混戦
王の魂を喰らい、パワーアップを遂げたヴィーセに対し赤の騎士と青の騎士は対峙する。
「1人増えたからって、まさかこの俺に勝てるとは思ってねぇよな?」
「それは試してみればわかることだろう。パルシオン、早期決着を狙おう」
「ああ、言われなくてもそのつもりだ。アイツには早めにこの世から退場願おうじゃないか」
「ハハハ! 声だけはでかい負け犬どもめ、これでも喰らって黙りな! ロストソウル・クラスター!」
ヴィーセは両手に魔力を込め無数の魔弾を放ってきた。それは先ほどまでのとは量も大きさも全然違っていた。
「俺が先陣を行く! フェリウスは援護しろ!」
「了解だ! 受け止めきれない分は私がカバーする!」
パルシオンさんはヴィーセに向かって走り出した。パルシオンの剣は大きく、一振りで飛んでくる魔弾をいくつも消滅させていく。そのパルシオンさんの周りをフェリウスさんが目にもとまらぬ速さで周り、一つ一つ細かに突いて消滅させていく。
二人の連携はとても鮮やかだった。無数の魔弾は一つも二人に当たることはなく、全て消滅していく。
「チィ、イマイチ出力が上がりきらねぇ!」
ヴィーセが魔力を込めなおそうと、少し攻撃の手を緩めたのが分かった。その隙をフェリウスさんは見逃さなかった。
瞬間、フェリウスさんがパルシオンさんか離れ、一気にヴィーセに詰め寄り槍を横薙ぎした。その動きをかわし切れなかったヴィーセは体制を崩した。
「今だパルシオン!」
「分かった! 動きは俺に合わせろ!」
掛け声と共に、二人はタイミングを合わせて技を放った。
「焼き尽せ! レッド・ラージュ!」
「突き穿て! ブルー・クローエンス!」
赤色の剣と青色の槍。二人の技は見事にクロスしヴィーセに直撃する。ヴィーセの両腕は胸ごとえぐり取られ、後ろに大きく吹っ飛んだ。
「グゥ……! 今の俺がこんなに痛手を負うとはな……だが、全て無意味だ!」
ヴィーセがそう叫ぶと、ヴィーセの抉り取られた傷口がみるみるうちに修復されていった。
「ッ、させるか!」
フェリウスさんが再び駆け出し追撃を図る。しかしそれを見たヴィーセは体制を変え、空中でフェリウスさんに蹴りをいれた。
「くっ!」
「おっと! 甘ぇ甘ぇ、焦る気持ちは分かるが行動がおざなりになりすぎだぜ!」
「ならば俺が!」
その間にパルシオンさんもヴィーセと距離を詰め剣を振るう。しかしその時には既にヴィーセの腕は再生しきり、手で剣を掴まれてしまった。
「テメェは遅すぎんだよ!」
そのまま投げ飛ばされ、体勢を立て直し後ろに着地する。フェリウスさんも一度距離を開け、パルシオンさんの横に並び立った。
「俺の再生能力は見事なもんだろ? だが、妙だな。今の俺は格段に強くなったはずなのにイマイチ動きが鈍い。……まさか」
ヴィーセはそういうと、自らの胸に掌を押しあてた。その指の隙間から、薄い黄色い光が漏れ出ていた。
「ハハハ! なるほどな。あのクソ王が俺の中で反抗してるってことか!」
「……なるほどな。お前の再生能力は確かにうざったい。だが、その能力にも限界はあるだろう? 父上の魂が呑み込まれる前に、貴様の再生能力を尽かせば俺らの勝ちというわけだ」
パルシオンさんは怯まず剣を構える。しかし、ヴィーセは余裕そうに高笑いを続けた。
「おいおい、テメェは怒りっぽいだけじゃなく忘れっぽいのか? 王子サマよぉ。そこの青色が言ってた言葉をもう忘れちまったっていうのか?」
