表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー3 〜花咲姫と奔流王〜  作者: segakiyui
6.糸繰り場

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/96

4

「……お薬のせいですか?」

「ん?」

「私が来た時、リュハヤ様が添い寝してらっしゃいました……私はもう要らないと……陛下がリュハヤ様に命じられたと…」

「……うん」

 そんなことを聞かされて、さぞ辛かっただろう。リュハヤには後々しっかり代償を払ってもらおうと決心したが、ふと気づく。

「あなたは…部屋を出なかったの?」

「……私は……陛下のご様子がおかしいと思いました」

 シャルンの瞳に涙が膨れ上がる。

「お顔が赤く……苦しそうな寝息に見えました…」

 思い出したのだろう、悲しげに眉を寄せて、

「もし……もし…リュハヤ様とお過ごしで……満たされておいでで……私が不要なほどであれば……もっと安らいでおられるはずです」

「……うん…」

 レダンは自分の顔が赤くなるのがわかった。

「それは……うん……そう…だな」

 バラディオスの冷たい視線が物凄く痛い。

「いつものように……軽くお口を開けて……優しいお顔で……休まれておいでのはずで…」

 事後に、そんな間抜けな顔をして眠っているのか、俺は。

「あー、シャルン」

「時々……ふうって…小さな子どものように……息を吐かれたり……むにゃむにゃって…可愛らしく呟かれたり…」

「シャルン……その……シャルン」

 何だろうか、とんでもなく恥ずかしいものを聞いているような気がする。って言うか、とんでもなく恥ずかしい光景を晒していると言うか。

 熱くなる顔を片手で覆いつつ、シャルンの『いつもの事後の陛下でない理由』を止めようと手を伸ばした途端、

「何よりも、リュハヤ様のお手は握っておられなくて……むしろ、ご自分の胸を抱きしめるように眠られていて……お辛そうで…!」

「シャルンんっ」

 あああ、そうか、それで朝時々シャルンが痛そうに手首に触れているのか。いつも何でもないと笑うから、どうしたのかと思っていたが、つまり俺が夜中ずっと握っているわけだな、シャルンの手首を子どものように!

「もうわかった」

「はい…?」

 シャルンはようやく口を噤んだ。

「もう、十分わかったから」

「はい」

 ぽろりと新たな涙が零れ落ちて、

「ですから、私……陛下のベッドから出て下さい、と申し上げました。お目覚めになって、リュハヤ様をお求めでしたら、改めておいで頂けますかと」

「…ぷっ」

 吹き出したのはバラディオスで、レダンの情けない表情を見てとったからだろう。

「奔流王、ねえ」

「ほっとけ」

「手玉に取られてますねえ」

 さすが我らの姫様。

 誇らしげに言い放たれてむっとする。

「俺の妃だ」

「俺達の姫様ですよ、いつまでも、どこに行ったって」

 微笑みながらバラディオスが呟き、ゆっくり立ち上がる。

「あなたが無事で良かった」

「バラディオス」

「これからもそうです、姫様が泣くような真似をするなら、どこにいたって飛んで来ます」

「……ああ」

「引き続き、ガスト様とルッカの捜索は進めます。部屋の外でオルガが半泣きで待ってますから、事情を話しときましょう。で、あなたは」

 静かに礼をしながら、

「もう少しお休み下さい。レグワに麻痺薬を混ぜるような輩だ、姫様に十分癒してもらって回復して、しっかり立ち向かって下さい」

 おそらく、バラディオスは知っている。レグワに麻痺薬を混ぜる分量によっては廃人になっていたし、あるいは死出の旅路に出ていたことを。それをあえて、シャルンの前で話さないでいてくれたことに感謝した。ただでさえぐずぐずに泣き濡れているシャルンに、これ以上辛い思いをさせたくない。

「シャルン?」

「はい……リュハヤ様をお呼びしましょうか?」

「…あのねえ」

 切なそうな顔で確認されて力が抜けた。

「俺は死んだ方がいいのかな」

「そんなっ」

「殺したくないなら、こちらに来て」

「はい…」

「その訝しい顔も辛いんだがなあ」

「……はい…?」

 よいしょ、と体を起こす。座り続けるのはしんどかったし、回復には翌朝までかかりそうだが、とにかくシャルンを抱きしめて安心したい。枕にもたれ、おいでおいでと手招いて、ようやく膝の上に座ってくれた温もりを抱えた。

「陛下」

「苦しいよ、シャルン」

「はい…」

「あなたと過ごせない夜が本当に辛い」

 ちゅ、と首筋にキスし、額にキスし、頬にキスし、髪にキスしてもう一度抱える。唇にしてしまうと歯止めが効かない。催淫剤がきれていない。中途半端に弛緩した体では満足に彼女を愛せないし、力に任せて傷つけてしまうのも嫌だ。

「国も何も捨てたくなる。あなただけがこの世界にいてくれれば良いと思ってしまう」

「陛下」

「…捨てないさ、あなたは嫌がるだろう? 王様の俺が好きだもんな?」

「…レダン」

 優しい声が呟いて瞬きした。見下ろすと、潤んだ瞳が見上げている。

「もし、その重荷が本当に辛いなら、私が背負います」

「え…?」

「私は、あなたの盾であり、剣です。あなたを支え、守るものです。私が不要ならば、いつでも切り捨ててよろしいのです。私の願いは、あなたが笑って下さること、王であろうとなかろうと」

 なぜなら。

「私の世界は、あなたが広げて、見せて下さったもの……私の世界の底には必ず、あなたがいるのですもの」

「……はあ…」

 レダンはぽてんとシャルンの頭の上に頬を乗せた。

「レダン?」

「逆だよ、シャルン」

 呟いて、真実だと思う。

「俺の世界をあなたが作り上げているんだ……何を失っちゃいけないか、いつも教えてくれている」

 ぐ、と腹に力を入れて体を起こす。

「それでは聞こうか、我が妃。今日見たものを教えてくれ」

「…はい、陛下」

 シャルンは微笑み、話し出した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