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暗い短編

雨の中

作者: 谷川山

傘をさして細い路地を歩く。


ぴと…ぴと…ぴちゃっ


後ろから人の気配は無いのに音がする。自然と早足になって、帰り道を急ぐ。早く歩かないと後ろの音に追い付かれる気がして。


ぴと…ぴと…ぴちゃっ


音の速さは変わらない。だけど、常に少し後ろから音が聞こえてくる。

携帯は圏外で、誰にも連絡できない。街灯も無くて、真っ暗闇の中一人きり。

とても心細いし、雨のせいだけで無い寒気がする。


(んっ?)

『痴漢注意』の看板が目に入る。やめてくれ、余計に怖くなる。

水の跳ねる音以外は聞こえなくなってきた。雨の音はどこか遠い。

傘をさしていても濡れ鼠になりながら、ひたすら家へと歩く。


ぴと…ぴちゃっ…ぴちゃっ


歩くペースをまた上げる。それでまだ後ろから音が聞こえてくる。周りの音が小さく聞こえる分だけ大きく。

軽いパニックになりながら急ぐ。もう少しで着く。その事に安堵しながら。


ぴちゃっ…ぴちゃっ…ぴちゃっ


ガチャガチャ

ようやくたどり着いた玄関の鍵を大きな音をたてながら開けて、中に急いで入る。


バシャッ


後ろから何かに飛びかかられる。悲鳴をあげられずにパニックでドタバタと暴れる。

腰を抜かして座り込んだところにのし掛かられる。


「ひっ」


声にならない悲鳴を上げて、目の前にある身体に覆い被さるようにのし掛かってきた犯人を見つめる。



良く見てみると、犯人は駅前でよく餌付けをしている犬だった。

いつの間になつかれたのか、つぶらな瞳で私を見つめてくる。

言い様の無い虚脱感に襲われながら、私は濡れるのも構わずにその犬を抱きしめた。



次の日、私は学校を休んだ。風邪をひいて。

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