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二人の忌み子  作者: 勇崎シュー
プロローグ
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00 プロローグ

「僕の勝ちだ。魔王」


 まだ、齢十五の少年が、圧のある声で宣する。


「ぐっ、くふっ、ふははははっ……。そうだな、我はもう終わりだ。“我は”な。だが、無駄だ。我が消えようと、知恵を持つものがいる限り、その悪意が絶えることは無い。第二、第三の我ぐふっ!?」


 少年は、手にあるその剣で魔王の脳を貫いた。


「ごちゃごちゃごちゃごちゃうるさいよ。僕の役目は終わった。これからはぬるく暮らすよ。またお前みたいのが現れたって関係ないね」


 ぐりぐりと剣で脳漿を掻き混ぜながら、少年は息を吐いた。


「勇者様」


 そう呼ばれた少年が振り向くと、そこには一人の女性が駆けて来ていた。

 女性は少年より頭ひとつ分背が高く、全身を包む金属鎧の間から見える肌の色は褐色。腰に帯びている、常に少年を守ってきていた剣は古びてはいるが確かな存在感を放っている。


「勇者様、やりましたね。これで世界に安寧がもたらされます。私自身としても、勇者様のお付きをさせて頂き光栄でした」


 女性は膝を付き頭を下げると、勇者は無表情に頷いた。


「ところで、残党は片付いたの?」


 女性は、その言葉に霹靂した。

 魔王討伐という、世界最大の功績を成した勇者の無感動な言動に困惑したのだ。


「……城内にいる者は仲間達と共に殆ど屠りました。しかし、混乱に乗じて逃げ出した魔族も少なくありません」


 少年はそうか、と天井を見上げる。


「じゃ、もう帰ろう。皆を集めといて」


 女性は戸惑いながらもはっ、と短く返答し、任を遂行するため階段へ向かった。

 少年はそれを見届けた後、一人ぽつりと呟く。


「安寧……ね」


 少年は察していた。魔王を滅しただけでは、この世界に真の平和は訪れない、と。

 根拠は少年の居た国だ。その国では当然のように戦争が起こり、終戦して尚、諍いは起こり新たな問題も湯水のように湧いていた。


 知のある者がいる限り、その悪意は消えない。


 魔王に言われるまでもなく、理解しているのだ。


「勇者様、皆を集めました」

「わかった。すぐ行く」


 こうして、長きに亘った人族と魔族の戦争は終わりを告げた。


 しかし、新たな悪意の種は既に撒かれていたのだった。




 そして物語は、数年後から始まる。

 戦乱の果て、この世界は何処へ行き着くのか。

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