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 夕食は、ルーたち5人の子どもが作ってくれるらしい。と言うか、この屋敷の家事全般が子どもたちに与えられた仕事のようだ。


 ボクたちは応接室に通され、そこで支度が済むまで待つことになった。


「ったく、なんであの子がついて来ることになるのよ!」


 ハルカがプリプリしている。なんでこんなに仲が悪いんだか…


「家一軒の対価と考えたら、安いモノだよ」


 無一文のボクたちには、大変助かる話だ。


「とても断れる状況ではなかったけど、それでもケータくんは楽観視しすぎよ!」


 なんだかサトコも、ちょっとご立腹のようだ。一体どうしたというのだ?


「なんだよ、ふたりとも。ボクにはルーがそんなに悪い子には見えないけど…」


「確かにルーは『悪い子』じゃないわ。でもね、それとは別問題!」


 ハルカが吠えた。


「そうよ、別問題!」


 サトコも声を張り上げた。


「な、なんだよ…、別問題って?」


 ボクはふたりの少女に凄まれ後退りする。すると、ふたり同時に「はあー」と溜め息をつかれた。


 しかしお互いの「溜め息」を聞きつけたふたりは、瞬時に体を向け合い臨戦態勢に入る。


「愛想をつかせたのならどうぞご自由に、サトコ」


「ハルカこそ、大きな溜め息。無理に頑張らなくても、後のことは私に任せて!」


 なんだか一触即発の緊張状態。ボクはどうしたらいいのか分からずにオロオロした。


 その時、ノックの音がしたと思ったら扉がガチャリと開いた。


「夕食の用意が出来たよー」


 現れたルーの姿が、ボクにはまるで天使の姿に見えた。


 ~~~


 夕食は5人の子どもたちも交えて賑やかなものだった。晩餐会のような豪華な料理という訳ではなかったが、見た目の綺麗な料理が並んでいる。しかも、どれも美味しい。店で出しても恥ずかしくないレベルだ。


「どうですか?お口に合いますか?」


 その時、5人組のひとりの女の子がボクの横に近よってきた。茶色のポニーテールを赤いリボンで結んだ活発そうな女の子だ。たしか名は「リンス」といったかな。


「どれも美味しくて、ビックリしたよ!」


「そうですか!とても嬉しいです」


 ボクが正直に感想を伝えると、リンスは満足そうに微笑んだ。


「コレはもう、お食べになりましたか?」


 リンスが手に持っていたお皿を差し出した。その料理は、ボクの知識では「肉じゃが」に似ていた。そういえば、コレはまだ食べてなかったな。ボクはパクッと一口食べた。


「こ、これ美味しい!ボクの好きな味だ!」


 ボクはリンスからお皿を受け取ると、次々と口に入れた。


「そうですか!お気に召しましたか!」


 リンスは興奮したように喜んだ。


「それ…ルーが作ったヤツ…」

「おい、やったな!ルー」


 ボクの向かいに座っていた、双子の姉弟の「レン」と「ロン」が口を挟んだ。水色のショートヘアの同じ髪型をしている。


「なにっ!」

「え…?」


 子どもたちの言葉に反応したのは、何故かハルカとサトコだった。しかもハルカに関しては、驚いたようにガタンと席から立ち上がっている。


 ルーは対角線の位置に座っていたが、恥ずかしそうに顔を伏せていた。


「おい、何か言えよ、ルー」


 ルーの横に座っているボサボサ黒髪の「ライ」が肘で小突く。


「ま、毎日、頑張ってご飯作るね」


 ボクの方に向けたルーの顔は、耳まで真っ赤に染まっていた。


「ルーひとりに任せたりしないから、安心して」


 サトコがルーに優しく微笑みかけた。しかし、テーブルの下で握りしめた拳が震えているのが、ボクの位置からは見えた。


「そ、そうよ!私たちもいるから大丈夫!」


 ハルカもテーブルに両手をついて身を乗り出して言う。


「とても心強いです。若輩者なので、おふたりに勉強させていただきます」


 ルーがニッコリ笑った。


 しかし、ハルカのヤツは、いつも弁当は作ってくれてたけど、手の込んだ料理をしているところは見たことがない気がする。気のせいかな?


「やはり君たちは面白い」


 お誕生日席(?)に座っていたファナが、ボクらを見回しながら「ククッ」と笑っていた。

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