「……なに?」
パルシオンさんがフェリウスさんの方を向く。フェリウスさんは下を向き、唇を噛み締めていた。
「ハハハ! 教えてやれよ青色! 今この国がどうなっているのかを!」
フェリウスさんは暫く俯いたままでいたが、やがて顔を上げて話し始めた。
「今……この国は大量の魔物の襲撃に合っている。しかも、統率された魔物たちだ」
「ッ……それは、どういうことだ!」
それから、フェリウスさんはここに来るまでの経緯を語り始めた。
王城を出て、真っすぐに歩く。
「時間外なのに付き合わせて済まない、リージェン」
「気にしないで下さい! 僕がフェリウスさんの力になれば光栄です!」
リージェンは勤勉な二番隊の兵士だった。槍の扱いはまだ甘いところはあったが、それをカバーする頭の良さと回転の速さが取り柄だった。
やがては、二番隊の副隊長を任せてもいいかもしれない。そんなことも思っていた。
「……着きましたね。何度見ても酷い有様です。パルシオン隊長は本当に正気なのだろうか……」
私たちはフラルさんの家に来ていた。王城でのディテイスの捜索はフラルさんがやってくれている。その動きに報いるためにも、早くあの文字を解読し私も手伝わねばならない。
家だったものに近寄り、木片をどかす。
「確かこの辺だったはずだ」
「わっ、フェリウスさんが必要なんてないですよ! 僕がどかします!」
「いや、わざわざ私のワガママ付き合って貰っているんだ。これくらいはさせてくれ」
「ワガママだなんてそんな! フェリウスさんはいつでも国の事を考えてくれている素晴らしい人です! そんな人の頼みとなれば僕は何でもやりますよ」
リージェンは本当に純粋ないい兵士だ。しかし、私を盲信しすぎているところがある。いつかは彼が私のような存在になれるといいのだが……
「……あった、これだ。どうだ、読めるか?」
「はい!ええと、どれどれ……ッこれ!?」
その血文字を読み始めてすぐに、リージェンが大声を上げた。
「どうした、リージェン。なんて書いてあるんだ?」
「……今から、読み上げます。アシタ コノクニ マモノノムレ シュウライ……そう、書かれています」
「なんだと……?」
この血文字が書かれたのは昨日だ。ならば、この血文字が指す明日という言葉の意味は今日ということになる。
「これは……どう、しましょう。フェリウスさん」
リージェンが困ったようにこちらを見つめてきた。
「……とりあえず、リージェンは先に王城に戻って二番隊の兵士の編成を頼む。何もなければそれでいいが、もしこの予言の通りになったら大変なことになるかもしれない」
「承知しました! 編成した部隊はそのまま城壁に向かわせます。フェリウスさんは先に城壁の方へ!」
「! ああ、そうしてくれると助かる」
そう言うと、リージェンは直ぐに走って王城に向かっていった。
(アムレーラ……彼女は一体何を見たのだろう)
そう考え、顔を上げた時。
「フェリウス。今は二番隊の任務の時間外だったと思うが……ここで何をしているのだ?」
声の方を見ると、そこには兵士を連れたパルシオンの姿があった。
「パルシオン。丁度良かった。あなたには聞きたいことがある」
「なんだ? 俺は今からそのゴミの山を片すので忙しい。済ませろ」
パルシオンのその言い回しが引っ掛かり、思わず睨む。ゴミの山? これはフラルさんの大事な家だった。ゴミの山にしたのはお前じゃないか!
