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「さあ、どうぞ」
「え……あの…」
ただでさえ豪華な部屋に引き入れられて、びくびくしていたオルガは、目の前にお茶とお菓子を出されて目を白黒させた。
「あたし、あの」
リュハヤ様には一刻も早く連れてけって言われてて。
「そのようですね」
シャルンが微笑むとぐっと詰まった顔になり、
「でも、あの、言っときますが、あそこはそんな、あなた様のような方が入れたりする場所じゃないんです、全然。暑いし、汚れるし、臭いもするし、暗いし。レース工房だけでいいのかって思ってたら、糸繰り場から見せなさいって言われるもんで、それならもう、着替えてもらうしかないと思うんです」
一気にしゃべって、大きく息をつく。
「なあるほど、そういうことでしたか。ひどくあっさり手の内を見せると思ったら、姫様がそういう場所で困るのを見たかったんですね、あの女は」
ルッカが悔しそうに唸る。
「あの、あなた様達はあの、この国の王妃とかなんですか」
「ええ、そうですよ」
「じゃあ、あの」
細い体で栄養の行き渡らない少女から、国の施策の不十分さを責められるのは当然だ、そう思っていたシャルンは続いたことばに瞬く。
「そしたら教えてもらえませんか、あのとびっきり綺麗な糸はどこから運ばれてくるんですか。もっとたくさんあったら、もっと見事なもんが織り上げられるって、皆言ってます、けど、ちょびっとしかないってリュハヤ様もイルデハヤ様もくれないし、ほんとはもっとすごい図案もあるんです。けど、もう少しだけ、あの糸があれば、ああ、あんなカバーよりうんと見事なのを作れます、あたし達、そりゃあうんと腕が良いんで」
オルガが指差したのはベッドカバー、天蓋から下がる美しい布もオルガにしてみれば大したものではないと言う判断なのだろう、一瞬見ただけで、後は眺めようともしない。
「それにあの、この際だから言っちまいますが、もし良ければ、もう少しご飯が食べられれば、あたし達、もっと一杯織り上げられます。月に一巻きじゃなくて、二巻き、ひょっとしたら三巻きいけるかも、あ、これは言い過ぎですけど、それでも王宮を飾るのにもっとたくさん差し上げられます」
シャルンはぎくりとした。
「あ、やっぱりあんな織物なんかじゃダメですか」
「いいえ、ちょっと聞いても良いかしら」
シャルンはゆっくりと尋ねる。
「その前にお茶を飲んで、お菓子を食べなさい。お腹が空いては、お話もできないわ」
「あの…」
オルガは出された焼き菓子を眺め、そっと1つ摘み、シャルンを見上げた。
「あたし、これ頂きます。残りを貰ってもいいですか、あ、あたしんじゃなくて皆に分けるんです、王妃様のだって言ったら、皆、頑張ります、今までよりもっと頑張れます」
「……まず1つ食べてね」
「はい」
オルガは素直に菓子を口に含み、噛み味わい、顔を赤らめながら飲み下した。
「ああ、うまい」
「…良かった」
シャルンはルッカに目で応じる。ルッカは頷き、残りの菓子を全部包み直して、オルガの膝に置いた。
「こんなに! ありがとうございます」
「糸繰り場とレース工房を案内してくれるお駄賃よ。もし、もう少しお話に付き合ってくれたら、別のお菓子もあげましょう」
「別の…」
ごくり、とオルガは唾を飲む。
「味見しますか?」
「あの…はい!」




