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 私がアインザームの後ろ姿にアカンベーをお見舞いしていると、急に横から声をかけられた。


「最後の最後まで、色々とすみません」


 アインザームと入れ替わるように、ユイナが姿を現した。しかしユイナは、この演習中謝ってばかりだな…


「ユイナ、お疲れ」


 私はユイナに挨拶を返す。だけど何だか元気がない。落ち込んでるようにも見える。


「皆さん本当に凄くて、私なんかとは住む世界が違いますね」


「え、急にどうしたの?」


 何故かションボリするユイナのことが、だんだん心配になってきた。


「私なんかでは釣り合わないと言いますか、余り親しくしては失礼かと思いまして…」


「何でよ!」


 私は思わず声を張り上げた。


「私たち友達じゃないの?」


「え?」


 ユイナが驚いた顔をした。なんでそんなビックリした顔をするの?意味が分からない!


 私たちのやり取りを横で見ていたサトコが、ユイナに近付いて彼女の手を両手で握りしめた。


「もしかして、そう思ってたのは私たちだけだった?」


 サトコの言葉にユイナはハッとなった。


「違う、違います!私だって…私だって友達って思ってます!」


「じゃあ、それでいいじゃない」


 サトコが笑った。


「はい…はい!ごめんなさい、私、変なこと言って」


 ユイナが嬉しそうに笑ってサトコの手を握り返す。それから私の方に向き直った。


「ハルカさ…ハルカもごめんなさい。私何だか弱気になっちゃって…」


「ううん、大丈夫。これでちゃんと、私たち友達だね!」


 ユイナに向けて頬笑み返す。


 だけどね…ユイナ。


 恋敵ライバルにだけはならないでね、お願いよ!


 ~~~


 ユイナが「帰りの馬車はちゃんとあるの?」と心配そうに聞いてきたが、「ちゃんとあるから大丈夫」と丁重に断った。


 なんせ、カリューでひとっ飛びですからね。


 私たちはユイナと別れて歩いて軍用門まで行くと、そこであんまり会いたくない人たちの待ち伏せを受けた。


「オウマ」領の陰険3人組だ。


「何よ?」


 私は先手を打って声をかけた。


「別に…」


 クミンが「フン」とソッポを向く。それを見て、サフランが慌てて肘で小突く。


「ちょっと、何やってるのよ!」

「顔を見たら、やっぱり憎たらしいのよ」

「クミンさん、そこは抑えて」


 そこにディルも加わって、ヒソヒソとやり合っている。申し訳ないが全部聞こえてる。


 ははーん、これはアレだな。誤解が解けて今までのことを謝ろうてことだな。


 だったら謝ってもらおーじゃないか!


 私は一歩前に出ると、肩幅に足を開き胸を張って腕組みをした。その途端、背後からサトコに「ポカッ」と頭を殴られた。


「すみません、急いでいるのですが、何かご用ですか?」


 サトコが私の横に立つ。


「お引き留めして申し訳ありません。実はお伝えしたいことがありまして…」


 ディルがクミンを前に押し出した。クミンは居心地悪そうに頭を掻いている。それから一度大きく深呼吸すると、私の顔を真っ直ぐに見た。


「助かったわ。アンタのおかげね」

「竜のブレスから守ってくれたろ?」

「本当に感謝しています。ありがとうございます」


 え?え?お礼?謝るんじゃなくて…?


「ですが…」


 ディルが最後に付け加えた。


「アインザームさまの件については、負けませんから!」

「そうだ、ソッチは別だかんな!」

「ホント、最後の最後まで色目使ってんじゃないわよ、雌ガキ!」


 一気に捲し立てられ、私は真っ白になった。


 クミンたちは言うだけ言って、サッサと馬車に乗り込み満足そうに去っていった。


「な、何も誤解が解けてないじゃないのよーー!」


 私は大空に向けて、最大出力で吠えた。


 サトコが「やれやれ」と、憐みの表情で苦笑いしていた。

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