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 私たちは途中でルーを拾って、馬2頭でキレーナレイクを目指す。春日翔の後ろに私、前にルー。アリスの後ろにサトコが乗っている。


 馬上はスゴく揺れるので途中で会話とかは全然無理で、とにかく最速で目的地を目指した。


 湖を囲む森に到着すると、その外周で馬を降りて徒歩で森の中を進むことにする。そのとき自身のスマホを確認していた春日翔が、私たちの方を見て「ハハッ」と笑った。


「春香ちゃんたち、合同演習に参加してたんだな」


「と、突然…何よ?」


 思わずギクリとした。何で今頃バレるのよ?


 春日翔の横に並んで立っていたアリスも、彼のスマホを覗きこんで「フフッ」と笑っている。その後、春日翔が何やらスマホを操作すると「ピコン」と音が鳴った。


「ちょっと、今何したの?」


「何でもない」


 春日翔は薄ら笑いを浮かべてはぐらかした。なんか感じ悪い、やっぱなヤローだ。


「だったら私も、やったげないから!」


 私はスマホをフリフリさせながら、「ベー」と舌を出した。ウォレット共有のインフォメーションが出ているが、こんなヤツ無視無視!


「何和んでるのよ、こんなときに!」

「そーですよ!ケータお兄ちゃんが心配じゃないんですか!」


 サトコとルーに睨まれた。クソー、あのヤローのせいで怒られたじゃないか。


「お、おい、その姿…」

「あ、あなたは!?」


 春日翔がサトコの姿を見てあからさまに驚いた声を出した。アリスも驚いて声が上擦る。


「ん?」


 意味も分からずサトコはキョトンとした。その姿は戦闘準備のために「ウィッチハート」を被り、私から受け取った黄土色の外套を羽織っていた。


「なんてこった…オマエらかよ!」


 春日翔が片手で目を押さえながら「参った」と声をたてて笑った。


「あの時…サトコが私を助けてくれたのですね」


 アリスが悲しそうな表情に一変した。それからゆっくりと頭を伏せる。


「私はアナタたちに、あんな酷い仕打ちをしたというのに…」


「そういえば、そうですね」


 サトコは今気付いたかのような顔をした。


「そんなこと、もう忘れてました。あれから本当に楽しい毎日を過ごしてましたから!」


 言いながらサトコは「アハッ」と明るい笑顔を見せた。それからすぐに表情を引き締めると、スマホを操作して「カリュー」と「ギン」を呼び出す。


「だけど今は急いでもらっていいですか?ソチラの反省もコチラの事情も、後で時間作りますから…」


 ~~~


「やっと来たー」


 私たちが湖のほとりに着くと、ベルが欠伸をしながら伸びをした。胡座をかいてるケータの膝の上にちょうどいい感じに収まってる。


「あんまり遅いから、もう放っといて行っちゃおうかと思ったよ」


 ベルが「クスクス」と笑った。


「ちょっと、ケータから離れなさいよ!」


 なんてことしてるのよ、メチャクチャ羨ましいじゃない!


「やだよー、気に入ったんだもん」


 言いながらベルは、ケータの頬を手のひらで優しく撫でる。サトコじゃないけど、ポッと出のくせに気安く触るな!


「そんな平凡な男のどこが気に入ったのよ!」

「そうよ!こう言っちゃなんだけど、ケータくんは見た目で一目惚れされるタイプじゃないわよ」

「興味あるクセに奥手なケータお兄ちゃんの良さが、アナタなんかに分かる訳がありません!」


 ルー、アンタ…相変わらず年下とは思えないコト言うね…


 私たち3人に凄い剣幕で捲し立てられるが、ベルはどこ吹く風で口笛吹いてる。


「聞いてるの?」


 イライラが抑えきれず、思わず怒鳴りつけた。


「このお兄ちゃんの価値は、そんなとこに無いよ」


 ベルが「アハハ」と見下すように笑った。


「どういう意味よ?」


「このお兄ちゃんのいる陣営が、戦争に勝つって事だよ」

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