修行中の手記
いつもの日程はまず起きたらご飯。そのあと修行修行修行修行修行修行修行、昼食、修行修行修行修行修行夕食。夜は魔王陛下に向こうの世界の情報、技術、歴史、国、経済事情について語る。陛下曰く、
「まぁ、半分はそれが知りたくて招いたのもあるからな。オレのまだ知らぬところ、未知。何とも興味深い話ではないか。それに人間魔族どちらであろうとも無意味かつ無闇な同族殺しはオレの最も嫌うことだからな。しかし、魔法がない世界とはな。何とも珍妙な世界よ」
陛下は豪快で傲慢、だが不思議と惹かれてしまうカリスマの持ち主である。この方が君臨する国はさぞ面白く、幸せで、生きやすい世の中なのだろう。まだ見ぬ国への期待が高まる。
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一年が経過。相変わらず訓練は厳しいが、しっかりと理由があって組み立てられているメニューに驚くばかりだ。最近は少しずつ強くなっている自覚がある。この力があればきっと-----------------殴られた。
心を読まれている。今日の陛下の言葉で締めくくろう。
「怒りに飲み込まれるな。怒りなど飲まれるものではなく飲み込むものだ。貴様の憤怒ノ魔眼に込められた怒りと呪詛は確かに大きい。だがそんなものに飲まれているようではまだまだ半人前もいいところ。とても戦場に等出せぬわ。10倍の呪詛にでも耐えられるようになれ。ん?オレか?はッ、オレを呪いたいならその100倍は持って来い」
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一年半が経過。修行はますます過酷になる一方。しかし聖光教会側の聖女は陛下でも本気で戦わなくてはならない程の力を持っているとの事。
あと体に変化が起きた。硬質化して来た。どうやら悪魔化させる際に陛下の遺伝子情報を入れたのでその中にあった種族の情報の中で適合したものが表面に出て来ているようだ。
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今日も勝てない。憤怒ノ魔眼も大分使いこなして来たがまだ及ばぬ。最近は槍術だけでなく、攻防一体の石のマフラー(改良済)や弓、ナイフによる戦闘の訓練もし出した。弓がなかなか。陛下を捉えるのは無理だった。
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二年経過。ラスト一年。日記帳も三冊目だ。そろそろ修行も終わりかと思うと感慨深・・くはないな。端的に言って地獄だ。
実戦訓練は勿論。針山に立ったり、マグマの上に吊るされたり、直の火炙り。落石、樹木に注意しないといけない滝行。岩を引き摺って走る。
他にも真っ暗の中で三日いつ襲われるか分からない極限状態でのサバイバル。実戦でも五千匹のホムンクルスの軍勢に囲まれる。などなど。
慣れだな。
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やっと陛下と戦って三十分保った。負けたけど。二十分耐えたあと、陛下が本命の武器使われた。強い。
杖のカテゴリに入るらしいけど、何というか地球儀?太陽の周りを回る星の立体軌道図?そんな感じ。色々な武器に変化していた。
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角が生えた。オーガの角だ。陛下から姿隠蔽用の神造具品をいただいた。何日も一ヶ月位かかれば神造具品とて制作可能とのこと。
改めて尊敬した。いや、ずっと尊敬し続けている。因みに形は左眼用片眼鏡。魔眼増強効果もある。あと望遠機能とか凝った出来だ。
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今日をもって修行は終了。意外と短かったように感じる。まぁ外だと三日なんだが。内部時間は三年だったから不思議だ。
明日から新しい生活が始まる。戦火に身を投じるのだから、自ら灼かれにいくのだからきっと辛いだろう。だが我が怨讐は消えない。いつか聖光教をこの世から根絶するその日まで。
次回からが本番です。