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「何かご用でしょうか?」


 中年男性店員がにこやかに近付いてきた。


「コレって、どんなモノですか?」


 ボクはベルトの付いた箱を指差す。すると店員は突然瞳を輝かせて、前のめりになった。


「それに目を付けられるとはお目が高い」


 あ、そんな感じの人か…。とはいえ、老舗の店で雇われているのだから大丈夫と信じたい。ボクの後ろでハルカも「大丈夫かしら」と呟く。ボクと同じ不安を感じたのだろう。


「それは、重い荷物を浮遊させて持ち運びを便利にするモノです!」


 店員は、「コレでもか!」というくらい自信満々に説明した。


「……それだけ?」


 ボクの反応の薄さに、店員の顔が蒼くなった。信じられないモノでも見たかのような目でボクを見る。


「コレは浮遊魔法を術式に組み込んだ『トンデモない逸品』なんですよ!」


 店員は、おツユを撒き散らせながら熱弁した。どうしてコイツの凄さが分からないんだ?と言うような顔をしている。


「だったらなんで、()()()()()になってるのよ!」


 ハルカが値札を指差しながら声を張り上げた。定価が10万リングから段階を経て9800リングまで下がってきていた。


 ハルカの指摘に、店員のテンションが急に落ちた。


「本当に大きな、例えば冷蔵庫とかタンスとかにはベルトが届かず使えないのです」


 店員の声は小さくか細い。


「なんでベルトを延長しないんですか?」


 サトコは首を傾げる。もっともな質問である。


「浮遊力場は純正ベルトの範囲内しか発生しないので、延長させても効果が出ないのです…」


 ああ、なるほど…。画期的な商品だが、活躍範囲が限定的で残念な逸品てコトか…


 しかし、アプリにインストール出来ると言うなら話は別だ。天秤は「欲しい」に傾いてしまう。


 そんなとき、ルーとユイナが蒼い顔で戻ってきた。なんだか少し震えている。


「どうした?」


 少し心配になってルーの様子を伺う。奥で何か良くないことがあったのかもしれない。


「ひゃ…150万リングで、売れました」


 ルーが震える手でお金をハルカに差し出した。


「150万リング!?」


 ボクたちは大声で驚き、揃って口元を押さえてキョロキョロした。


 ハルカがお金を受け取ると、スマホから「ピコン」と音がした。続いてアプリを操作すると、瞬時にお金が収納される。


 ボクは自分のスマホでウォレットの残高を確認をしてみると、「1,748,950リング」と表示されていた。思わず生唾を呑んだ。


「アレ、買ってもいいよな?」


 ボクはハルカとサトコに伺いをたてた。


 なんだか浮かれてる感は確かにあるけど、「いつ買うの?」「今でしょ!」てヤツだ。ハルカとサトコも壊れた人形のように何度もウンウン頷いている。


「コレが欲しいんだけど…」


 ボクはスマホから9800リングを取り出すと、商品とお金を店員に渡した。


「かしこまりました、お客さま!絶対良い物を買われましたよ!」


 ~~~


 商品を受け取ると、ボクのスマホが「ピロリン」と鳴った。画面を確認すると、『インストールを実行しますか?』とある。ボクは迷わず「OK」をタップした。同時に魔法道具がフッと消滅する。


 少ししてスマホが「ピコン」と鳴ると、カメラのアイコンに波線の上矢印が増えた。ボクはカメラを起動させてみる。すると『写真に撮った対象の浮遊及び移動が出来るようになりました』とインフォメーションが入った。


「おおーーー!」


 思わず大きい声が出てしまった。カメラで撮るという制約はあるが、ベルトの制約がなくなったので使い勝手が良くなった気がする。


 ボクのスマホの画面を覗き込んでいたハルカとサトコが、お互い顔を見合わせた。


「わ、私も探してみる!」


 ふたりは店内の捜索を始めた。ルーも興味本位で後をついて行く。


 ユイナだけが、なんとなく蚊帳の外な感じだった。

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