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これは「行け」てコトなんだろうな。わざわざボクたちにこんな話をするのだから、次の展開は決まったも同然である。
「行けってコトですか?」
ボクは敢えてファナに質問した。
「こういう任務はいつもルーに頼んでいるので、今回もそうしようかと思っている」
あれ…?ファナの予想外の返答にボクは戸惑った。ルーを暫くの間、送り出してほしいということなんだろうか?
「ただ、いつもなら護衛を数名付けているのだが、今回はケータ殿たちにお願いしたい」
結局ボクらも行くんかいっ!
ボクの内心のツッコミが聞こえたかのように、ファナがニヤリと嗤った。ホント性格悪いなー。
「分かりました」
ルーの護衛と言われてしまったら、承諾以外の選択肢はボクにはない。
「助かるよ。そこで皆にコレを用意した。受け取ってもらいたい」
そう言って差し出したのは、リース家の衛兵が着用している外套であった。全体的には黄土色で、左胸にはリース家の家紋が描かれている。下部の裾部分には茶色の市松模様が入っていた。
この用意周到さ…。つまるところファナは、この申し出が断られることなど初めから想定してなかったと言うことだ。
「これは軽くて丈夫な素材で作られている。少々の物理ダメージならコレで防げる筈だ」
ファナは4枚の外套をまとめてボクに預けてきた。確かに思ったより重くはない。
「演習に参加する以上、扱いはリース家の衛兵となることは了承してもらいたい」
「分かってます」
ボクは頷いた。流浪の冒険者とか名乗るより、よっぽど目立たなくて良い。
「それと、向こうで必要になるから、君らの職業を確認しておこうか」
「職業?」
ボクがオウムのように繰り返すと、ファナはフフッと笑った。
「本当にこの世界のことに疎いな」
「う…」
ボクは言葉に詰まった。
「まあ、剣士とか魔術士とか、そういうモノだよ」
「ああ、なるほど」
「君たちは一体何が出来るんだい?」
ボクらはお互い顔を見合わせた。正直ほとんどバレたも同然だ。素直に出来ることを見せようか。ボクの意図を感じたかのように、ハルカとサトコがゆっくり頷く。
ボクはズボンのポケットから「トライメテオ」を取り出すと手のひらからフワッと浮かび上がらせた。拡大とかは室内ではさすがに控えておく。
「浮遊魔法とは…、ケータ殿は空間術士だな」
「空間術士…」
ファナの言葉を飲み込むように繰り返した。本当は違うのだけど、ファナもそれを判りながら、ボクたちにこの先に必要な「知識」を与えてくれているのかもしれない。
それに伴い、ファナがボクたち3人だけで来るように言った本当の理由が分かった気がした。ファナはルーにも黙っててくれるつもりなんだ。一体いつからバレていたんだ?
「次、私」
ハルカがネックストラップで首から提げているスマホを手に持った。
「それがルーの言ってた、珍しい魔法道具か?」
「え…?そうよ」
「その薄い道具のどこに、魔核や魔筒が入ってるなんて言うつもりだい?」
ファナがククッと笑った。
「運が良かったな。そんな雑な誤魔化しでここまで来れたなんて…」
ファナの言葉にボクらは身震いした。言われて初めて気が付いた。反論の余地もない。シシーオ領でもユイナに追求されて危ない場面もあった。本当に運が良かっただけだ。それはファナに出逢えたことも存分に含まれる。
「渡した外套を巧く使って、他人に見られないように気をつけるんだな」
ファナはボクらの顔を見ながら諭すように言った。




