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プロローグ





「おや・・・??」



広い書斎に酷く穏やかな声が響いた。


「どうかなさいましたか」


今まさに扉を開けようとしていた少女が振り返った。

桜色の長い髪にモスグリーンの瞳。恐ろしく整った顔をした少女が、自らの主人に問いかけた。しかし彼は少女の問に答えることなく曇天の空の映る窓を見詰めるばかり。

数瞬の間の後、彼は何処となく寂しそうに微笑んだ。



「また野良猫が此方にくるようですね」

「・・・出逢ってしまったのですか??」


彼女は彼の渡した書類を一度机に置いた。薄い桃色の瞳を彼と同じように寂しそうに細めた。


「また、ですね。しばらく来ないと思ったらコレです・・・」

「そう言わないで。彼らだって好きで此方へ来たわけではないのだから」


そう言って立ち上がり、軽く伸びをしながら窓に寄ると空を見上げた。青いはずのそれは、今は薄暗い灰色に覆われている。



「ああ今日の空は悲しそうですね」

「はあ・・・」

「ほら、そろそろ涙を落とすんじゃないかな」


彼女は呆れたように彼を一瞥した。自分の主人は突然可笑しなことを口走るのだ。思慮深いように見えて実は何も考えてはいないんじゃないだろうか、彼女は時々そう思う。

尚空を見上げる主人に“そうですね”と適当に返事をして、今度こそ書類を持って部屋を出て行った。






「野良猫達が唄いだす。今宵はどのような唄を届けてくれるのでしょうね・・・」


翡翠の様な瞳に悲しみの色を浮かべて彼は呟いた。



曇天の空からポツポツと雫が落ちてきていた。















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