はじめてのログイン
また長文になってしまいました。
もしかしたら、このくらいの文章量が普通なのでしょうか……。
キャラネーム:Akira
種族:ヒト 職業:暗殺者
守護神:過去を司る女神”ウルズ”
ようやくアキラのキャラメイクが完了した。所要時間は小一時間強ほどであった。
「ふう、やっとキャラメイクが終わったよ。ありがとうキョウコ」
「ふふ。どういたしまして。さて、さっそくログインしてみたら?」
「そうだな!んじゃ、通話切るね〜〜」
「はーい」
そして、キョウコとの通話を終了し、アキラはWOGOをインストールしているVRデバイスを手に、ベッドに腰掛けた。
「いよいよ始まるんだ。俺のWOGOプレイヤーとしてのゲームライフが……!」
アキラはVRデバイスを頭部に装着して、横になった。そしてVRデバイスを起動するためのキーワードを唱える。
「Start World of Gods Online!」
そしてアキラの意識はデジタルの世界に誘われていった。
ーーーーーーーーーー
アキラが目を開けると、そこには中世風の街並みが広がっていた。
「ついにやってきたんだ。WOGOの世界に……!」
「はじまりの町」WOGOを始めたプレイヤーが最初に利用することになる町。規模こそ小さいものの、道具屋や武器屋、防具屋、ビギナー向けの各種クエストが凝集された町である。
様々な風貌のプレイヤー達や、一貫性を内包した容姿のNPC達。そのほとんどが剣や杖、盾や鎧を装備しており、自信がゲームの世界にいることを知らしめてくる。
「アキラ〜〜!」
そして、自身の名前を呼ぶ女性がやってきた。顔はキョウコにそっくりだが、纏っている衣装は純白のローブと十字があしらわれた縦長帽子。
「キョウコか……?」
「うん!!アキラ!さっそく狩りに行こう!暗殺者のスキル上げ素材獲りに行かなきゃ!」
このWOGOはレベル制MMOではない。モンスター素材を規定数集めてスキルを解放し、スキルを何度も使って熟練度を上げることで強くなっていく、少し特殊なスキル制MMOなのだ。なお、武器の性能にも左右されるのは言わずもがなである。
ちなみに、モンスター素材でスキルを解放していくシステム故に、プレイヤー間でのモンスター素材の取引は不可能となっている。
「そうだな!行こう!!」
そしてアキラ達は「はじまりの町」を出て、モンスターの湧く平原マップへと足を向けた。
「アキラ〜〜。暗殺者の最初のスキルの素材って何?」
「えっとねーー……」
アキラはいつのまにか右腕に装備されていた腕輪を二度叩いた。すると、視界にアキラにだけ見えるらしいメニューが腕輪から伸びるように展開された。この一連の動作がスムーズにできたのは、長きにわたるシミュレートの賜物故である。
そして、メニューからキャラクタータブを選択し、次にスキルという項目を選択する。すると、何列かの樹形図のようなものが横に伸びる形で表示されていた。そのどれもが暗くなっており、南京錠のアイコンによってロックされているらしかった。
「暗殺者の最初のスキルは……”スクランブルスライス”ってやつだね。短剣系スキルで、必要素材は……オオカマキリの鎌が3つだってさ」
「短剣スキルかあ。ナイフが初期装備に含まれてるから、装備しといてね」
「りょーかい!」
アキラは再びメニューを操作して、今度は所持品のインベントリを表示させた。
インベントリには初期装備のナイフと皮の盾とポーションが1つずつ入っていた。アキラはそのナイフをタップして、『装備する』『アイテム説明』『捨てる』と3つ出てきた選択肢のうちの『装備する』をタップした。
すると、右の手のひらに光が集まって行き、その光の塊は徐々にナイフのような形状になっていくと、最後に小さなフラッシュを起こして、鈍い光を放つナイフになった。
「ちゃんと装備できたわね。それじゃ、オオカマキリの湧く狩場まで移動するわよー」
「おっけー」
そしてアキラ達は5分少々徒歩で移動した。すると、腰の高さくらいある草が群生した草原に着いた。ちらほらと昆虫系モンスターの姿が見受けられる。
「じゃあ、こんな初級の狩場には必要ないかもしれないけど、バフをいくつか掛けとくわね」
「ほんと!?頼むよ!!スキル使うところ見てみたいし!!」
「ふふ。それじゃあ……”アタックエンチャント”!”ディフェンスエンチャント”!”ドロップアップエンチャント”!」
キョウコがそう唱えると、キョウコの装備している梢のような杖から赤色と青色と緑色の光が出てきて、2人のアバターに溶けていくようなエフェクトを引いて消えていった。
「おおおおーー!!」
「今のが、物理攻撃力上昇のバフと物理防御力上昇のバフとモンスター素材のドロップ確率上昇のバフよ。まあ、獲物は雑魚だからバフを掛けるほどじゃないんだけどね……」
「いやいや!そんなことないよ!これで戦闘がぐっと楽になると思うよ!」
「まあ、そうね。スキルを取得するまでは否が応でもスキルなしでの、プレイヤー自身のセンスで戦闘を行わないといけないから」
そうなのだ。このWOGOはスキル制MMOであるものの、魔法職以外は戦闘のほとんどの場面において、プレイヤーが自発的に武器を振り回して戦わなければならないのだ。スキルは敵の隙にぶちこむ大技的立ち位置にあると言える。
「よし、じゃあアキラのはじめての狩りをはじめましょうか」
「おう!!」
アキラは右手にあるナイフを握る力を強めた。
次回、戦闘シーンに入ります!!