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番外編 1

 書斎にノックの音が響いた。


 ファナは机で事務処理をしながら、いつも通りに「入れ」と声をかけた。


「ファナさま、キーリン家の使者がお見えになってます」


 現れたのはリンスである。


「キーリン家の?」


「はい。応接室でお待ちです」


「分かった、すぐ行く」


 前を歩くリンスの姿を眺めながら、ファナは「何の用だ?」と首を傾げる。


 リンスは応接室の扉をノックすると先に部屋に入り「ファナさまがお見えになりました」と頭を下げた。ファナが続いて入室すると、リンスは扉を閉める流れでそのまま退室した。


「待たせて悪かった、使者殿」


 応接室にいたのは、キーリン家特有の軍服のような茶色の執務服を着た男女であった。しかし女性の方は、白い外套を羽織り、フードを目深に被っている。


「こちらこそ、突然の訪問、申し訳ございません」


 フードをずらしながら、少女が応えた。輝くような銀髪のボブヘアーが姿を現わす。


「ひ、姫さま?」


 ファナが素っ頓狂な声を出した。


「たった二人で、どうやってこんな所まで…」


 言いながらファナは気が付いた。


「そうか…、転移の門」


 転移の門とは、王宮にある大型の魔法道具である。登録してある任意の場所に一瞬で移動出来るという優れ物だ。さらに携帯式の専用の道具に信号を送ると、帰ることも出来るのだ。


「ええ、その通りです」


「しかし女王も、たった二人でよくお許しに…」


「もちろん、無許可です」


 アリスが「テヘッ」と可愛く笑った。


「は?」


 ファナが再び、素っ頓狂な声をあげた。


「だ、大丈夫…なのですか?」


「さあ?そのときは、そのときです」


 あれれ?姫さまって、こんなお方だったのか?ファナはフラついて後ろにヨロけた拍子に、壁に後頭部をぶつけてしまった。


「だ、大丈夫ですか?」


 アリスが驚いて声をかけた。


「あ、ああ、すまない。取り乱してしまった」


 ファナは駆けよろうとするアリスに制止をかけ、軽く頭を振った。


「アリス、お前が悪い。あまり臣下に普段の姿を見せるものではない」


 男がボソッとアリスをたしなめた。


「は、はい、そうですね、ショウ。気を付けます」


 アリスがシュンとした。


 普段の姿?いや、違う。ファナは記憶を遡った。


 お見かけしたのはもう何年も前だが、絶対こうではなかった筈だ。となると、この「ショウ」と呼ばれた男が変えたのか……いや、本当のアリスさまを引き出したのか。


 ファナは黒縁メガネの少年を、興味深そうにマジマジと観察する。ファナの視線に気付いたショウは、フイッと顔を逸らした。


「それで今日は、どのようなご用件で?」


 ファナは話を戻した。


「ああ、そうでした!」


 アリスは「パン」と手を叩いた。


 そんな仕草を見ながら、ショウが「やれやれ」と溜め息をついた。

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― 新着の感想 ―
[一言] まあ、身バレ特定できそうな容姿だし、そりゃ、問い合わせに来るわな(笑)
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