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 ボクたちはルーに案内され「ファナ」さまの屋敷に到着した。だいたい敷地の中心に位置し、周りの建物よりは少々豪華な造りになっていた。


「ルー、無事だったのね」

「心配したよ!」


 玄関に入ると、4人の少年少女(男2女2)に突然囲まれた。だいたいルーと同じ年頃の子どもたちだ。


「心配かけて、ごめんね。ファナさまは?」


 ルーは皆んなに揉みくちゃにされながら、ファナの居場所を尋ねた。


「いるよ、いつもの書斎」


「分かった。私は報告があるから、また後でね」


 ルーは皆んなに手を振ると、ボクらのところに戻ってきた。


「仲が良いんだな」


 ボクは微笑ましい光景に嬉しくなった。


「うん!血は繋がってないけど、皆んな大切な家族なんだ」


 ルーが余りにあっけらかんと言うから、ボクは言葉の意味が理解出来なかった。


「え…どういう意味?」


「私たち皆んな、路頭に迷って絶望していたところをファナさまに救われたの」


「それって…」


 ハルカが口元を押さえた。サトコも黙って口をつぐんでいる。


「ごめん、ルー…」


 ボクは深く頭を下げた。


「やめてよ、ケータお兄ちゃん!もう全然平気だから。ファナさまにここに連れてきてもらって、家族も出来て、今はホントに幸せなんだから」


 ルーは満面の笑顔を見せた。


「あ、でも、ハルカさんだけはこれからも気を遣ってくれていいですよ」


 ルーは口元に手を当てて「ニシシ」と笑いながら、ハルカを見た。


「……コイツ、可愛くない」


 ハルカが「フン」とソッポを向いた。


 ~~~


 大きな重量感のある扉をルーがノックすると、中から「入れ」と声が聞こえた。


「失礼します」


 ルーが全身を使って扉を中に押し開く。


「ルー、ルーか!心配したんだぞ」


 部屋の奥の机で何やら事務作業をしていた30歳前後の女性が、ルーの姿を見て立ち上がった。


 赤い髪をポニーテールでまとめ上げ、毛先は首筋にまで届いている。服装は黒いレディーススーツのような格好をしていた。そして、同じく赤い瞳の切れ長の目には安堵の色が宿っていた。


「ただいま戻りました、ファナさま」


 ルーはペコリとお辞儀をした。


 どうやらルーは、ファナから任務を受けていたようだ。


 王都から火竜の討伐隊が出立したと情報が入ったので、その動向についての調査である。戦いの結果如何によっては、こちらの領地にも被害が及ぶ可能性があるからだ。


 しかし、ルーたちの部隊が戦場に到着したときには、火竜の姿は既に無かった。火竜のブレスによって焼けただれた大地や、クレーターのように大きく陥没した地面から激闘の痕跡だけが確認出来た、とのことだった。


 しかし、その帰路の途中で「オーガ」率いる「オーク」の群れに遭遇してしまった。ルーたちは充分な健闘をみせたが「オーガ」には及ばず、そこでボクたちと出会ったということらしい。


 帰還予定を過ぎても戻ってこないルーたちを、領地の仲間たちは心配しながら待っていたのだ。


 ボクたち3人は顔を見合わせて苦笑いした。話すとなんだか面倒なことになる予感がした。


「ケータ殿、だったな」


 ファナがボクのそばに歩いてきた。


「は、はい」


「家の者を救っていただき感謝する。本当にありがとう」


 言いながらファナは、ボクに握手を求めてきた。ボクは求めに応じながら、慣れない状況に赤面して俯いた。


「しかし『オーガ』をたったこれだけの人数で倒してしまうとか、驚きを通り越して感服するよ。恐れ入った」


 ボクはファナの真剣な瞳に愛想笑いを返した。


 勇者だとバレないように、あまり目立ちたくはなかったのだが、結局やらかしてしまった。


 やっぱり「オーガ」は、雑魚なんかじゃなかったんだ!

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