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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

最推しのために完璧な悪役令嬢になってみせます!え?逆ハーレム?なんで?

作者: 下菊みこと

ブックマークやポイント評価をよろしくお願い申し上げます・:*+.\(( °ω° ))/.:+

私、絶対に完璧な悪役令嬢になってみせますわ!


はじめまして、ご機嫌よう。私、アッロガンテ・ペッカートオリジナーレと申します。公爵令嬢です。そして、この乙女ゲームの世界の悪役令嬢…なのですが。


「アッロガンテ様!私…貴女が好きです!道ならぬ恋ですが、どうか私を選んでくださいませ!」


「ロロ。好きだよ。元々君は僕の婚約者だ。僕を選んでくれるね?」


「ロロ様っ、どうか俺を選んでください!絶対に、こんな腹黒王子より幸せにしてみせます!」


「ロロ様、虹の国に行ってみたいと仰っていましたよね?私は、魔法省に入ってすぐに虹の国に派遣されることになりました。一緒に、行きませんか?」


「ロロ!俺、第二王子だけど!にいちゃんには何一つ敵わないけど!ロロだけは諦められないんだ!俺を選んでくれよ!」


…なんでヒロインと攻略対象者達から、愛の告白をされているのでしょうか?


ー…時は大分遡り。


十年前。


「な、なにこれー!?」


「お嬢様!大声を出すなどはしたない!何事ですか!」


乳母に怒られます。いや、乳母ってなんだ。そんな、貴族みたいな…!


そう、貴族みたいといえば、この鏡!


鏡に映った私は、いつもの黒髪黒目の私ではなく金髪縦ロールの翡翠色の瞳の美少女なのです!なんでだ!


「だっ…だって!私!」


「なんです!口答えするなど!」


ばしっと頭を叩かれる。なんでだ!ていうか乳母の癖に偉そうだな!


「…あ」


頭を叩かれて思い出した。そうだった。今の私は天道愛菜ではない。アッロガンテ・ペッカートオリジナーレ。公爵令嬢で、この乙女ゲームの世界の悪役令嬢…。なんでこのタイミングで前世の記憶が突然戻ったのかはわからないけれど、これはきっと天啓だ!


私、アッロガンテ・ペッカートオリジナーレは、十年後にヒロインと攻略対象者の誰かに断罪される悪役令嬢。そしてこの乙女ゲームの世界には天道愛菜だった頃の私の最推し…この晴れの国の第二王子、アッシクラツィオーネ・グラツィアがいる…!


第二王子、アッシクラツィオーネは王家のスペア扱いを受け、何事にも秀でる兄、ドーノ・グラツィアと常に比較され育つ。それでもアッシクラツィオーネは決してめげずに、捻くれずに真っ直ぐに育つ。私はそんな、どこまでも平凡で、どこまでも可愛くて、どこまでも愚直なシックルが好きで好きで仕方がなかったのだ。


そしてそんなシックルの幸せにはヒロイン、フローリア・サントの存在が必要不可欠。


十六歳の時に学園で出会い、ひたむきに頑張って生きてきたシックルを優しい笑顔で認めてくれる聖女フローリア。そんな彼女に恋をするシックル。しかし二人の間に悪役令嬢…アッロガンテが立ちはだかる。高飛車で聖女なんて存在を信じないアッロガンテ。二人の恋心を知り、権力者の父に頼みシックルとの婚約を強引に結ぶ。フローリアとシックルは悲しみに暮れるが、やがてアッロガンテの虐めや他の悪さの証拠を掴み、断罪して婚約も破棄し、二人は結ばれてハッピーエンド。


…私、今、決めました。私は必ず、完璧な悪役令嬢になる!そして、シックルを幸せにしてみせる!


そうと決まれば即行動。悪役令嬢っていえば、性格は最悪だけど高スペックな完璧才女よね!幸い私には前世の記憶があるし、理科と数学と国語だけなら才女になれるはず!ファンブックも読み込んでこの世界の地理や歴史も知ってるし!アッロガンテとして生きてきた記憶もあるからマナーも身に付いてるし!うん、大丈夫です!


「ばあや、騒いでごめんなさい。朝の支度をお願い」


「ええ、ええ。わかっていただければ結構です。さあ、今日こそは淑女教育を受けていただきますよ」


「ええ。よろしくね」


「…え?」


「淑女教育、ちゃんと受けるからよろしくね」


「…!お嬢様!ご立派です!」


そこまで言うほどか。まあいいけれども。


ー…


ということで家庭教師の授業を受けて、無事才女認定されてきました。さあ、これで準備は万端!…は!でも、フローリアがシックルルートに行くかはわからないわよね?なら下準備としてヒロインをなんとかシックルルートに誘導しないと!


確か、この頃のフローリアは下町の村娘だったのに、聖女ということが発覚して両親と引き離されたばかり。つけ込むなら今だわ!


