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 翌朝。


 訓練生同士の演習が始まった。


 壮年の主任教官が消魔の空間を設置して、次々と試合をこなしていく。


 アインザームとケータたちは、この演習から外された。誰も彼らとやりたがらなかったからだ。教官に勝った隊と、その彼らに勝った隊だからね。仕方ない。


「次、ローゼリッタ、ユイナ隊、ハルカ、サトコ隊出ろ」


 あ、呼ばれた。これが私たちの初試合になる。しかも相手はローゼリッタだ…


「約束、覚えてるよな!」


 ローゼリッタが挑発するように声を張り上げた。勝つ気満々だな。とはいえコチラも、負ける訳にはいかない。


「絶対、勝てよ」


 ずっと態度がよそよそしかったケータが、私たちを心配そうに見てきた。ま、原因はきっと私なんだろうけど…


「あれ、応援してくれるの?」


 私はちょっと意地悪く言った。


「あ、当たり前だろ。何でだよ?」


「だってケータ、満更でもなさそうだった」

「ケータくんだって、男の子だもん…。興味あるのは分かるよ」

「ケータお兄ちゃん、イヤらしい目をしてました」


「そそ…そんなことねーよ!」


 ケータの目が、面白いくらい泳いでる。私たち3人は顔を見合わせて「プフッ」と笑った。


「大丈夫、絶対勝つから」

「あんな人にケータくんは絶対渡さない」


「ああ、頼んだぞ」


 私とサトコは揃って頷いた。


「それじゃ、行ってきます」


 ~~~


「すみません、ちょっといいですか?」


 私は空間内から、主任教官に声をかけた。


「言ってみなさい」


「私は防護魔法の使い手で、攻撃の手段があまりありません。なので相手の攻撃を3分間耐え切ったら勝ちにしてもらえませんか?」


「ふむ、相手が承諾するなら別に構いませんが?」


 壮年の主任教官はローゼリッタの方に顔を向けた。


「アタシは構わねーぜ。相方のユイナもアンタらとは戦いにくいだろうからな」


 ユイナはコクコクと何度も頷く。


「ただし、3分もいらねー。一撃だ!アタシの一撃に耐えたら、オマエの勝ちでいい」


 乗ってきた!


 ルーの分析によると、ローゼリッタの武器は大剣で炎魔法による属性付加が得意みたい。自分の一撃に絶対の自信を持つタイプ。


 挑発すれば必ず受けると、ルーが言ってた通りね。


「よろしい、それでは始めなさい」


 教官の開始の合図とともに、私とローゼリッタが歩み出て、お互いの距離を詰めていく。


 その過程で私は結界を発動させる。一度球状に展開するが直ぐさま身体にフィットさせる。何度練習しても、これ以上は私には無理だった。


「死んでも後悔するなよ」


「やれるモノならやってみなさいよ!」


 私たちは短く言葉を交わす。


「炎熱剣」


 ローゼリッタは大剣を中段に構えると、魔法を唱えた。鋼鉄製の大剣が、みるみる真っ赤に熱されていく。見るからにヤバそうな感じがビンビンと伝わってきた。


 ローゼリッタが大剣を上段に振り上げた。それを受けて、私は右の手のひらを前に突き出す。これで意図は伝わるハズ…


「太刀筋を見切るなんて無理そうだもんな。いいぜ、()()だな」


 良かった、伝わった。


 その瞬間、ローゼリッタが大剣を振り下ろした。私の右手にかなりの衝撃が走る。両足を前後に開き、気合いで踏ん張る。


 そのとき私を中心に「ブワッ」と突風が円環状に発生し、その風が周りの観戦者に襲いかかった。突風が通り過ぎたあと、ローゼリッタの大剣を右手で受け止める私の姿を見て、周りの観戦者から響めきが起こった。


「私の勝ちね」


 驚いた表情のローゼリッタを見ながら、私は宣言した。しかし勇者の筋力とは、大したモノだ。アレ程の衝撃を支えられるのだから。


「すまない、待ってくれ」


 ローゼリッタが大剣を引きながら、強い視線を私に向けた。


「なによ?」


「さすがに少し躊躇った。アタシだってアンタを殺したい訳じゃないからな」


 ローゼリッタは後頭部を掻きながら、フイッと視線を外す。しかし直ぐさま私に向き直った。


「次は本気でやる。頼む、もう一度やらせてくれ」

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