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 あの大きさではかなり目立つので、カリューのサイズは再び10分の1に縮小している。もし誰かに見られても、鳥…は無理でも、竜とは思われないと思う。


 私たち3人はカリューの背に乗り、空の旅を満喫していた。王都の場所はよく知らないが、馬車の目指していた方向とは逆の方向に向かう。


 なんとなく気持ちも落ち着いたところで、私はケータに質問した。


「昨日の夜は、何もなかったでしょうね?」


「え?」


 ケータがビクリとした。


「な、何もない。()()何もなかった!」


 あからさまに慌てた様子でケータが答えた。


「夜は…?どういう意味よ?」


 私はケータをジロリと睨んだ。


「こ、言葉の綾!本当に何もない」


「せっかく黙っててあげたのに、ケータくん、自分から白状するなんて…」


 誤魔化すケータを尻目に、サトコが照れたように頬を両手で押さえた。


「明け方に川で水浴びしてたら、ケータくんが入って来ちゃったの」


 はあーーー!?


「ちょ…あ、あれは、起きたらサトコ居なくて、まさか水浴びしてるなんて思わなくて…」


 ケータの目が泳いだ。私は思わずケータの胸ぐらを掴んだ。


「見たの?」


「み…見てない」


「本当に?」


 私が追及すると、思い出したかのようにケータの顔が赤くなった。


「ち…ちょっとしか、見てない」


「それは、『見た』て言うのよーー!」


「わー、やっぱり見られてたんだ!もうお嫁に行けないー」


 サトコがワザとらしく両手で顔を覆った。


「あ、ご、ごめん!でも本当にほとんど見えなかったから」


 ケータがオロオロしながらサトコに謝った。


「責任、取ってくれる?」


 指の間からチラリと覗きながら、サトコが呟いた。


「え…?責…」


「ちょっと待ったーー!」


 私はサトコの両肩に両手を置いた。


「だったら私なんて、何度も一緒にお風呂に入ってるんだけど!」


「な、何年前の話だよ!」


 ケータが慌てて反論してるが、今は置いとく。


「私にも権利があるよね?」


「えー、ご兄妹の話と一緒にされてもなー」


 不服そうな顔をするサトコを、私はギロリと威嚇した。するとサトコは、自分の肩に乗っていた私の両手を下ろしながら私を見た。


「冗談、冗談。でもね…」


 言いながらサトコは、ケータの方へグイッと身を乗りだした。


「本当に驚いたんだから、お返し!」


 サトコはケータの額に右手を伸ばすと「ペチン」とデコピンした。ケータは一瞬呆気に取られていたが、真っ赤に染まったサトコの表情に気付き、ケータの顔も真っ赤に染まる。


「その…、悪かったな」


「そうだよ。来るときは前もって言ってくれないと…ちょっと困る」


「え……?」


「わーー、待て待て!」


 私は叫んで、場を乱した。


 あれ、ちょっと待って?コレ、どう考えても私の方があからさまに劣勢だよね、どうなってるの?


 いっそ兄妹じゃないことを私も知ってると宣言してしまうか。だけど、それでもケータに選んでもらえなかったら、私はケータとの繋がりを全て失ってしまう。もしそうなったら、私はどうなるの?


 一体私は、どうしたらいいんだーー!


 ~~~


「サトコ、人里が見えてきた。どうする?」


 カリューがサトコに声をかけてきた。それから同じ場所をクルクルと旋回し始める。私たちに考える時間をくれるようだ。


「とりあえず、ボクたちの一番の問題はお金がないてことだ」


 ケータが心底困った顔をした。


「異世界モノでよくあるのが、『冒険者ギルド』で生計をたてるというモノだけど…」


「このファーラスにも、その『ギルド』てのがあるのかな?」


 サトコがもっともな疑問を口にする。


「分からない。それにあったとしても、あの規模の人里には無いかもしれない」


「じゃあ、通過する?」


 私はケータの方を向いた。


「うーん」


 ケータは目を閉じて思案している。


「誰かが襲われているぞ」


 カリューがこちらに頭を向けた。私たちの結論がでるより前に、問題の方が先に舞い込んできちゃったみたい。

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