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「ではこの勝負、ここまで!」


 審判の教官が終了の合図を宣言したとき、私とサトコは思わず顔を見合わせた。瞳を潤ませながら、感極まってお互い抱き合う。


「やった、やった!」


 どういう理由があったのか分からないけど、結果的にはアインザームたちに何もさせない一方的な勝利だった。


 しかし喜んでいられるのも束の間、お胸のあたりに襲いくる衝撃のボリュームに現実に連れ戻される。


 私はゆっくりサトコから離れた。


「ハルカさん、サトコさん、ケータさんて本当にスゴい、スゴいです!」


 ユイナが私たちに、興奮冷めやらぬまま声を張り上げた。瞳がキラキラと輝いている。


「申し訳ありませんが、正直勝てるなんて思ってませんでした。本当にスゴい…」


 ユイナが私とサトコの手を握りしめながら「スゴいスゴい」と繰り返している。


 あれ…、ちょっと待って…。私、ユイナとは普通の友達でいたいんだけど…


 チラリとサトコの表情を確認すると、サトコも怪訝な視線をユイナに向けている。


「ちょっと、ユイ…」


「よお、ユイナ!」


 ユイナに念のため確認しようと呼びかけたとき、私の声を遮るように長身の女性が現れた。ユイナと同じ黒い制服に身を包み、身長はケータと同じくらいでモデルのような体型だ。少し年上だろうか。浅黒の健康的な肌に黒いショートヘア。黒く細い目で私たちを見下ろしてきた。


「ローゼリッタさん!」


 ユイナが振り返って、驚いたように彼女の名を呼んだ。


「さっきから気になってたんだが、アンタ、あの空間術士と知り合いか?」


 ローゼリッタがクイっとアゴでケータの方を指した。


「ケータさんですか?はい、まあ…」


「付き合ってんのか?」


「ええ!?」


 ユイナが突然の質問に飛び上がった。同時に私とサトコの中に警戒信号が鳴り響く。グレーのユイナとは違い、明確な意思表示。パターン赤だ!


「ちち、違いますよ!尊敬はしてますけど、そんな、私なんかが…」


 ゴニョゴニョと声が尻すぼみになる。限りなく濃いグレーだが…。しかしそれより、突然現れたこのオンナの方が問題だ。


「そうか、なら遠慮する必要はなさそうだな」


 ローゼリッタは私とサトコに聞こえるように、コチラを見ながらそう言った。


「そこは、遠慮してよね!」

「そうよ、いきなり失礼ね!」


 私たちは負けじとローゼリッタを睨み上げた。


「ローゼリッタさん、こちらは…」


 ユイナがオロオロしながら、ローゼリッタの左腕を掴んだ。


「オマエら、誰だよ?アタシは知り合い以外に遠慮するつもりなんて、更々ないぜ」


 カチーーーン!どうやら私の堪忍袋もここまでのようだ。


「皆さん、ただいまですーー」


 そのとき、なんとも緊張感のない声が私たちのもとに届いた。


「あれ?ユイナの知り合いか?」


 続いて見慣れない顔の存在に気付き、その制服から予測したような声がかけられる。


 ケータとルーだ。


 しかしこの二人の登場にいち早く反応出来たのは、新参者のオンナであった。なんてこった…


「アンタ、ケータってんだってな。アタシはローゼリッタだ」


「あ、うん、よろしく、ローゼリッタ」

「よろしくです、ローゼリッタさん」


 ケータとルーが、全くの無警戒でローゼリッタに挨拶を返す。


「さっそくで悪いんだけどさ、ケータ、アタシとデートしてくんない?」


 はあーーー!?


 私の堪忍袋が弾け飛ぶ音がした。

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