「ッ……昨日の夜からディテイスの姿が見当たらない。どこに行ったのか知らないか?」
「俺があんな奴の居場所など知るか。あの日陰者はそういうやつだ」
「……あなたは、どうして同じ騎士の仲間に向かってそんな呼び方ができるのだ!」
「黙れ! あんな奴が俺と同じ騎士だと? 笑わせるな! アイツなど死んでも同然の人殺しだ!」
「それはどういう意味だ! 答えろ!」
「アイツが……アイツはこの国の裏切り者だ! 悪魔の存在を隠し、エフェラや兵士の命を投げ捨てた張本人だ!」
その言葉の意味を私は一瞬理解できなかった。その会話を聞いた周りの兵士や市民たちのどよめく声が聞こえる。
「それは……どういうことだ?」
「そのままの意味だ! この国には……」
その時。一瞬この国に異様な気配が漂った。そしてそれをきっかけに、城壁の警鐘が鳴り響いた。
「ッ……これは!?」
「……悪魔が、現れたのか? ならば……この手で焼き尽くしてやる!」
「待て! パルシオン! この警鐘、城壁が危ない! お前は一番隊の指揮を……ッ!」
私の制止を聞かず、パルシオンはそのまま王城に走り出してしまった。
この状況は非常にまずい。私の直感がそう告げていた。
「おい、そこの兵士! 王城はパルシオンに任せておけ! 急遽一番隊の指揮も私が執る! 急いで城壁へ迎え!」
「は……ハッ!」
その場に立ち尽くしていた兵士にそう命令し、自らも急いで城壁へと向かった。
警鐘の音に、驚き不安そうな表情を浮かべる市民たちの間をすり抜けていく。
それから私が城壁へとついたのは僅か五分程度の事。しかし、既にそこは惨い戦場と化していた。
「こ……これは」
「あ、アドルブルー隊長! アドルレッド隊長はどちらに……!?」
「パルシオンは他の件に当たっている! ここの指揮は私が執る! 状況を報告しろ!」
「と、突然魔物の群れが西方向から押し寄せてきています! 数が多く、既存の兵士では対処しきれません!また、みたことのない鳥型の魔物も多数。そして……その、信じられないことにこの魔物は統率されているように感じました」
「くっ、あの鳥の獣までいるのか……。 砲撃と弓の兵士を城壁の上に並べるだけ配置しろ! その部隊は鳥の獣を狙え! あまりの兵士は全員下で魔物たちの相手をする。また、捌ききれないと判断したら城壁上の兵士たちに援護をもらえ!」
「ハッ!」
兵士達に命令すると、私も槍を構えて城壁の外へ飛び出した。
「構えろ! 怯むな!」
「か、数が多すぎる! ひええ!」
「う、うわあ! どうしてこんなことに! 誰か助け……」
「伏せろ! ファスト・トラスト!」
魔物に今にも食われそうになっている兵士を間一髪のところで助ける。
「あ、有り難うございます。アドルブルー隊長!」
「怪我はないか!? 戦えないようなら一度引け。また、怪我人がいたら急いで城壁の中へ運べ! 暫くは私が持ちこたえるからその隙に体勢を立て直すぞ!」
「しょ、承知しました!」
兵士にそう告げると、こちらに向かって飛びついてきた魔物をそのまま一突きする。そのまま体を回し、周囲の魔物を巻き込み薙ぎ払う。そして間髪入れずに
魔物へと切りかかる。
「つ、強い! みんな! アドルブルー隊長がきてくれたぞ!」
「これで百人力だ! 俺らはまだまだ戦える!」
「行くぞ! アドルブルー隊長の後に続け!」
「「「うおおおおおおおおお!」」」
私の戦いを見て、半ば絶望していた兵士達に気迫が戻った。これなら暫くは持ちこたえることができるかもしれない。
戦いながら空を睨む。あのフクロウのような魔物の影がいくつも見えた。
(あの怪鳥を仕留めない限り、魔物たちは半永久的にやってくる……しかし、私一人では……)
自分の至らなさに槍を握る手に力が入った。そのまま腹いせのように魔物たちを槍で蹴散らしていく。
しかし、魔物は昨日よりも遥かに量が多かった。槍を振るった後、捌ききれずに残った魔物が飛びついてくるのが見えた。
(これは……対応しきれない!)
