表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
90/165

番外編 10

「コレ、魔砲台だよな、すぐに撃てるのか?」


「もう間もなくです!…て、アンタ誰だ?」


 男は答えながら振り向いた。しかし見知らぬ顔に思わず驚き手が止まる。


「すまない、俺は…」


「あ、その制服は王宮の!?」


 しかし男はショウの茶色の軍服に気付くと、真っ直ぐ立ち上がりビシッと敬礼をした。


「失礼しました!」


「別に構わない。とにかくコレはすぐに撃てるんだよな。射程は?」


「1000マルタ(1マルタ1メートル)です」


「ここから届くのか?」


「今の竜の位置は、およそ8~900マルタ。いけます!」


「分かった。俺はヤツを可能な限り引きつける。アンタたちはとにかく撃ち続けろ。絶対街に近付けさせるな!」


「了解しました!」


 返事を聞くと、ショウは外壁からバッと飛び出した。後方で衛兵の慌てた声が聞こえたが、気にせず空中を駆けていった。


 ~~~


 ショウが空中を駆けている間も、竜は2度3度とブレスを噴いた。衛兵は退却戦を続けているだけだが、人数が減っている気配がない。誰か優秀な防御魔法の使い手がいるようだ。


 ショウは一先ずホッとひと息ついた。


 そのとき、外壁からの魔砲台の初撃が竜の腹部に着弾した。竜が「グォーー!」と咆哮する。どうやら始まったようだ。


「コイツは俺が引き受ける!皆は距離をとって態勢を整えろ」


 ショウは退却中の衛兵の中に降り立つと、一杯に声を張り上げた。


「ひゃっ!」


 数人の衛兵が通り過ぎる中で、女性の息を飲む声が聞こえた。振り返ると、黄土色の外套を頭までスッポリ包んだ後ろ姿があった。


 少し疑問に思ったが、構ってもいられない。


 ショウは再び竜に向かって、空中を駆けていった。


 ~~~


 アリスが演習場に辿り着いたとき、戦場は酷い有り様だった。後から押し寄せた「レッドウルフ」の大群が所狭しと暴れまわっていたからだ。


「レッドウルフ」とは、真紅の毛並みの狼の魔物である。戦闘時は毛並みが高温を発し、基本的には炎耐性が高くなっている。


 混乱の中で、アリスはショウの姿を探す。やはりと言うべきか、竜のそばにショウの姿を見つけた。


 外壁からの魔砲台の援護を受けつつ、竜の注意を引きつけている。今すぐ駆けつけたいが、空を飛ぶ竜に自分はあまりに無力。焦る気持ちを抑えつけ、自分のやるべきことを探す。


(とにかく一体でも多く魔物を倒す!)


 アリスは腰の片手剣をスラリと抜いた。キーリン家所有の業物である。


 既に怪我人も出ているようで、数人の治癒術士が忙しそうに動き回っている。そこを守るように、緑と白の「オウマ」領の制服を着た金髪と茶髪の女性が、多数のレッドウルフと対峙していた。


 魔物の数が多い。アリスは迷うことなく魔物の群れの中に飛び込んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