表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
92/165

番外編 12

 どうやらオイーヌ・ネッコ本隊が援軍に間に合ったようだ。ショウは背後の戦況が好転したことに気付いた。


 あとはこの「竜」だけなのだが、流石と言うべきか身体が硬い。魔砲台の援護を巧く利用し隙を見て何度も斬りつけるが、なかなか有効なダメージを与えることが出来ない。


 自分の武器が「白銀の剣」でなかったら、武器の方が先に参っていたことだろう。


 ショウはこの頃には、この竜が「火竜」ではないことに気付いていた。だが本番前の前哨戦として、ここで勝てないと火竜にも勝てないのは道理である。


(なんとかコイツを地面に引き摺り落とさないと)


 やはり空中では踏ん張りが甘い。渾身の一撃を繰り出すことが出来ないのだ。翼や眼球など、ダメージの通りそうな箇所は考えつくが、ブレスを警戒してどうしても容易に近付くことも出来ない。


 そのとき毒竜がブレスを噴いた。ゆっくり考える時間すら与えてもらえない。ショウは左方向に走って躱す。しかしホースで水を放水するように、ブレスが後を追いかけてきた。ブレスに灼かれた地面がブクブクと泡立ち異臭を放つ。


「ちっ!」


 ショウは地面を蹴り跳ね、空中を駆け上がった。その瞬間、毒竜が翼を大きくはためかせショウに強風を浴びせかける。気流が乱れ、回雪のマントが風に煽られた。


「しまっ…」


 体勢が崩れ、ショウは落下を始めた。それでもなんとか身をひるがえし、膝をついて着地する。


(マントの特性を見切られたのか?)


 竜の知能の高さに驚きを隠せずに、ショウは空を見上げた。そこにあったのは、今にもブレスを噴かんとする毒竜の姿だった。


 動くことも、声を上げることも出来なかった。瞬間的にアリスの顔が脳裏に浮かんだ。


 次の瞬間、毒竜の姿が急に縮こまり、真上から降下した金属の塊に叩きつけられた。交互に合計3発、毒竜は地面に押し潰される。


 ショウは唖然とした。何が起きたのか理解が出来ない。


「トドメは任せたっ!」


 何処からともなく男の声が響いた。一瞬、知ってる声に聞こえたがそんな筈はない。ショウは反射的に立ち上がると、クレーター状に陥没した場所に駆け寄り竜の姿を探した。


 毒竜は地面に押し潰され、半ば埋まった状態であったが確かに息があった。


 ショウは白銀の剣を両手で逆手に持つと、渾身の力で突き刺した。同時に竜の身体が光で弾け、ショウは思わず目を閉じた。やがて光が収まりショウが再び目を開けると、竜の姿は一条の光となって天空に舞い上がった。


「やっ…たのか?」


 ショウは光の消えた天空を見上げて呟いた。それから思い出したかのように後方を確認するが、さっきの声の主の姿は見当たらなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