「ばあや!神殿に行くわ!」


「は?なにを…」


「聖女様に会いたいの!聖女様は両親と引き離されて寂しい思いをしているはずだもの!友達になって差し上げたいの!」


「まあ!本当にご立派になって…旦那様に頼んでみましょう!」


ということであれよあれよとフローリアとの面会がセッティングされました。


ー…


「はじめまして。フローリアです」


「はじめまして、ご機嫌よう。アッロガンテ・ペッカートオリジナーレです。今日はいきなりごめんなさい」


「いえ、そんな!公爵令嬢様にわざわざ来ていただき、申し訳ないくらいです!」


「あら、フローリア様は聖女なのに?」


聖女という言葉にびくりと反応するフローリア。


「私…その、そんな高潔な人間ではないんです」


「フローリア様…」


「お父さんとお母さんに会いたいし、聖女なんかになりたくなかったって思っちゃうし…みんなの思い描くような、民の安寧を祈る聖女様なんかじゃないんです」


俯くフローリア。…。


「フローリア様、顔を上げてください」


顔を上げたフローリアはぽろぽろと涙を流す。私は、持ってきたハンカチでフローリアの涙を拭う。


「アッロガンテ様…?」


「聖女だって、人間ですもの。そんなものですわ」


フローリアは大きな瞳をさらに大きく見開く。


「え?」


「悩んでもいいのです。迷ってもいいのです。嘆いてもいいのです。最終的に、たった一人の誰かの役に立つならば」


「たった一人の、誰かの…」


「ねえ、この国の第二王子殿下を知っていまして?」


「第二王子殿下…?い、いえ、名前は聞いたことがありますが、会ったことはありません」


「私も、あったことはありません。ですが、大変立派な方だそうですよ」


「そうなんですか?」


「ええ。どこまでも平凡で、どこまでも可愛くて、どこまでも愚直な方だとか」


「…?それが立派なのですか?」


「ええ。平凡なのに、どこまでも愚直なのです。真っ直ぐなのです」


フローリアが再び目を見開く。


「それは…確かに、すごいですね」


よしよし、フローリアのシックルへの株が上がった。


「ええ。私達の二つ下なのに、ご立派ですわ」


「私も…そんな風になりたいです」


「なれますわ!」


「えっ…」


むしろなってもらわないと困る。


「大丈夫。フローリア様は絶対にシックル…第二王子殿下に相応しい方になれます」


「相応しい?」


おっと口が滑った。


「とにかく!フローリア様は絶対大丈夫ですわ!私も定期的に会いにきますから、ね?」


そしてシックルを布教するから!


「…ありがとうございます、アッロガンテ様」


頬を染めるフローリアはやっぱり可愛い。シックルとお似合いだ。


「お互い頑張りましょう!」


シックルの幸せのために!


「はい、アッロガンテ様!」


こうしてシックルルートへの誘導が始まりました。


ー…


「え?第一王子殿下と婚約?」


「ああ、お前の優秀さが王宮にまで伝わってね。受けてくれるね?」


お父様は一応聞いてくれるけれど決定事項なのでしょう。まあ、フローリアがシックルルートに進んでからなんとかすれば良いか。そもそも私、悪役令嬢ですし。なんならわがままでシックルとの婚約もゴリ押せるでしょう。


「わかりましたわ。でも、私が第一王子殿下になにを言っても怒らないでくださいませね」


「え?」


ちょうどあの腹黒王子にも一発かましてやりたいと思っていましたからちょうどいいですわ!


ー…


ということで、腹黒王子ドーノとの初対面。お父様にお願いして二人きりにしてもらった。


「はじめまして、可愛いレディー。僕は…」


「ドーノ王子殿下。私、一言言いたいことがございますの」


マナーも何も無視してぶちかます。


「え?」


「そうやって下手に出ながら人を見下すの、やめてくださる?」


「…は?」


「私のことも、本当は才女とはいえ自分よりは劣るとお思いなのでしょう?」


「ちょっ…」


「第二王子殿下のことも見下してますよね」


「な、なんで君がそんなこと」


「貴方の腹黒い笑顔に私が騙されると思って?」


ふんっと鼻で笑う。


「私、貴方のそういうところが大っ嫌いですの」


「な、な…」


ぷるぷると震えて、顔が真っ赤になるドーノ。


「これ以上言わせたくないのなら、その性格を直しなさいな。少なくとも、何事にも一生懸命に取り掛かる弟を不器用な奴と見下すのはおやめなさい。…では、失礼しますわ」


私はドレスを翻しお父様の元へ戻る。意外なことに、ドーノは私のことを誰かに言いつけたりはしなかった。それどころか、数日後に私に会いにうちに来た。


「やあ、レディー」


「ご機嫌よう」


「ああ、ご機嫌よう。ロロとお呼びしても?」


「…お好きにどうぞ?」


一体なんの用だろう?