咄嗟に左腕で受け止める体制を取った時、目の前でその魔物が爆音と共にはじけ飛んだ。
「これは……」
城壁の上を見ると、既にいくつもの大砲が設置され兵士たちが次々に弾を込める様子が見えた。
「フェリウスさ……隊長! 部隊の編制、整いました!」
「リージェン! もう援軍に来るとは、驚いたよ」
「へへッ! 僕もフェリウス隊長の速さに負けてられませんから!」
リージェンの後ろからは二番隊の兵士たちがズラリと並んでいた。
「行くぞ二番隊! 今こそ我らが信念を示し、この国の平和を守るのだ!」
「「「オオーーー!!!」」」
二番隊が来てくれたおかげで余裕ができた。一度、城壁上まで戻り、状況の確認をする。地上戦は好転し、魔物を順調に討伐していたが、肝心の怪鳥の討伐は思わしくなかった。大砲で狙ってはいるのだが、当たる前にひらりと躱されてしまうのだ。
「畜生! 当たらねぇ!」
「まだだ! 大砲の弾を絶やすな! どんどんつぎ込め!」
「……このままでは徐々に押し込まれる可能性が高いな」
兵士の体力には限りがある。今はまだなんとか保てているが、兵士の疲れが出始めたらこちらが不利だろう。そう思っていた時、後ろから声をかけられた。
「フェリウス隊長。状況はどうですか」
「リージェン。正直なところを言うと、今はまだ保ててはいるが、徐々に不利になる可能性が高いだろうな……」
「そうですか……あの、フェリウスさん」
「なんだ?」
「もしかしてなんですけど、王城にこの状況の原因がいるんじゃないですか?」
突然、リージェンがそんなことを言い出した。
「なに……?」
「えっと、あくまでも僕の推測なんですけど……魔術師アムレーラが王様の死の予言をしたじゃないですか。そして、今回の魔物の襲撃も予言しました。……もしかしたら、王を殺す存在と今この状況を作った諸悪の根源は一緒なんじゃないかなって……」
「! なるほど……そうか、“ あくまでも ”か」
「えっと? それは……」
「気にしないでくれ。恐らく君の予想は正しい」
「! ほんとですか!? それなら直ぐに王城に向かってください! ここは僕たちに任せて下さい!」
「しかし……」
一瞬、躊躇った。今はまだなんとか戦線維持できている。だが、もしもここが突破されたらこの国は終わりだ。私が居れば部隊を編成しなおすくらいの時間は稼げるかもしれないが、この場を離れてしまってはそれはできない。
「行ってくださいよ。大丈夫です、僕たちを信じてください!」
私が迷っていると、リージェンは私の目を真っすぐに見てそう強く背中を押してくれた。
「……分かった。健闘を祈る!」
「はい! フェリウスさんも!」
そうして私は王城へと戻った。そこで負傷した様子のアビルを見つけ、地下室の存在を教えてもらうこととなる――。
フェリウスさんの話を聞き終わった時、言いようのない絶望が私の心を襲った。
「そんな。じゃあ今頃外では……」
「ヴィーセ! 貴様、この国自体には何もしないという契約だったはずだ!」
ディテイスさんがヴィーセに向かって叫んだ。
「契約ぅ? そんなの、テメーらが俺に切りかかってきた時点で破綻してんだろ。それに、俺は契約を破っちゃいねぇよ。だって俺はこの国にちょっとばかしプレゼントを贈っただけなんだからなぁ!」
それを聞いて、ディテイスさんは悔しそうにこぶしを握り締めていた。
「貴様! 何処までも救えぬ下衆が!」
「下衆? 当たり前だ! 俺は悪魔なんだからなぁ!」
そう言って、再びヴィーセは高笑いする。
「さぁてどうする? 確かにフルの力じゃない俺はお前らの相手をするのが背一杯だよ、認めてやるよぉ! だが赤色の炎は火力不足。青色の槍は俺を一撃で仕留めるほどの技はない。黒色は何もできない役立たず! そうして手をこまねいているうちにこの国は魔物に襲われる! そもそも俺の中のエルファスはいつまでもつかなぁ!」
「くっ……」
この場にいる全員が、間違いなく絶望を抱き始めていた。
……なにか、私にできることはないのだろうか?
