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 明日には王都に向けて移動するとかで、私と春日翔はそれぞれに個室が与えられ、ゆっくり休んでおくように言われていた。


 私は何もする気が起こらず、ベッドに寝そべっていた。外で物音がするたびにバルコニーに飛び出し恵太の姿を探すが、結局見つからずベッドに戻ってふて寝するの繰り返しだった。


 春日翔はこの間全く接触してこなかった。アイツは賢い。今の私に近付くのは逆効果だと理解しているのだ。


 そして、恵太が帰って来ないまま、とうとう夜になった。


 アリスの使いで部屋に呼びに来たメイドさんに連れられて、私たちは食堂に集まった。


「大したモノは用意出来ませんが、どうぞ召し上がってください」


 アリスが故意に明るく言った。私が、ずっと沈んでいるのを察してくれてるのだ。ホントいい子。


「春香ちゃんも食べなよ。美味いよ、コレ」


 春日翔は既に食べ始めていた。普段の王宮の食事事情は知らないが、充分美味しそうだ。しかしコイツ、本当に賢いなー。今の私は言葉で何を言われても、気持ちが受け付けない。だけど、隣でこうも美味しそうに食べられたら、お腹の虫も騒ぎだす。


 あーもー、アンタの思惑に乗ってやるわよ!


「いただきます」


 私は手を合わせて、頭を少し下げた。


「どうぞ、召し上がれ」


 アリスが嬉しそうに笑った。


 ~~~


「姫さま!」


 私たちが夕食を殆ど食べ終わったころ、三賢者の1人が焦ったように入室してきた。そしてアリスに何やら報告している。


 報告を受けたアリスは暗い顔で俯いた。


 私は察した、恵太に関することだと。


「教えてもらえますよね?」


 春日翔がアリスに詰め寄った。


「部隊が火竜と遭遇。恐らく全滅したとのことです」


「は?」


 私は急に頭が悪くなった。アリスが言った言葉が理解出来ない。


「だったら報告に来た人は、どうやって逃げ延びたのですか?」


「正規兵は斥候を放ち、火竜の接近を事前に掴んでいました。なので…」


「なるほど、自分たちだけ先に逃げたんですか」


 春日翔が溜め息をついた。


 ウソよ、ウソよ、ウソよ!


 私は立ち上がった。


「ハルカ!」


 アリスが呼び止めるが、私はもう駆けだしていた。


 ~~~


 私は与えられた自室に戻ると、ベッドの布団に頭から突っ込んだ。


 こんなの信じない。そんなハズない。絶対信じない!


「春香…春香…」


 恵太の声が聞こえる。あー、幻聴かー。私、とうとうオカシクなっちゃった。


「春香!」


 違う、幻聴じゃない!私は飛び起きた。声のする方、バルコニーに飛び出す。


「恵太、どこ?」


 私はキョロキョロと恵太を探す。


「コッチ、ここだよ!」


 声はすぐ近くから聞こえる。私はバルコニーの手すりに目を落とした。


「………」


 そこには、15センチメートル程の恵太の姿があった。


「あー、やっぱ幻かー」


 私はやっぱりオカシクなってるようだ。このままその内、発狂したりするのだろうか。


「違う、違う、本物!コレがボクのスキルなんだ」


「え、スキル?」


 私はもう一度、恵太らしきモノに顔を寄せた。


「心配かけてゴメンな」


 恵太が後頭部を掻きながら、申し訳なさそうに微笑んだ。


「良かったー。恵太、生きてたー」


 私はヘナヘナとその場に座り込んだ。

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