プロローグ後編
かなり長文になりました!すみません!導入部なので、ご容赦ください
「ううむ。どうしようかなあ……」
アキラは決めあぐねていた。まず10種類の種族の中から"これだ!”というものが決まらない。ちなみに種族の一覧はこのとおりだ。
・ヒト
能力値はいたって平均。
神から疎まれていて、運は低くなっているが、なぜか神の力を引き出しやすい体質にある。
・サラマンダー
火属性系が得意で、攻撃型。
竜人のような外見であるが、総じて赤色が原色となっていて見分けやすい。
・ウィンディーネ
水属性系が得意で、魔法型。
魚人のような外見。水中での呼吸も可能。だが、熱帯地では全てのステータスが下がる。
・シルフィード
風属性系が得意で、スピード型。
一般的な妖精のような外見。サイズは人間大。風に乗ることで移動速度がさらに上がる。
・ノーム
土属性系が得意で、耐久型。
人に近いゴーレムと言ったら適当。腕力が総じて強い種族であるが、不器用な傾向あり。
・獣人
様々な種の獣人があり、総じて獣人種と呼ぶ。
どの種になるかはキャラメイク時にランダムで決まる。低確率だが、幻獣種も存在する。
・竜人
攻撃&耐久型。
竜の血を引いており、低確率で竜系モンスターをテイムすることができる。
・天使
聖属性系が得意で、回復魔法に傾倒気味。
白い翼と頭の上の環が目印。パーティを組むなら入れておきたい人材。
・悪魔
闇属性系が得意で、デバフスキルに富む。
コウモリの翼とツノが目印。この種に限り、守護神ではなく魔王や魔人を選択できる。
・ドワーフ
製作スキルに秀でており、生産系ビルドが組める。
若干背丈が小さいが、腕力は申し分ない。だが、決して俊敏ではないので、中衛向き。
となっている。誠に悩ましい限りだ。
「ん〜〜。どうしようかな。」
ヒトで神の力にワンチャンかけるのもいいし。獣人も良いし、天使も、いやいやドワーフで生産系やるのも良いなあ。
なんとも悩ましい。ううむ。このまま時間をかけるのもなんだしなあ。あ、ランダムで決めちまうか!たまには運にかけてもいいものかな。
そしてアキラはランダムのボタンを押す。ドゥルルルルルルルルルル……バチン!
「ヒトか……よし。頑張るぞ!」
さて、次は職業なのだ。これもこれで悩ましい。一覧は以下だ。
・戦士
前衛向き。どの武器種も使いこなせる戦闘のオールラウンダー
・僧侶
中衛向き。回復魔法に長ける。また、筋力値を上げればモンクのような戦い方ができる。
・魔導師
後衛向き。あらゆる魔法に通じている。範囲魔法で敵を一網打尽だ!
・神官
後衛向き。支援バフや蘇生魔法に重きを置いた聖魔法使い。
・暗殺者
トリッキーな動きで相手を翻弄する。恒久的ダメージこそ出しづらいが、瞬間ダメージはトップクラス。
・魔物使い
モンスターを低確率でテイムすることができ、テイムしたモンスターを育て、戦闘のパートナーとする。
・サムライ
前衛向き。刀を扱い、あらゆる古式剣術で敵を翻弄する。瞬間ダメージだけで見ればトップクラス。
・騎士
前衛向き。長剣と盾を携え、敵の攻撃を耐えて見方を守る。
・商人
NPCから安く買うことができるスキルを有し、商いをする上で重宝するスキルを多数身につけられる。
・鍛冶屋
非戦闘職。武具の製作にかけて右に出るものはいない。
むぅ。この中で俺は、戦士か騎士か魔導師に絞り込んでみたのだが、どの職も面白そうでなんとも決められない。
「んん〜〜。どうしようか……」
『ピリリリリリリリ…ピリリリリリリリ…』
突如、アキラの携帯が鳴る。相手は、幼馴染のキョウコだった。
「もしもし、キョウコか?どうした?」
「あ、アキラー?父さんから聞いたよー。ついにWOGO買ったんだって?」
「ああ、おじさんに聞いたのか。うん。やっと買えたよ〜」
キョウコは、あのゲーム屋のおじさんの娘で、アキラの幼少時代からの幼馴染だ。家がゲーム屋であることもあり、彼女は小さい頃からゲームが好きだった。アキラのゲーム好きも彼女に影響されたところが大きい。
「それでね、アキラのことだからキャラメイクに時間かけてるんじゃないかと思ってさ。WOGOプレイヤーからアドバイスあげようかと思って」
「ほんと?助かるよー!ちょうど職業決めあぐねてたんだ!」
キョウコはWOGOを発売日から始めている古参プレイヤーで、WOGOの内情に関してはそれなりに情報通だ。
「今、戦士か騎士か魔導師で迷っててさ」
「ふむふむ。相変わらずアキラは、見事にタイプのバラけた絞り方してるね。ちなみに私は神官で、バッファーやってるけど、アキラはアタッカーと壁役だったらどっち志望なの?」
「んー。そこが悩ましいんだよ。戦士で敵を叩くのも憧れるし、騎士で相手の攻撃を引き受けて味方を守るのも良いし、魔導師の範囲魔法で一網打尽にするのもかっこいいなあって」
「ははははっ。アキラは変わんないなあ。私が勧めて、初めてネトゲをするときもキャラメイクで3時間はかけてたよね」
「そう言うなよー」
確かに初めてのネトゲということで当時は職業決めに長考したものだが、結局複数キャラを並行して育てて、中途半端になってしまった思い出がある。今考えても、顔から火が出そうだ。
「あの時の教訓から、今回は1つに絞った方が良いと思うよー。それ以前に、WOGOは1アカウントに1キャラしか作れないからね」
「そうだよね…。うーーん、キョウコから見て、俺はどの職に向いてると思う?」
「んーー、そうだなあ、アキラ向きなのは……、暗殺者とか良いと思うな」
「あ、暗殺者!?な、なんでそうなったの!」
確かに暗殺者にも魅力は感じていたが、ここは王道を選ぶべきかと思ってあの3つに絞ったのだ。キョウコなりのセンスなのだろうか。
「幼馴染の勘ってやつよ。ハイ、決定ね!」
「そ、そう…?まぁ、キョウコの勘は当たるからなあ…」
キョウコの勘はよく当たるのだ。前に賭けをしたことがあったが、キョウコは賭けて負けたことがない。
アキラは渋々、暗殺者を選択する。
「次は守護神の選択だね。キョウコのオススメは?」
「んーー、暗殺者はスピード型に寄せるヒトが多いから、ヘルメスにする人が多いね」
「ならヘルメスにしたら良いの?」
たしかヘルメスは泥棒と旅人の守護神だった気がする。ヘルメスのサンダルは空も駆けることができるという話だ。
「いや〜。私が見た感じだと、暗殺者にヘルメスは合ってないと思うの」
「えっ??」
「たぶん、私の勘だと、"ウルズ"とかどうかしら!北欧の過去を司る女神!」
アキラはキョウコの破天荒な物言いに、思わずジト目で携帯を見た。
「騙されたと思ってやってみてよ!私の勘は当たるんだから!」
「う、うーん…。わかったよ」
暗殺者に女神を守護神にすることに得心がいかなかったアキラだが、キョウコの勘に賭けてみることにし、アキラはキャラメイクの全行程を済ませた。
ーーここからが、後に"陽炎の殺戮者"と呼ばれるようになる。アキラのゲームライフの始まりである。
次回、ようやくアキラがWOGOにログインします!