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九波異能学園の異端者共!  作者: みさたん
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まあ、不真面目なのか真面目なのか。

 祭野水樹は、後ろに座っている少年のことが、やけに気になっていた。何せこの少年、自己紹介が

「神原雪也っス。よろしく」

 だけだったのだ。無口系なのかと思えば、

「くぅ………うへへ………」

 今後ろで思いっきり熟睡してるし。何なのだろうかこいつは。

 転入してきたと思える彼は、授業そっちのけで夢の世界に旅立っていた。

 まあ、これは一年生の時の復習なので聞く必要もあまりないとは思うが。

「数十年前、人類を食糧とする生物『悪魔』と異能者たちの戦争が起きた。

 君たちはその時代生まれていなかったが、それは両親から教えられているだろう」

 初老の教師が語る。まあ確かにそうだ。悪魔という謎の生命体と異能者が現れた時、それはちょうど自らの両親が子供だった時に当たる。

「知っている通り、悪魔にはあらゆる兵器が効かなかった。何を当てても悪魔の操る未知のエネルギー、障気によって

 無効化されてしまうからな。しかも悪魔には獲物を逃がさないための結界技術まであった。

 人類はみるみる死滅していったわけだ。────まあ、そこで君たちのような異能者が現れて悪魔を駆逐していったのだが」

 教師は一つ息を吐き、

「その時の大規模な抗争を第一次異能戦争などと呼ぶのだがね。…………ここからが君たちの時代の話になる」

 クラスの中の数人が軽く身体を緊張させた。まだ、水樹達が子供だった頃。そこであった恐怖を思い出しているのだろうか。

「第二次異能戦争。ぴったり七年前に起きた、異能者対悪魔・人間の戦いだ。

 悪魔は宗教などでもある、人を誑かすような力も持っていた。それに心動かされた人間が、奴らとの契約を結ばされた。

 まあ、そこからだな。『悪魔契約者』が理性を失い、暴れだすようになったのは」

 水樹もよく知っている。悪魔と契約した人間は、三つの願いを叶えて貰う代わりに、自らの魂を悪魔に捧げた。

 そして、多くの被害者が出、原因となる悪魔を討伐することすら叶わなかったあの戦争が始まった。

「おそらく、最後に彼らが望んだのは、自己の永久化だったと言われている。

 そして、その願いは、間違った形で叶えられた。────望んだ者を、劣化した悪魔にするという方法で」

 気の弱そうな何人かがひ、と小さく悲鳴を上げる。一人の女子生徒が手を小さく挙げ、

「…………あ、あの。先生、そこは飛ばしていただけませんか……その……」

 家族が目の前で殺されたという者もいるだろうし、その時の光景を思い出して気分が悪くなったのかもしれない。

 教師もそれに気づき、そこを飛ばして、

「まあ、今では悪魔契約は禁忌とされている。余程頭のネジがぶっ飛んだような奴以外、そんなことはしないさ。

 …………そこ!」

 突然教師の手からチョークが飛び、水樹の髪をあおって、

「うご⁉」

 後ろで熟睡していた神原雪也の額に直撃した。彼の頭が仰け反り、

「いっっっっっっっったぁあああああああああ⁉」

 がったん。

 神原雪也が額を押さえたまま、椅子ごと傾いて床に倒れこんだ。

 何かごん、とか痛そうな音がして、床を転げまわる効果音がプラスされる。

「う、うごぉおおおおぉぉ………………何すんじゃこらぁ⁉」

 額を押さえた神原雪也が飛び起きて叫ぶ。

 涙目だった。

 教師はずかずかと神原雪也に近づき、自らを指さす雪也の腕をぺしんと叩き落として、

「授業はちゃんと聞きなさい」

 正論だ……! とひそひそ声が飛び交う中で、神原雪也は如何にもむくれた顔で乱暴に着席し、ぷい、と顔を逸らす。

 子供みたいな人だ、と思い、

「(あれ、意外と馴染みやすいかも?)」

 小さくクスリと笑った。


 しかし。


 翌日、初日に決めた入る部活。その結果である紙を見て、後ろの席である神原雪也がダラダラと冷や汗を垂れ流していた。

「…………あの、大丈夫かい? 気分が悪そうだけど」

 そう問いかけると神原雪也は、

「い、いいいいいいやダダダイジョブっすよぉえーと、祭野クン⁉」

 挙動不審過ぎた。昔の一発ギャグ、『ゲッ◯』みたいなポーズを決めて不自然に笑っている。

「あ」

 その拍子に紙の表が見えた。

【所属部活・生徒会執行部】

「…………え」

 生徒会。先日の生徒会総戦挙により決められた、最強の何かを持つ集団。それが、何故か、神原雪也という、謎の転入生が、

 生徒会、入り?

 更に文章の先には、

【役職・生徒会長】

 なーんて。……………。

「ええええええええええええええええええ!」

 生徒会長が、彼? 授業中いつも居眠りかましてる彼が?


 僕の入る(・・・・)、生徒会の会長?


 思わず叫んだ水樹は、バランスを崩して、椅子から転げ落ちた。


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