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二人の忌み子  作者: 勇崎シュー
第一章「開放」
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05 対敵

「ゴホッ! ごほっ……」


「あっ⁉︎ 誰かいんのか⁉︎」


 エラっ……!

 いや、仕方ない。咳き込んでしまうくらいには、まだ病に侵されているのだろう。


 以前の出来事から推測するに、見つかったらただでは済まされない。

 そう考えた俺は慌てて飛び出し、懐に入れていたナイフを目の前の男に投げつけた。

 そしてそのナイフは適当に投げたにも関わらず、見事左太腿に命中する。


「なっ……⁉︎ ぃでぇっ! あぁぐっ⁉︎」


 死角からの少年の登場に驚いた刹那激痛に見舞われた男は、その場で身動ぎ、喘いだ。


「このガキっ!」


 仲間と思われる二人の男も俺に襲いかかる。


 その瞬間俺は懐に手を入れつつ、左の図体のでかい男に向かって駆けた。

 男は正面から迎え撃つつもりなのか、ナイフを持った右手を振り上げる。

 俺はそのモーションが見えた途端に動きを早めナイフを取り出す。

 続けて男の股下を滑り込み、身体が抜けた瞬間振り向いてアキレス腱に刃を入れた。


「ぃであっ⁉︎」


 痛い、とも言い切れなかった男は置いておき、次は目の前の未だ膝を抱え崩れる男に掴みかかる。

 俺は男の顔面を鷲掴みし、そのまま後頭部を床に叩きつけた。

 そこまでしなくても生命力は奪えるのだが、前回の鬱憤ばらしも兼ねての事なので罪悪感は無い。


「ぐあっ、てめっ……あの時のクソガキかっ……⁉︎」


 男に問われるも、俺は何も答えなかった。

 そして数秒の沈黙の後、男は静かになる。

 この力は使ってはいけないとエラに釘を刺されていたが、緊急事態なので黙殺した。

 俺はぐたりと倒れた男から雑に手を離し、立ち上がる。


「ちっ、この前といい今回といい、てめぇ魔法が使えんのか⁉︎」


 魔法……。

 それは、限られた人間のみ使える、自然を操る奇跡の力。



 俺の力が、そんな神秘的なものだったらどれほど幸せだったか……



 下らない感情を振り払うように、俺は別の男に体を向けた。


「ちょぉ~っと待て、クソガキ」


 今までで一番高いその声は、一番奥の、エラの隠れている場所から発せられた。

 奥から出てきたのは、無傷のひょろい男と、襟を掴まれ、ナイフを向けられているエラだった。


「わかっていると思うが、動くなよぉ~」


 そう言うと同時に、男はエラのほおをナイフで突く。


「でかした! おい、ガキ。お前はじっとしとけよ?」


 アキレス腱を切られた方の男がにじり寄ってくる。

 まずい……俺はこの現状を打開すべく頭をフル回転させた。


 後ろの男は暫く目覚めないだろう。

 問題は目の前の二人だ。

 一人は負傷。もう一人は無傷なうえ男の後ろでエラを人質にしている。

 男の後ろ……?

 そうか、エラを人質にしている奴は俺の左半身しか見えていない。なら……


「ん?」


 俺が右手をゆっくりと後ろに持っていく動作に怪訝な表情をする男だが、痛みでそれどころではないのか特に気にしないでいた。

 しめた。と思った俺は、後ろに倒れている男からさりげなく奪ったナイフを角度をつけて投げる。


 部屋が暗いのと男が痛みに気を囚われているのが幸いし、気づかれる事なくナイフは弧を描きながらヒョロ男に吸い込まれるようにとび……。


「んぁ? いっでぇぇえ⁉︎」


 ヒョロ男が叫んだ瞬間、俺は前方に全力疾走し、でか男を胸元に隠していた最後のナイフで斬り付けつつその先の男に投げつける。


 ナイフは男の右腕に刺さった。が、予想外なことにヒョロ男は手に持つナイフを離さない。


「くそっ、ならっ……!」


 俺は独り言を漏らしつつさらに前方に駆け、ヒョロ男の右手を掴み、男の手ごとナイフを肩に突き当てた。


「ぐぎゃっ⁉︎」


 痛みに喘ぐ男に、今度は顔を壁に思い切り叩きつけた。

 衝撃と吸収で脳の処理が追いつかなくなった男は、その場で崩れ落ちる。


「あ、あぁああ! わ、わるかった! 殺さないでくれぇええええ!」


 図体のでかい男は、足を引きずりながら地下から出て行った。


「はぁ……」


 どっと疲れが出た所で、近くのエラがふらっ、と身体を揺らす。

 俺は慌ててエラをささえ、ゆっくりと降ろした。

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