感傷
たった一つの欲得。それさえあれば他には何も要らぬと思えるほどのあらゆる全てより大きな想い。
決して叶わぬとは思えど、諦めることのできない理想。
けれどもし、それに指先でも届かせるのとができるのならば悪魔の手でも借りてしまうだろう。
ああしかし、しかしだ。
叶わぬからこそ何よりそれは宝石のように貴い輝きを放つのではなかったか。
それを手にしてしまえばあらゆる景色は彩を失い、灰色に染まるのではないだろうか。
理想は胸に描くたびに、私の胸にはそのような恐れが浮かび上がってくるのだ。
けれどそれは何より馬鹿げた真にくだらない感傷だろう。
つまるところ己は手に入れてしまうことを恐れることで、そこへと一歩を踏み出さない理由を作り出しているのだ。
なんと愚かなことだろう。なんと無様なことだろう。
そんな体たらくではいっそのこと死んでしまったほうが良いだろう。
死ぬ気になれぬのならば必ず叶わない願いをぬるま湯につかるような心地で叶えたいと願うのは、流れ星に祈る童のような幼きものだ。
童のようにいつまでも甘えていることなどできないのだ。
どこまでも時というのは流れてゆき、流れるほどに己の願いは遠ざかるのだから。
ああ、ならばこそ今一度己は己の胸のうちをこそ明らかにしなければならない。それこそ、腸を1も残らずすべて取り出してしまうように。