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【SS追加済】ホワイト・イノセント  作者: 遊一(Crocotta)
【第三部】五.不揃いなワルツ
27/48

過ぎ去りし日のラメント・自由詩形式

   * * *



「おにーちゃ」

「佳菜依?お腹すいた?」

「ぶー」

「んー?」

「お、ぶー」

「ああ、おんぶね。わかったわかった」

「わーい」

「あはは、佳菜依は本当に可愛いなあ」


「父さん、佳菜依はどこに行くの?」

「空気の綺麗なところだよ」

「すぐ戻ってくる?」

「…………そうだね」

「そっか、じゃあ僕、佳菜依のためにお花を摘んで待ってるね」


「佳菜依遅いね」

「……そうだな」

「いつ帰ってくるのかな」

「さあ、いつだろう」

「せっかく摘んできたお花も枯れちゃった」


「父さん、佳菜依はいつ戻って来るの?」

「佳菜依はもう帰ってこないんだよ」

「どうして?」

「体が弱いから、空気の綺麗なところで休んでいるんだよ」

「じゃあ僕も行く」

「賢介は駄目だよ」

「どうして?」

「賢介は長男だからね」


「里親から手紙がきたんだ。佳菜依は元気にしているって」

「迷惑だから手紙の催促なんてやめなさい」

「手紙くらい良いじゃないか」

「賢介、佳菜依はもうこの家の子じゃないんだよ」

「でも、僕の妹だ」

「もうお前の妹じゃなくなったんだ、あきらめなさい」


「佳菜依に会いたい」

「あの子のことは忘れなさい」

「嫌だ。忘れない」

「賢介」

「父さんが何を言おうと、僕は絶対に佳菜依を忘れたりしない」


「賢介、お前はいつになったらまともに仕事が出来るんだ」

「そんなに僕が不満なら、どこからでも養子を拾ってくれば良いだろう」

「出来る事ならそうしている。誰が好き好んでお前なぞ後継ぎにするものか」

「それなら世間体なんて気にしないで、戸籍から名前を抹消すれば良い。そうしたら僕も晴れて自由の身だし、お互い幸せじゃないか。そうだろう?」


「ああ」


「手紙がこなくなった」


「催促してみたけれど、連絡がない」


「こない」


「こない」


「こない」


「僕は月夜に一人の少女を見つけた」


「可愛らしい子だった」


「写真そのままだった」


「そうか……佳菜依はもう……」


「佳菜依」


「可愛い佳菜依」


「今夜のことは忘れない」


「父さん、手紙を受け取るのはやめたよ」


「手紙はやめた」


「父さん、正式に後を継いだよ」


「もう疲れたよ」


「父さん、僕は死んだよ」


「咳が止まらなかった」


「父さん、貴方は後悔してくれてる?」


「倉で倒れたんだ」


「父さん、僕は佳菜依に会ったよ」


「元気そうだった」


「父さん、さようなら」


「涙なんて、いらない」


「さようなら」


「君の笑顔が、見たかった」




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