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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

血の七夕

七夕に暇だから書いた短編です。

文章量は少ないですが、読んでいただけるとありがたいです


また作中に出てくる芸能界は現実とは全く関係ありません。

7月7日。

オレたちは昨日まで平和で多忙な生活をしていた。

だが、それも終わった。

オレと妹はせまりくる恐怖から逃げている。

この、逃げ場のない学園を。


7月7日午前9時。

ここは特別支援学校。

しかし別に障害者が集められているわけじゃない。

ここに通っている生徒は・・・


「なあユナ、ドラマの撮影はどうなんだ?」


その少年は隣にいる少女に尋ねた。


「う〜ん、いつもどおりだよ。

 特に代わり映えのしない撮影だよ」


と答えた。

オレ、竜宮タツヤはこの学校に通っている。

オレたちの会話から分かる通り、オレたちは普通の学生じゃない。

オレたちは芸能人だ。

普段はドラマやテレビに出ているが、時間があるときはこうやって学校に通っている。

というよりもこの学校はそういう芸能人だけを集めた学校なのだ。

ちなみに横にいるのはオレの妹のユナだ。

ユナもオレと同じ時期に芸能界入りし、今や天才子役としてなをはせている。


「そういうお兄ちゃんこそどうなの?」

「オレか?

 まあ、オレも似たような感じかな」


オレが今やってるのはドラマ撮影というより、バラエティ出演が主となっている。

ドラマ撮影とは違った大変さがある。


「ていうか、久しぶりだな学校も」


この学校に来たのは半年ぶりだ。

ここに来るのがオレの1つの楽しみだったりする。

だが、半年ぶりといっても・・・


「よう、タツヤ!!

 昨日は収録楽しかったな!」


彼の名前は霧谷シュン。

先ほど彼がいったように、半年ぶりに学校には来たがこうして仕事場でクラスメイトと会うことは多い。

それでも仕事場で会うのと学校で会うのとはまた違った感覚だ。


「そうだな。

 シュンもここに来るのは久しぶりだよな?」

「ああ、そうだな。

 ホント、このごろの忙しさといったら。」


そう。

オレたちはこのごろ異様に忙しい。

理由としては


「芸能人の謎の連続殺人事件・・・」

「・・・ここではあんま大きい声で言うな」

「悪い・・・」


最近芸能人が何者かに殺される事件が相次いでおり、人手不足がどこの局でも起きていた。

なのでこうやって子役がいろいろな番組にでている。


「やっぱなんか怖いよな・・・」

「だな・・・」


オレとシュンは連続する謎の事件に恐怖していた。

だがオレたちはまだ知らなかった。

本当の恐怖が直ぐ側にまで来ていることに。


この学校の授業は基本自習式だ。

先生は教室の前におり、生徒は配られた課題をこなす。

わからないところがあれば聞きに行き、終わったら自由になる。

あんまりないのだが、突然仕事が入った場合、一度自習を終了し、また近いうちにやる。

芸能人のためだけに作らられた、異様な授業スタイルだ。

ちなみに、クラス分けは適当で年齢などは関係ない。

なのでオレとユナ、シュンは同じクラスだった。


オレは課題をほぼ終え、少し背伸びをした。

今日は仕事がない。

なので久しぶりに何処かに遊びに行こうと考えていた。

どこに遊びに行こうかと考えていた。

その時だった。


ウーーーウーーー


「な、なんだ?」


いきなりのサイレンが鳴り、クラスのみんなはパニクり始めた。

サイレンが鳴り終え、次に放送がかかった。


「みなさま、緊急放送です。

 この学校内に不審者が潜入しました。

 生徒は先生の指示にしたがって・・・ちょっとあなた・・・!!」


バァアーーン!!


放送は途中で途切れ、銃声が聞こえた。

ただそれだけの事だったが、オレたちをパニックにさせるのには十分だった。


「わああ!!!」

「おい、みんな落ち着け!!」


クラスの奴らは皆先生を無視し、喚きながら散り散りに逃げていった。

無論オレたちも例外ではなかった。

ただ少し違うのは


「ユナ!!シュン!!」


オレは二人を呼び、放送室とは違う方へと走った。

そう、オレは少し冷静でいられた。

なぜかはわからない。

だが、こうやって少し考えることぐらいはできた。

後ろを向くと二人もちゃんとついてきていた。

オレは止まって二人が来るのを待った。


「はあ・・・はあ・・・」


二人共息を切らしていた。

そう長い距離ではなかっただろうが、おそらく恐怖からくるものだろう。


「何なんだよ、いったい!!」


シュンはそのへんの壁を殴りつけた。


「オレだって聞きたいよ・・・」

「ねえ、これからどうするの?」


ユナが不安げな顔で尋ねてきた。

だが次の瞬間、


「この学校の生徒諸君、こんにちわ」


スピーカーから誰かわからない声がした。

だがオレには分かった。

こいつが犯人だと。

そして、その推測は合っていた。


「この学校はオレの仲間によって包囲されて、密室となっている。

 そして、お前らをこの学校内で殺す。

 すでに数人かは死んだ」

「・・・!!」


死んだ?

