10/48
はじまりの話
キキーッ
ガシャーン!ガラガラガラ……
耳を突き破るような大きな音が鳴り渡る。
車も人もそれなりにある通りで人のざわめきこそあるものの、普段この場所にこれほど大きな音を響かせることはありえない。ざわめきが段々と大きくなる。
「思わず……助けちゃった……」
大きな騒音の中心には、十三歳くらいのきれいな顔立ちをした色白の少年が立っていて、その視線の先には同じく十三歳くらいであろう可愛らしい少女が、両手を伸ばしたまま驚いた様子で立っていた。
「ありがとう」
少年が少女に近付いてそう言うと、少女はさらに驚いた。
「……見えるの?」
「うん」
少年は当然のように言う。
「…………あ」
少女は慌てて、横倒しになっている車の様子を確認した。
「よかった、死んでない……」
車の運転手は幸運にも軽いけがを負っただけで済んだようだった。
プロローグや導入部分は三人称、本編は三人称一視点
で進めていますが、このあとの三話分(10・11・12ページ)は佳菜依の一人称視点となっています。




