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これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー3 〜花咲姫と奔流王〜  作者: segakiyui
8.竃のダイシャ

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4

「…ガスト」

 ぼそりとレダンが唸った。

「………いや、止めた方が」

「まだ何も言ってねえぞ」

「続くことばが予想できるからですよ、短い付き合いじゃないですし」

「なら、話が早い。今後ダフラムとやり合うなら、手の内を知ってる奴が欲しい」

 にやりとレダンが笑う。

「『竃のダイシャ』、抱き込めねえかな」

「そう言うことをやるから腹黒いとか得体が知れないとか残念な噂に繋がるんです」

「バラディオスなら、上手く扱えるだろ」

「…まあね」

 けれど、どうしてです、とガストが問うと、レダンはシャルンを見つめた。

「?」

「俺は奥方に甘いのさ」

「…陛下、そんな」

 シャルンの評価が高かったから、と聞き取って、シャルンは青ざめた。

「危険な人物に近づいてしまったのは謝罪いたします。けれど、陛下の身に万が一のことがあっては」

「『竃のダイシャ』は何かを企んで『祈りの館』に入り込んだ。俺達の馬車を焼いたあたりでは敵側だ。けれど、昨夜はシャルンに何もしなかった。リュハヤに振り回されて、夜に館の中をうろつく羽目になったシャルンを、言いように扱えたはずだ。なのに、奴はしなかった。祈りの部屋に導き、洞窟に繋がっている情報を与え、しかも突然現れたお前達から咄嗟にシャルンを庇おうとした。なぜだ?」

「もう1つありますよ」

 黙っていたルッカが口を開く。

「『竃のダイシャ』はアルシアでも会ったことがあります。まだ14、5の子どもでしたが」

「アルシアに?」

 あそこは戦闘国家だぞ? 火種を作るどころか、燃やされちまうだろうが。

 意外そうなレダンの声に、

「たぶん、あの頃は『竃の』とまでは呼ばれていなかったんでしょう。アルシアでは火種を作ると言うよりは、誰かを探しているようでした」

「では…」

 ガストが眉を寄せた。

「『竃のダイシャ』はひょっとすると私達を狙っているのではない?」

「狙いは『祈りの館』そのものかも知れないな」

 信者のふりをして潜入し、馬車を燃やしてレダン達に不審と不安を広げ、混乱に乗じて誰かを探している。

「ダフラムとしては収入源を減らすつもりはないはずだ、だからダフラム側じゃないかも知れねえ」

「けれど私達の味方という訳でもありません」

 応じるルッカの顔の白さに、ふとシャルンは思い出した。

「ひょっとして……魔法使い、を探しているのでしょうか」

「は?」

 きょとんとしたガストは事情がよく呑み込めていない様子だ。ただレダンとルッカが厳しい顔で押し黙り、シャルンは自分が全く見当違いのことを言っているのではないとわかった。

「魔法…? どう言うことです?」

「……御伽噺だよ、くそ面白くもねえ」

 レダンが殺気を満たして唸る。

「わかるように説明して頂きたいですね」

 苛立つガストに、3人はそれぞれの知っている『かげ』やら『魔法使い』やら『花咲』やらの物語を口々に語った。

「ちょっと…待って下さい」

 さすがのガストが目眩を起こしたように額を押さえて確認する。

「ミディルン鉱石の巨大なものには『かげ』が棲まい、それは王族が名を呼ぶことで龍の姿を現わす。アリシアではそれと似た『花咲』と言う魔法が石に閉じ込められていると言う話がある。地下迷宮ミディルンの話では確かに魔法があって、魔法使いと呼ばれる存在がいますが、つまりまとめるとこう言うことですか?」

 ミディルン鉱石には『かげ』とか『花咲』とか呼ばれる何らかの魔法が閉じ込められていて、それは火を燃やすだけではなくて風を起こしたり水を溢れさせたり草木を育てたり季節を戻したり、いろいろなことが出来る力である。但し、その力は今はもう存在しない魔女とか魔法使いのみが自由に使える。

「じゃあ、何ですか? 『竃のダイシャ』が探してるのは、その『魔法使い』ってやつじゃないかってことですよね?」

「リュハヤだろ」

 間髪入れずにレダンが言い放つ。

「リュハヤは水龍を見たって言うし、呼び出せるのかも知れねえ。ダフラムがその力を探して、リュハヤに目をつけた、ならさっさと連れ攫ってくれて構わんぞ、国を挙げて支援してもいい」

 ひらひらと指を振って、想像上のリュハヤを頭の上から追い払う仕草をする。

「…あなたがそう言うことを言う時は、絶対別の可能性がありますね」

 ガストがレダンを睨む。

「リュハヤじゃないと思ってる。なぜです?」

「ちっ」

 舌打ちするレダンに、シャルンはごくりと唾を飲んだ。

 きっとこれを口にすることを誰も望んではいないのだろうけど、それでも見えてきた真実に背中は向けられない。

「あの」

「シャルン、それは関係ない」

「陛下はきっと、ご存知だからです」

 遮ったレダンは、今になれば聞かなければ良かったと臍を噬んでいるだろう。

「何を?」

「……私が幼い時に『かげ』を見つけたことを……その時、ミディルン鉱石から、赤い光が噴き出し、母の手に痣を残したそうです」

「……ああ……あなたは……王族…だから…」

 呆然とした顔でガストは呟いた。

「なるほど…それなら全て辻褄が合う…」

「どう合うんだ」

 レダンが冷ややかに唸る。

「ここがダフラムの息のかかった場所で、『かげ』や水龍の話を餌に俺達を誘き寄せ、シャルンの力を確かめて、ダフラムへ連れ攫おうって罠に、まんまと引っ掛かったってか?」

 だから『竃のダイシャ』はダフラム側でありながら、シャルン庇護に動いた。

「リュハヤもイルデハヤも切り捨てられる下っ端なのは大歓迎だが、大人しくシャルンを攫わせる気はねえぞ、俺は」

 レダンの瞳を満たした怒りに、ガストもルッカも黙り込んだ。

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