと恐かしこみ恐かしこみも白まをす」


 最後は俺でも覚えていた。ラストの言葉はこれだ。

「「死霊滅却!」」


 その言葉を口にしたと同時、ステッキが強烈な光を放つ。

「ぐわぁああああああああああ」

 男が叫び声をあげ、霧散する。

 周囲の景色が元に戻り、冷気も消えた。


「うん、これで良し」

 背中越しに、満足そうな声が聞こえてきた。声の主は、俺が無理やり連れてきた小学生だ。因みに、先程の詠唱もこの少女から発せられたものである。


「……余裕だな」

「え、そうでもないよ?霊力の強ーい人が来たから、安心しただけ。それまでは人並みに恐怖を感じてました」

 へへ、と無邪気そうに笑う。


「まあ呪文が唱えられないのには驚いたけど」

「お前が唱えられたのにも驚いたけどな」

「あっ、それ禁止!」

「ん?」

「お前って言うの禁止ー」

 ぱたぱたと腕を上下させながら言うので、仕方なく聞く。

「あー……。えーっと、じゃあ名前は?」

「加奈!前園加奈!」

「かな、ね……」

 なんとなく独りごちる。


「そっちは?」

 特に名乗るつもりはなかったが、聞かれたので、素直に答える。

「俺は、森本浩二。そっちの猫はワン子。よろしくな。で、さようなら」

「ええ?!」

 立ち去ろうとするも、服の裾を掴まれて失敗した。

(怨霊は無事いなくなったんだし、こいつは早く家に帰るべきだと思う)


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