「この間、君にがつんと言われて自分の傲慢さに気づいたんだ。おかげでシックルとも仲良くなれた。ありがとう」


あら、意外。そういう方向に行くとは。


「それは良かったですわね」


「ああ、ロロには感謝してもしきれないよ」


にこりと笑うドーノ。いつもの腹黒い笑顔じゃないから、好感が持てる。


「ロロ。好きだよ」


「そうですか」


貴方に好かれても別に嬉しくないです。


「大切にするよ」


「それはどうも」


私はフローリアがシックルルートに進んだら婚約破棄するつもりですけれど。


そんなこんなでドーノと婚約者になりました。


ー…


ドーノに呼ばれて王宮に出向いた日、たまたま騎士団長令息のリオル・モルテと出会いました。


「なあなあ、あんた。もしかして、アッロガンテ・ペッカートオリジナーレ様?」


「そうですけど」


「やっぱり!あの腹黒王子を変えたって噂になってますよ!」


「はぁ…」


そうですか。


「よかったら俺とも友達になってください!」


「いいですよ?」


ということでリオルと友達になりました。二人でタッグを組んではドーノに悪戯を仕掛けて怒られる、というのが私達の日常になりました。


ー…


ある日、王立図書館に用があって行ってみたところ、魔術師団長令息のサルモ・レリジオーネと出会いました。


「…お嬢さん、この本をお探しですか?」


「あ、はい。ありがとうございます。よくわかりましたね」


「…図書カード」


「え?」


「図書カードで、貴女の名前を良く見かけます。貴女とは本の趣味が合うようです」


そう言ってにこりと笑うサルモ。


「え、じゃあ、塔の魔法使いは読みました!?」


「もちろん。あれは名作ですね。ですが続編の塔の崩壊の方が好みなのです!」


「わ、私も!」


「おや、それは嬉しいですね」


こうして私達は、本友達になりました。


ー…


ある日、いつものように王宮に行ってリオルとドーノと遊んだ帰り、なんとなく中庭に寄ってみたところ、一人で泣いているシックルを見かけました。


「第二王子殿下」


「…っ!義姉上!」


シックルは服の袖で強引に涙を拭いて、にっこりと笑う。


「えへへ、今のは内緒ですよ?」


「ええ、もちろん言いふらしたりはしません。でも、どうしたんですか?」


「いや…兄上はあんなに優秀なのに、なんで俺はこんなに平凡なんだろうって思って、情けなくて…」


俯くシックル。


「そこがシックル…第二王子殿下のいいところではありませんか」


「え?」


「どこまでも平凡で、どこまでも可愛くて、どこまでも愚直なところが、貴方の長所なのですわ」


「…?え?」


「平凡なのに、どこまでも愚直なのです。真っ直ぐなのです。これは素敵なことですよ」


「そ、そうかな…」


「ええ」


「…ありがとう、義姉上…いや、ロロ」


わー!推しに名前で呼ばれたー!わーい!


「い、いえ、こちらこそありがとうございます」


「え?」


「名前で呼んでくれて…」


「あ、う、うん」


そんなこんなで、私達は割と話すことが増えて仲良くなりました。あれ、私悪役令嬢なのにいいのかな?まあいっか!推しを近くで見れて、お話まで出来るんだし!


ー…そして現在に至る。


なんでこうなったー!?私は悪役令嬢になってシックルを幸せにしたいだけなのにー!


「愛してます、アッロガンテ様!」


「ロロ。愛しているよ」


「ロロ様!す、好きです!」


「ロロ様。愛しています」


「ロロ!愛してる!」


ここからどうやって悪役令嬢に方向転換すればいいのー!?でも最推しから告白されるとか嬉しいー!どうしよー!?


そんなこんなで、私は今日も最推しを幸せにするために無い頭を絞ります。とりあえず、先ずはドーノとの婚約破棄とシックルとの婚約から始めましょう。


「シックル」


「うん」


「私も好きよ」


「…!やったぁ!」


シックルと私以外は阿鼻叫喚の大地獄状態ですが、とりあえず頑張って今までみんなを振り回したことの清算をしたいと思います。ごめんなさい、でも私はシックルを幸せにしますので本当にごめんなさい。ついでに私も幸せになりますので本当にごめんなさい。…こんなに幸せになって本当に申し訳ないです。今までありがとう。私はシックルと幸せになります。

もし気に入っていただけましたらぜひこちらもよろしくお願いします!*・゜゜・*:.。..。.:*・'(*´ω`*)'・*:.。. .。.:*・゜゜・*


『主人公気質なわけでもなく恋愛フラグもなければ死亡フラグに満ち溢れているわけでもない至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます』

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『一国の姫として第二の生を受けたけど兄王様が暴君で困る』

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『私の婚約者が完璧過ぎて私にばかり批判が来る件について』

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『悪役王女に転生しました。でも、パパは何故か私を溺愛してきます。』

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色々な愛の形、色々な恋の形

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