魔境
「ふむ、貴様が五代目、次期か。なんだ、老婆はもう鉄は鍛えんのか?」
「若返りの霊薬を使えどももう歳でな、引退しようと思っておるわ。どうせ貴様ら若僧には老婆の苦労は分かるまい」
鍛炉と名乗ったその男。ゴブリンでありながらその身長は165㎝はあるのではないかと思われる。平均身長が150㎝のゴブリンにしてはかなり大きい方だろう。
ゴブリンを除いた魔族全体での平均身長は180㎝なのでそれでも小さい方だが。確か元の世界では極東の国にはは平均身長が168㎝くらいの国があった筈だ。そこなら普通だろう。
「ところで貴様、我が直属の特殊部隊に来る気はないか?」
「条件にもよる」
「各種族長、つまりゴブリンでいう工房主くらいの権力はある。つまり自由に誰の指図も受けずに武器を創れる。更には専用の工房、必要な機材や道具、鉱石、人手等々、大概の物は何でも用意出来る」
「悪くは無いな。だがもう一つ条件がある」
「ほぅ?このオレに条件を追加するとは…面白い。中々に図太いな。申してみよ」
「俺の武器を上手く扱えるだけの奴がいる事だ」
曰く、鍛炉の創る武器は帝国の不毀の剣、デュランダルや魔族に伝わる伝説の怠惰なる悪魔の名を冠した盾のような絶対に壊れない武器を目指して創られている。故に、強く、硬く、重い。
「俺が前に全力で創れって言われてババアに卸した武器はどうなった?あれを扱える奴が…成る程、こいつか」
レバートの方を見て納得と言った表情を見せる鍛炉。何故突如としてこちらに話が回って来たのかが分からずにレバートは首を傾げる。
「やはりあの武器は貴様の創った品か。道理で、中々の逸品の割りに汎用性が妙に低いと思おたわ。そこの老婆であれば皆が使いやすいつ武器を目指すが、これは明確に異なる信念を以て創られた逸品よ」
その言葉を聞いて納得する。頑丈でいい武器だと感じていたが、伝説に挑むものであれば納得した。一方は敵方の神々が、もう一方は我等が魔族の神が創った物。
それに挑もうなどと、正気の沙汰ではない。世間一般の常識に当てはめれば狂気の沙汰に等しい。それ故に、神殺しを目的とする我々の仲間に相応しい。
「まぁ、こやつと話してみよ。それ次第で決めるがよい。貴様のその双眸でしかと見極めよ」
結果、そこに出来たのは友情と、アホみたいなネタ武器鑑定祭りだった。(くっ付けたら和弓になる双剣、両剣になる大剣。アホ程重い盾や斧、杖etc.
※※※※※※※
アホネタ武器祭りが終わり、(若返りの霊薬は毒に対する完全なる耐性がない限り死ぬと知って凉白がショックを受け)慰霊祭が終わった。
『うう、うぅ。また仕事ですか。若返りが出来ないのに仕事ですか‼』
忘れることなかれ。女性に歳の話は禁句である。さて、そろそろ王国側の慰霊も終わっている筈だ。自分達から仕掛けておいて慰霊?非道なる魔族?虫が良すぎないか?
一番の悪は外来の神。それに操られてこんな下らない戦争をしていることを鑑みるのなら憐れむべきか。道化と罵るべきか。騙される方が悪いと嘲るべきか。
片眼鏡の能力の一つである遠見と透視の術を使い、王城や教会内部を覗く。勇者の死にどれだけ慌てふためいているか、見物する腹積もりである。
そこで露になるは天地反転驚愕の事実。即ち、確実なる死からの復活。確実に殺した。再生阻害の呪いを解かれた痕跡はない。いや、あれは蘇生等ではない。記憶と意識をコピー&ペーストしただけのモノ。魂が同じでも。体は完全に別物だ。
「何故生きている⁉ジョナサン‼」
大地を踏み締め、蹴る。木々は倒壊し、大地は捲れ上がり、風が戦慄く。音速を0.01秒で突破し、検問官が起きた衝撃波と突風によって上を見上げることすら出来ない内に壁を遥か上空を通って越える。一呼吸の内に城の訓練場に着き破壊痕を刻みながら進む。
「何事!?」
聖女が叫ぶ。こういう時、第一声はどうしたらよかったか。普通の一般的な挨拶を、憤怒ノ魔眼の威圧を含みながら放つ。
「よぉ、元気か?」
ちょっと長くなりそうだったので中途半端だけど中断。




