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 ルーは、ボクらが人里だと思ってた場所へボクたちを案内した。敷地はグルリと塀で囲まれ、門には門番が立っていた。「街」と言うより、大規模な「武家屋敷」を連想させる。


「ここは?」


 ボクはルーに尋ねた。


「ここは7家のひとつ、リース家の領地だよ」


「7家…?」


「あれ?ケータお兄ちゃん、知らないの?」


「ご、ごめん!ちょっと疎くて…」


 ボクは「ナハハ」と誤魔化した。それを見て「ピン」ときたように、ルーは手を叩いた。


「あ、分かった!お兄ちゃんたち、辺境の島出身でしょ?皆んな、よく似た珍しい服着てるし!」


 ボクたちのオークル系のブレザー制服を、どうやら民族衣装と勘違いしてくれたようだ。ここは調子を合わせておくことにする。


「そ、そうなんだ!まだ出てきたばかりで、分からないことが多くて…」


「しょーがないなー。私が教えてあげる!」


 ルーは、なんだか嬉しそうだ。


 話によると、


 ファーラスを統一した「キーリン家」と、その志しに賛同した6家を総称して「7家」というみたいだ。ハルカの言っていた「アリス」は「キーリン家」の人間てことになる。


 6家の領地は、比較的ボーダー連峰の近くに位置しており、魔族や魔物から国を守る役目に就いているらしい。


 そして、ルーの言う「ファナさま」は、リース家の領主のことだった。


 そんな偉い人に、これから会うのか。さすがに緊張する。


「ルー、無事だったか!」


 こちらに気付いた門番が、ルーに声をかけてきた。


「他の者たちは?」


 ルーは顔を伏せながら、首を横に振った。


「そうか…」


「ごめんなさい」


「これが我らの仕事だ。ルーが気に病む必要はない。お前が無事で良かった」


 門番は優しく微笑みながら、ルーの頭を撫でた。


「こちらの方々は?」


「私を助けてくれた人たちです」


「そうですか!ルーがお世話になりました。どうぞお入りください」


 そう言って門番はボクたちを中に通してくれた。残してきた兵士の遺体については、あとで人を出してくれるらしい。


 中は活気に満ちていた。この世界に来て初めての「人の活きる場所」である。やはり感動してしまう。


「おおお!人がたくさんいる」


「分かる!やっとこの世界が、人の生きる世界だと思えた」


 ハルカがボクの気持ちに賛同した。


「ふたりとも、はしゃぎすぎよ」


 サトコはクスクス笑ってるが、当のサトコからも「ソワソワ」した気持ちが伝わってくる。時間が出来たら、街を散策してみよう。


「ケータお兄ちゃん、コッチコッチ」


 ルーがボクの手を引いて歩きだした。ハルカがすかさず、その手を剥がす。


「何するのよ!迷ったらどうするんですか?」


「大丈夫よ、ルー。迷ったりしないから!」


 ハルカが笑顔で返した。ルーは「ガルル」と喉でも鳴りそうな目でハルカを睨んでいる。


 ボクはこっそりサトコに話しかけた。


「なあ、あのふたり、なんだか仲悪くない?気のせいか?」


 ボクの言葉を聞いて、サトコは可愛らしくボクに微笑んだ。


 でも、この笑顔、どこかで見た気がする…


 そうだ、思い出した!サトコに名前で呼んでほしいと頼まれた時だ。


「私自身のためにも言うけど、ケータくんにはもう少し、乙女心を学んでほしい」


「は、はい!」


 ボクは直立不動で返事をした。


 言葉の意味は、正直ちょっと分からなかった。

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