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 ボクたち演習の参加者は、教官から2時間後の再集合の指示を受け、一旦解散となった。援軍として駆けつけた警備隊による、現状把握や事後処理に時間がかかるためだ。


 ボクたちは遅い昼食を食べることにしたが、街の食堂まで行くのも億劫なので、コンビニで買ってボクの部屋で食べることにした。


「へー、男子部屋って、こんななんだ」


 ハルカが何の気なしに呟いた。


「うん、そうだね。なんか色々寂しい感じ」


 サトコもハルカの意見に賛同する。


「女子部屋の方が、もっと環境が良かったです」


 ルーの意見まで聞いて、ボクはそれらの全てを聞かなかったことにした。何処の世界でも、男子の扱いてのはこんなモノのようだ。


 その後、お弁当を食べ終わって少し落ち着いてきた頃、ボクは正座に座り直して3人の顔を見た。


「皆んなに聞いてほしいことがあるんだ」


「なに?」


 皆んなが「何だろ?」て顔をしながら、ボクのことを見てくる。心臓が飛び出そうな程に暴れまわっている。


 本当に言うのか…?だけどボクは、コレを隠し続けて皆んなと今までどおりに生活することは…たぶん出来ない。


 とはいえ、この3人とバラバラになるのも絶対に嫌だ!だったら、自分を押し殺して今の生活を守るべきなのだろうか…


 自問自答に答えは出ない。


「ケータ、聞かせて」


 ハルカの意志の強い真っ直ぐな視線がボクを見つめる。


 そうだ…ハルカはボクより先に一歩踏み出したんだ。ボクも彼女の気持ちに応えてなくては!


「そうだよな、分かった」


 ボクたちの会話から何かを感じ取ったのだろう。サトコとルーも居住まいを正す。


「ボクはたぶん、これから最低なことを言います」


 ボクは意を決して、皆んなの顔を真っ直ぐに見た。


「ボクは、3人皆んなのことが好きです!」


 ヤケクソに近い声で一気に吐き出すと、顔を伏せて地獄の沙汰を待った。


 どのくらいの時間が経ったのだろうか?長かったのか短かったのか…


 サトコの短い咳払いが「コホン」と聞こえた。


「あの、ちなみにそれは、友情?愛情?」


「愛情…だと思います」


 ボクは伏せた顔が上げられない。


「そこに私も含まれてるの?ホントに?」


 ハルカの驚いた声が被さってくる。ハルカの意図は分からないが、顔を見る勇気もない。


「含まれます…」


「それでケータお兄ちゃんは、この先どうするんですか?あの家を出るんですか?」


 ルーの発言に正直驚いた。結果に関係なく出て行くと思われたのだろうか。だけど、ボクの答えは決まってる。


「もし叶うなら、これからも皆んなと暮らしたい」


「だったら何も問題ありませんよ」


 ルーのあっけらかんとした声がボクの元に届いた。


「え?」


 ボクは思わず顔を上げた。皆んな笑顔で誰も怒ってなかった。


「今までの努力が、順調に結果を出してるって分かったんだから!」


 ハルカが涙の粒を撒き散らしながら、ボクに頬笑みかけた。


「そうね、そしてこれからも覚悟してよね、ケータくん」


 サトコは眼鏡の位置をスッと直すと、パッと明るい笑顔をボクに見せた。


「手応えがあるんだから、これからもっともっと頑張るだけです!」


 ルーは胸の前で小さく両手でガッツポーズをすると「フンス!」と気合いをいれた。


 それから皆んな、示し合わせたかのように、揃ってボクの顔を見た。


「最後に勝つのは、私よ(です)!」


 その笑顔と共に綺麗にハモった3人の声が、ボクの心を鷲掴みにした。

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