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魔王城へ

その城は美しかった。雄大で、綺麗で、堅牢だった。見た目でも性能でも王国のものとは比べ物にならない技術力を感じさせる。


その中へ足を踏み入れる。陛下の3歩後ろを気配を消しながら着いていく。バレないとは分かっていても見破られる可能性を常に考慮しておかなければならない。


「陛下!いったい今まで三日間何処で何をしていたのですか!執務は・・・完璧でしたが、軍備・・・も問題無く。と、ともかく、国のトップたる者が安易に出かけてはいけません!」


「滞りなければ問題などあるまいて。あと魔王直轄特殊部隊に新メンバー、祝うべき三人目だ。我が親戚でな、実力は言うまでもなかろう何せこのオレ直々の戦闘指導を受けているのだからな」


話に聞いた秘書だろう。人間の街を見回る間の仕事は終わらせたと言っていたが、こうも完璧だとは思わなかった。


「いつも突然過ぎます。で、その者は何処に?」

「何をおかしなことを、目の前にあるではないか。この程度の気配遮断を見破れぬとは秘書失格もいいところよ。もっと励め」


このレベルの気配遮断を見破る秘書などいないだろうと言う意味を含めた苦笑が自分の顔に浮かぶ。もしその様な事ができるのなら軍人か何かになるだろう。そんな事を考えながら気配遮断を解く。


「え、あ、すみません。初めまして。秘書をしている者ですが、新入りさんは貴方でいいんですよね?」


ビュン


音を立てて突然矢が飛来する。音の速さに限りなく近いそれをマフラーを操ることによって防ぐ。その後ろに影が迫る。横に首を切り裂かんとするダガーを魔力を纏った石で作ったマフラーを硬化させながら後ろに跳ぶことによって受け流す。


憤怒ノ魔眼の威圧を振り撒く。ダガー使いが一瞬怯むが、そこに再度飛来する三本の矢。その矢に対し妙な悪寒を感じ、とっさに上に跳ぶ。矢が地面に突き刺さった瞬間、先端が槍のように尖った氷柱が石の床から突き出る。


並列思考を使って思考を分担。もう一人の自分にオーガの能力の鬼気を任せる。鬼気によって身体の動きをサポートする。これによって多少無茶な動きをしても問題なく動けるようになる。


空中で矢が飛来した方向を視界に入れ、柱に隠れる弓兵の姿を捉える。滞空時間的に今から弓を構え、矢をつがえる時間はない。腰にさした片手剣を鞘から抜き、魔眼で炎を付与し、投げる。


付与された炎により、爆発的な推進力を得た剣は真っ直ぐに弓兵のもとへと翔ぶ。先刻の矢に勝るとも劣らぬ速さで翔びながら、進路を剃らそうと放たれた矢やダガーを纏う呪炎によって飲み込み、焼き払う。


憤怒ノ魔眼の炎は只の炎にあらず。通常、炎は青白い色に近づくほど高温になるが、その炎は赤黒い色をしながらもとてつもない高温で、冷やされようと早々には消えない。


剣が先程弓兵がいた所へ寸分違わず直撃する。横にあった柱ごと床を粉砕し、呪炎が周囲を呑む。剣は避けたものの、炎にはあたったらしく、衣服が燃え、居場所を露にする。


呪炎が弓兵の精神を蝕む。怒り、憎悪、憤怒。負の感情が蠢き、弓兵の精神の自由を奪っていく。冷気により消そうとするも、無意味と悟り、纏っていた外套を脱ぎ捨てる。


追撃をかけようとするも、弓兵のもとへは行かせまいとダガー使いが邪魔をする。少し距離をとりつつ、槍で応戦する。両手に持ったダガーと、シャドウの影の身体を変化させる特性による搦め手の攻撃を槍とマフラーを使いながら捌く。


弓兵が復帰し、再び矢が飛来する。矢を防いでいる隙にシャドウの方が襲ってくる。


「獲った‼」


一つ、陛下との戦いで思い知らされた事がある。自分の勝ちを確信したときほど無防備になる...と。何度誘われてやられたことか分からない。


「【無機物操作】」


石の床を巨大な杭へと変え、床から突き立てる。シャドウは何とか身体を変形させるも、脇腹を抉られる。影の身体は変形はするものの、決して無敵などではない。切られれば当然血が出る。

