41
「あんなに取り乱したカミラ隊長を初めて見ました」
ユイナはボクたちを案内しながら、興奮気味に言った。魔核の価値は未だにピンとこないが、ふらりと現れた若造が巨大なダイヤモンドの原石を持ってたようなモノだ。驚くのは無理もない。
「カミラ隊長は、いつでも冷静で格好良くて…」
ユイナの話は止まらない。きっと、尊敬や憧れの念がとても大きいんだろう。その瞳はキラキラと輝いている。
「若くして隊長にまでなられたのに、女性というだけで、あんなところに押しやられて…」
話しながらユイナの興奮は、突然面白いように萎んでいった。なんだか浮き沈みの激しい人だ。
「どういう意味?」
「な、なんでもありません」
ユイナはボクの方に顔を向けると、努めて笑顔を作ったようだった。
「どんなときでも見せる隊長の真摯な姿勢に、私たちは隊長のことを本当に尊敬しているのです」
~~~
ユイナがボクたちを案内してくれたのは、衛兵も利用する魔法道具の老舗であった。
最近の魔法道具ブームにより専門店は急増し、中には粗悪な店舗もあるらしい。特にボクらみたいな価値に詳しくない者は、所謂「カモ」にされてしまうようだ。
カミラがボクたちに案内をつけたのは、そういう意味も含まれていたのだと思う。
そしてカミラのそんなところが、ユイナの言う真摯な姿勢なのだろう。
店舗に入ると、ユイナとルーは奥の買取カウンターに向かった。
初めはボクたちも付き添う予定だったけど、初めて見る「魔法道具」に心奪われてしまった。売却はルーに任せて、色々見て回ることにした。
「見て、ケータ!これ『ファイヤーボール』が撃てるようになるんだって」
ハルカが30センチメートルくらいの「魔法杖」を持ってはしゃいでいる。少年のような笑顔だ。
「おお、ファイヤーボール!」
やっぱり異世界に来たからには、「ファイヤーボール」とか惹かれるモノがある。これが俗に言う「オラ、ワクワクすっぞ!」てやつか。
事前にユイナに教えてもらったことだが、魔法道具には大まかに分けて「生活用」と「軍事用」の2種類がある。読んで字のまま、「日常生活を便利にする」モノと「戦う」ためのモノである。
そして軍事用魔法道具は「魔法適性のない者でも魔法が使える」ようになることを目的としており、これまた大雑把に「攻撃」「防御」「身体強化」の3種類がある。
本家の魔法効果には遠く及ばないが、(充填時間は必要だが)使い放題というメリットがあるようだ。
そうこうしながら店内を歩いていると、ボクのスマホが突然「ピコン」と鳴った。
「ん?」
不思議に思いながら画面を確認すると、ベルトのついた四角い箱がクローズアップされて表示されている。それと『入手後、アプリにインストール可能』という通知が一緒に表示されていた。
「んん?」
ボクは自分の目を疑った。思わず画面を覗き込む。
「どうしたの?」
そんなボクの様子に気付いたハルカとサトコが近寄ってきた。
「こ、これ…」
ボクが自分のスマホを指差すと、ふたりは誘われるように覗き込んだ。
「ええ?」
ハルカが目を丸くして仰け反って驚く。
「あ、ケータくん、アレ…」
サトコが商品陳列棚を指して声をあげた。ボクも釣られて目を向ける。
「あ…!」
表示と同じモノがそこにあった。
「す、すみませーん!」
ボクは思わず、近くにいた店員さんを呼んだ。




