番外編 14
「はい。あれはきっと『獣魔使い』です」
「獣魔使い?」
「10年にひとりと云われるレアな才能です!しかもアレ程大きく立派な獣、過去の文献でも見たことがありません」
「へー、どんな人だったんだ?」
「銀色の大きな獣の背に乗った、黒い帽子を被った女性でした。氷魔法で助けてくれたのです……て、あれ?」
アリスは口にしながら、なんだか不思議な気分になった。なんだか記憶に引っかかる。
「眼鏡はかけてたか?」
ショウは急に真剣な表情になった。
「眼鏡……あ!」
アリスもショウの意図に気付いた。
「すみません、顔は見ていないのです」
「バラスの話では仔犬ということだったがな」
仔犬…か。少し感じる違和感に、ショウは「ふーむ」とアゴに手を当てた。
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「ショウ、私はそろそろ部屋に戻ります」
アリスがソファから立ち上がった。
「あ、ああ、送るよ」
ショウも立ち上がると、アリスの横に並んで立つ。そのときアリスが頬を赤く染めて、少し上目遣いにショウを見た。
「ん?どうした?」
ショウがキョトンとした表情になる。
「…ん、もう!知らない!」
アリスが急に不機嫌になる。
「お、おい、急になんだよ?」
ショウがあたふたした。いつもクールなショウが見事に慌てている。アリスは「フフッ」と吹き出した。自分の言動で慌てるショウの姿に、今はこれでいいかと納得した。
「冗談ですよ」
アリスはショウの胸板を、右手の人差し指でチョンとつついた。そのとき、ショウのスマホの画面がいつもと違うことに気付いた。
「あら、スマホに通知が来てますよ?」
「本当か?」
いつの間に来てたんだ?ショウは自分でもスマホを確認する。
『付近のスマホをマップでの検索対象に登録しますか?』
スマホの画面を覗き込んでいた二人が、同時に息を飲む。これは一体どういうことだ?
ショウとアリスは顔を見合わせると揃って頷いた。それからショウは恐る恐る「OK」をタップする。
すると「ピコン」と更に通知がきた。
『付近に登録可能なスマホはありません』
二人は同時に唖然とする。暫くして、やはり二人揃えたように「ハァー」と息を吐いた。誤作動でも起こしたのだろうか…
それから今の通知が流れたあとに、裏からもう一つの通知が表示された。
『称号を獲得しました』
「え?」
ショウは上擦った声を上げた。
「す、すぐに確認してみましょう!」
アリスも顔を上気させて興奮している。
「そうだな」
ショウは聖騎士のスキルを発動させると、スキル画面を確認した。
聖騎士(白銀の剣と盾)追加装備(回雪のマント)
装備スキル:損傷や劣化が起こらない
職業スキル:剣聖(五感及び身体能力が飛躍的に向上する)
追加スキル:虚空跳躍(雪が舞うように空を駆ける)
称号 :竜滅者(竜族の急所が視覚出来る)
スマホ :マップ(生物探知可)
「これは…仇討ちに大きく前進したな」
「そうですね、必ずハルカたちの無念を晴らしましょう」
ふたりは見つめ合うと、力強く頷いた。