誰が?

犯人は続けた。


「逃げたくばオレたちを全員殺すことだな。

 まあ無理だと思うが」


そう言って放送は終わった。

だが、この放送はありがたかった。

今の状況を知ることができた。

オレたちは包囲され、まずい状況にある。

ならどうするか?


「シュン」


オレは隣にいる友人に声をかけた。


「なんだ?」

「逃げるぞ」


宛はない。

だが、ここにいるよりはマシだと思った。


「ユナ、絶対にオレから離れるなよ?」

「分かった!」


こうしてオレたちの逃亡劇は始まった。

そう思っていた。


バァアーーン!


銃声。

そして、


「・・・・・!!」


血しぶき。

その血の持ち主は


「・・・シュン?」

「くっ・・・」


シュンは呻きながら、その場にうずくまった。

見たところ急所は外れたらしいが、それでも出血の量は多かった。

オレは銃弾がやってきた方を見た。

そこには迷彩服に身をまとった中年男性がいた。


「逃げろ・・・」


シュンは傷口を抑えながら、立ち上がりそう言った。


「何いってんだよ?!」

「オレはこの傷だからもう走れない。

 オレと一緒にいたらお前らも巻き添えを食らう」

「そんな・・・」


シュンは中年男性の方を向き、そして


「早くいけ、タツヤ!!!」


と叫び、中年男性の方に突進していった。

オレはそんな姿を見て、一瞬迷ったが


「・・・死ぬなよ」


ユナの手を握り、反対方向に全力で走った。

その後、数発の銃声が鳴ったがオレは走りを止めなかった。



何分走っただろう。

走ってる途中に血まみれになっている生徒を何人も目撃した。

その中にはもちろん知り合いもいたし、顔が潰れ、誰かわからなくなっている人もいた。

正直、気持ち悪くもなった。

だがオレたちは走るのをやめなかった。

死んだ人たちを弔うためにも。


そしてオレとユナは体育館にやってきていた。

そこでオレは体力が尽き、壁際に座り込んだ。


「はあ・・・はあ・・・」


だが、運命はオレたちを休ませる気はなかったらしい。


「よう、ちょこまかと逃げやがって」


声のする方を向くと、そこのは迷彩服のあの中年男性がいた。

その服はすでに大量の血痕がついていた。


「もうお前たちで最後だ。」


中年男性は銃口をこちらに向けた。


「あの世でお友達と再会を喜ぶんだな」


そして引き金をゆっくり引いた。

オレはユナをかばうように抱きしめ、引き金を引かれるその瞬間を待った。

諦めたわけじゃない。

だが、もうオレには逃げる気力もなかった。

だがせめて、オレの妹は死んでも守る。

そして、引き金が引かれ、


バァアーーン!


オレは意識を失った。


目を覚ますとそこは見慣れぬ場所だった。

だが


「お兄ちゃん!!」


ユナが泣きそうな顔でオレに抱きついてきた。

オレはどうやらベッドに寝ているらしい。

何が起きたんだ?


「目が覚めましたか?」


そこには警察の人がいた。


「あの、ここは?」

「ここは病院です。

 銃で打たれたあなたは奇跡的に助かったのですよ」


自分の体を見ると胸部に妙な違和感を感じた。

おそらくここを打たれたのだろう。


(って、ギリギリかよ・・・)


あと数ミリずれていたらオレはここにいなかったのだろう。

運命は、オレを生かした。


それから警察の人は事の顛末を話してくれた。

要約するとオレが意識失ったあと、警察がやってきたらしい。

今までこの犯行グループを逮捕する機会を探っていたらしく、今回やっと逮捕できたらしい。


「残念ですが、生存者はあなた方だけです

 我々の行動が遅かったばかりに・・・」

「いえ、こちらこそ助けてくださってありがとうございました」


警察の人は頭を下げて病室から出て行った。

そしてオレは妹の方に向き


「ユナ、もう芸能界はやめよう。

 またこんなことがあるのはゴメンだ」


ユナは頷いた。

こうしてオレたちはこの日を境に芸能界をやめた。


後にわかったことだが、犯人の動機は芸能界への恨みらしい。

昔テレビに出ていたころにプロデューサーにいじめを受けており、その逆襲で芸能界関連の人を殺して回っていたらしい。

仲間と思っていた奴らは傭兵で、命令されていただけだったらしい。

ので刑はその主犯は判決30年を言い渡され、傭兵は懲役3年を言い渡された。


のちにこの事件は七夕の日に終結したので、『血の七夕』と呼ばれた。


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