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これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー3 〜花咲姫と奔流王〜  作者: segakiyui
28.主従

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 元、カースウェル女王、アグレンシア・カースウェル・パラスニアは、そもそもハイオルトとカースウェルの国境近くに住む一族の娘だった。貴族というほどの地位もなかったが平民よりは豊かな財力のもと、早くから才知の煌めきを見せ、17歳の頃にミディルン鉱石に魅せられて研究を始めた。

 夫、カースウェルの王、ラクダン・カースウェル・レドニスは、国の安定と発展のため、また繰り返し小競り合いを仕掛けてくるダフラムに対抗するため、これもまたミディルン鉱石について研究を進めていた。

 2人が出会ったのは、ルシュカの谷近くの洞窟だったと言う。

 偶然の出会いから研究に関する会話が重ねられ、ラクダンはアグレンシアの能力に深く感銘を受けた。10歳の年齢差を飛び越えたのは、彼女への敬意と会うたびに魅かれていく気持ちだ。権力者である自分が命じれば断れないと重々わかった上で、王はアグレンシアを欲した。

 24歳でカースウェルの王妃となり、25歳でレダンを産んだ。王妃としての責務、レダンの子育ても自ら関わることを望み、ミディルン鉱石の研究は夫と国の研究者に任せた形となったが、いずれレダンが育ち国を背負ってくれた後は、夫ととも研究者に戻ることを考えていたらしい。

 35歳の時、ラクダンが病死し、その夢は叶えられなくなった。10歳のレダンを抱え、一時的に女王として即位、荒れかけた国を支え凌ぎ、40歳の時にレダンを即位させて摂政に退いた。5年間レダンを支えた後、45歳で公的立場から離れて、ハイオルトとの国境近く、元々暮らしていた街に隠居し、夫の跡を引き継ぎ、ミディルン鉱石について研究を続けている。


「……エリク、と呼ばれる女性を拾ったのは38歳ぐらいの時だったと聞いている」

 シャルンを驚かせないようにだろう、アグレンシアの半生を語りながら、するりとレダンは話を続けた。

「その頃、母は離宮で過ごしていたが、ある日突然、疲れ切った女性が連れてこられたらしい。女性は記憶を失っており、自身のことも、エリク、としか名乗れなかった。ただ立ち居振る舞いに品があり、元気を取り戻してからは、書物や文書を読み解け執筆もできたとのことで、どこかの地位の高い女性だろうとは思ったが、カースウェルでは該当する者はおらず、他国となると雲を掴むような話で身元が知れなかったそうだ」

 シャルンは瞬きもせず、レダンの話に聞き入った。

「エリクは穏やかな優しい女性だった。やんちゃ盛りの俺が怪我をしたりすると、自分で治せと放置する母上に代わり、少し叱りながら手当てをしてくれた。けれど、自分がどこから来たのか、どこへ行こうとしていたのか分からず、何か大事なことを忘れていると苦しそうに笑ったのを覚えている」

「…母は洞窟の中に置き去られて……それでも何とか抜け出したのですね」

「聡明な母君のことだ、ガーダスに遭遇したかも知れないが、その動きを注意深く見守って、出口への道を見つけたのかも知れないな」

 確証はない。エリクが母だとも言い切れない。けれど、その話もアグレンシアからなら聞けるだろう。

「……母は」

「体に無理をされていたのだろう。2年ほどで亡くなられた」

 シャルンに問わせまいとしてくれたのか、レダンは先回りして話してくれた。

 視界が歪む。ゆらゆらと揺れて瞳を満たした熱いものが零れ落ちそうになる。

「シャルン……シャルン」

 ふんわりとレダンが抱き寄せてくれた。

「俺が居る。どこまでも一緒に居るから、一人で堪えるな」

「…」

 頷きながら、今だけは声を上げて、シャルンは泣いた。


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