抉られた脇腹から大量の流血。更には腸が傷口から垂れる。


そのまま倒れることを許さず、蹴り飛ばす。シャドウは10m ほど吹っ飛び、柱へと身を打ち付け、口から血を吐く。柱が衝撃で倒壊し、シャドウを押し潰す。このままトドメをさしたいところだが、弓兵がそれを阻害する。


(まぁいい。あの状態では当面動けわしないだろう。その間に弓兵にトドメをさせば良いだけだ)


弓兵の矢と氷の礫を避けるために柱の後ろへと滑り込む。槍をしまい、武器を弓に持ち変える。箙から二本矢を取り出して片方をつがえ、もう片方は指に挟む。矢が飛んでこない隙を狙って柱から転がるようにして出る。


射る。二本の矢が音を立て、風を切り裂きながら飛ぶ。だが敵の弓兵の腕前もかなりのもの。一方の矢に自分の放った矢をぶつけることによって相殺するという変態じみた所業で矢を防ぐ。もう一方の矢には氷の礫をぶつける。


即座に新たな矢をつがえるが、弓兵が走り出したため、標準を合わせるのにワンテンポおくことになる。弓兵が氷の礫で牽制をする。無機物操作を使って床を壁に変える。再度身をのりだした時にはもう遅く、弓兵は柱の影に隠れていた。


矢に呪炎を灯し、放つ。呪炎によって弾道を曲げ、柱の後ろを攻撃する。防げないと判断した弓兵が柱から身をだし、矢を放つ。壁に当たった矢から先刻地面に展開された氷がでて壁を砕く。氷の勢いは止まらず、レバートを穿とうとする。


咄嗟の判断で転がり、氷を避ける。だが避けた先には何もなく、弓兵のいい的になってしまった。矢を避け、攻勢に繋げるために無機物操作で自分の真下の床の石を操作し、自分を押し上げる。カタパルトだ。


空中で体制を整え、矢を五発、一秒も経たない内に連射する。一本は外れ、三本は弓兵の纏う甲冑に防がれる。残り一本が太ももに刺さり、弓兵のバランスが崩れる。しかし、それをもろともせずに弓兵は矢を放つ。


三発。二本はマフラーで防いだものの、もう一本が脇腹に突き刺さった。気付いた時には遅く、氷が腹の中で炸裂する。何とか内部に呪炎を出し、ゴーレムの硬化能力によって防ぐが、胃を破ったらしく、胃酸の臭いと神経を、筋肉を溶かされる激痛が襲う。


「【憤怒】、【覚醒】」


憤怒の付随効果でアドレナリンが分泌され、痛みが和らぐ。更に憤怒と覚醒の効果で一時的に全能力を引き上げる。マフラーを柱に絡ませて操作し、弓兵の標準から逃れる。遠距離戦闘においては彼方に利があることを悟り、接近しようとする。


しかし弓兵は移動と同時に矢を射、氷の礫によって牽制し、なかなか近寄れない。槍で叩き落とすことによってあたることこそないが、このままでは拉致があかず、覚醒の効果が消えるだけ。


「チッ、面倒な」


思いきって正面からの突破を試みる。掌を硬化させ、呪炎を爆発させる。爆発の勢いで一気に飛び出し、突き進む。弓兵はいきなりのことに驚くも、直ぐに冷静になって矢をつがえる。


そんな弓兵の動きを威圧を使って止める。覚醒と憤怒の効果によって強化された威圧が弓兵を襲う。何とか踏ん張るが、矢を手から落とすという致命的なミスをする。


急いで箙から矢を取り出した時にはもう遅い。眼前に迫り、槍を大きく振りかぶる。後はこのまま突き刺し、貫くのみ。


「そこまで‼」


大きな声に驚く。が、敵からは一切目を離さない。そして察する。止まれないと。だが心臓を貫くと思われた槍はその寸前で止まり、全く動かなくなる。


「まずはレバートよ。先の立ち回り、誠に見事であった。よく修行の成果がでている。そして二人。なんだあの体たらくは‼二対一であれとは。しかも連携がとれていなくて互いに足を引っ張りあうとわ。少し強くなったからといっても傲ったな。貴様らが傲慢になろうなど百年早いわ。連携をもう一度見直せ‼」


…ーーーー全部陛下の仕込みか。成る程。確かに利にかなっている。恐らくあの二人は魔王直轄特殊部隊とやらのメンバーで、あの二人と他の幹部全員に実力を見せつけるにはこのやり方が一番効率的だった訳か。

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