青年の名
クロエはただただ、混乱ていた。
目を開ければさっき自分の店にいた青年がいて、襲いかかってきた怪物たちを倒していたのだから。
クロエは堪えきれなくなって、青年に尋ねた。
「何者なの?あなた」
「答えたいのは山々だけど、ヤツらを片付け終わったらな。」
そういって青年は残り5体となった怪物たちに突進していった。怪物たちは、青年を倒そうと飛びかかったり、殴りかかったりするのだが、青年は軽々と避け、あっという間に剣を振るって怪物たちを切り裂き、全滅させてしまった。青年は剣にこびりついた血を拭き取りながら、まるで朝のあいさつのように爽やかに言い放った。
「こんなの、超余裕。」
そして、青年は瓦礫の方向に向かって叫んだ。
「もう出てきていいぞ。」
すると、少年の両親と思われる男女2人が、少年の方へ走ってきた。
クロエは少年を両親の元へと連れて行った。青年も、2人の後ろをついていった。しかし、青年は瓦礫から伸びた影を目撃した。それが怪物だと気づき、青年は影に近かった少年の両親を突き飛ばした。青年が腕時計の武器で反撃しようとした途端、銃声が響いて怪物はヘッドショットを食らって倒れた。
クロエは目をぱちくりし、青年も怪訝な顔をして辺りを見回していた。その刹那、武装した男性がこちらに近づいてきた。
手にはライフルを持っており、この男が撃った犯人だと一目でわかった。青年はげんなりして、お気に入りの服にあいた穴でも見るような顔で文句を言った。
「おい、ナック!いいとこ取りするなよ!!」
ナックと呼ばれた青年は、得意気に語った。
「そんなこと言わずに。ヘルプは完璧だっただろ?」
「俺に援護の必要はないって言ったろ。せっかく、返り討ちにするチャンスだったのに・・ウゼぇしムカつく!!」
一緒即発になりそうな青年とナックとの間にクロエは割って入った。
「ケンカは止めてよ!そして、そろそろ教えて。あなたは何者なの?」
青年は詫びて名乗った。
「そうだったな、悪い。俺はダイアンっていうんだ。あと言っとくけど、俺達はケンカはしてないよ。」
「そうそう、ただじゃれてるだけだよなー?」
「じゃれてもねぇよ。」
またダイアンとナックがケンカ寸前になり、
クロエが止めた。
「ケンカは止めてって、言ってるでしょ!!」