私は、こうして見ているだけだ。何もできずにただ座っているだけだ。
もう二度と泣かないと決めたんだ。だからなんでもいい、私にできることが欲しかった。
私ができること、私の中にあるモノ……。
アムレーラさんから教わった精霊魔法がある。でも、この悪魔相手では通用しないだろう。そもそも、私の魔法は森の中でしか扱ったことがない。
じゃあ、王城の援護に向かおうか? いや、素人の私が部隊の中に混じっても足手まといになるだけだ。それに、それでは根本的な解決にならない。
アムレーラさんと言えば、渡されていたお札も持っていた。しかし、恐らくは移動用なのだろう。多分、今朝試した時に失敗したのの王城で使ったことが理由だろう。でも、それがどうであれこの状況をひっくり返す使い方は期待できない。
私じゃなくアムレーラさんだったらなんとかできるのだろうか? もしかしたらできるかもしれないが、彼女はここいない。仮に生きていたとしても、あの洞窟にだっているのは怪しいだろう。
その一瞬。私の中に何かが閃いた。それを必死に思い出す。
そうだ、あの洞窟。あそこで何があった? あそこには何があった?
私が連れ去られて目を覚ました時、ふと壁にかかっている魔具に触れようとして、アムレーラさんに止められて……。
――これなら、いけるかもしれない。もしかしたら、私がこの状況を引っ繰り返せるかもしれない!
そう思ったときは私は既に叫んでいた。
「フェリウスさん! パルシオンさん! ディテイスさん! 私に、考えがあります」
「! 何か、思いついたのですか、策を」
「はい。もしかしたら、ですけど……」
もうやるしかない。そう分かっているはずなのに、いざやろうと思うと足がすくんでしまった。肝心な時に言い淀む自分が情けなかった。
「大丈夫です、フラルさん。私はあなたの事を信じています。だから……きっと大丈夫です」
フェリウスさんは私の目を真っすぐに見てそう言ってくれた。
「花屋の娘……いや、フラル。今の俺らでは奴を倒せないのは事実だ。なんでもいい、話してみせてくれ」
パルシオンさんも私の名前を呼びながらそう後押ししてくれた。
「フラル……お前の覚悟は本物だ。やり遂げて見せてくれ」
ディテイスさんも私の覚悟を認め、激励してくれた。
そうだ。私は独りじゃない。いつだってそうだった。そんな簡単なこと、いつでも忘れない筈だったのに。
私のポケットの中に入れていたガーデニング用のはさみに手を伸ばす。触れているだけで、母が見守ってくれているような気がして、無限に勇気が湧いてくるようだった。
「少しの間、時間を稼いでください。私、今からアムレーラさんがいた洞窟まで行ってきます! あそこには、何でも封印できる杖があったはずです!」
「あの洞窟に、ですか!? しかし、この悪魔までも封印できるとは限らない。それに、今王城の外には魔物が……」
「分かってます。でも……一ミリでも可能性があるのなら! やってみたいんです!」
私はそう強く叫んだ。
「……分かりました。あなたに全てを託します!」
フェリウスさんはそういい、私に向かって微笑みかけてくれた。
「そろそろ作戦会議は終わったかぁ? 優しい俺は待っててあげた訳だが、そろそろ退屈過ぎて眠っちまいそうだ。ほら、続きと行こうぜ!」
「……じゃあ、行ってきます!」
私はそう言うと、背を向けて階段に向かって走り出した。
後ろは一度も振り返らなかった。もう二度と、後悔しないために。




