隣の席のうるさい女子と大人しい女子…オレが好きになったのは…
オレは、高校二年生。
学校にもだいぶ慣れた。
しかし…隣の席の人には、慣れない。
というか、苦手。
一時間目…
「あ、たけし消しゴムかして‼︎」
「あ…」
…
⁉︎
返事する前に、めっちゃ高速スピードで消しゴムを奪う、こざるみたいな隣の席のギャル由華絵さん…
そして…
「この消しゴム消しずらー」
と、文句を言いながら返してきた。
「ありがとうよ、たけし」
…
「オレ、たかとなんだけど」
「細かいなぁ。たけしもたかともさ、た‼︎からはじまるんだからいいじゃん。細かい男は嫌われるよ?」
…
別に、あんたに嫌われるなら構わないけどねー。
そんな、うっさい隣の席の人とは大違いな大人しい女の人に、オレは恋をしている。
それは、数ヶ月前にさかのぼる。
オレのバイト先に現れたその彼女は、清楚系な服装で、さみしそうにベンチに座っていたんだ。
だから、オレは遠巻きからだけど、その人に手をふった。
その人は、少しだけ微笑んで手を振りかえしてくれたんだ。
一目惚れだった。
あんまり顔がはっきりみえたわけじゃないけど、でも好きだなぁってなぜかそう思ったんだ。
その人は、不定期だけどオレのバイト先によくあらわれる。
でもさ…いつもさみしそうなんだよね。
…
「あー、もうマジでウザい‼︎この問題意味わかんないんですけどー」
…
あの人のことを考えていたら、隣の席の人がうるさすぎて、現実に引き戻された。
「いつも元気そうでいいね。」
「あー…ね!てかたけし、シャー芯一本くれない?」
…
「いや…だからオレは、たかとだし…。ま、いっか。はい、どうぞ」
「サンキュ!あ、いったっ‼︎」
「大丈夫?」
「あ、うん。平気平気ー」
…
元気だなぁ。
この人…
あれくらい、あの人も元気なら…いいのに。
…
最近は、いつもあの人をなにかと思い出している自分がいる。
…
今日…くるかな、あの人…
いつものように、バイトをしていると、来た‼︎
あの人が来たっ‼︎
でも…やっぱりさみしそうだった。
オレは、彼女の隣にそっと座った。
はじめは、驚いた顔をしていた。
でも、しばらく座っていたら、話しかけてきてくれたんだ。
「わたしね…居場所がないんだ。家では、ずっとパパとママが喧嘩しててさ…学校でも、表面上の友達しかいない。彼氏には、浮気されてさ…はは…もうさ、笑うしかないよねぇ…。ほんっと、バカみたい。」
無理して笑ったかと思ったら、いきなり泣きだす彼女の頭に、そっと手をのせて、背中を優しくさすった。
しばらくすると、
「ありがと!黙って話聞いてくれて。少し元気でた。この前も、もしかして…手ふってくれたよね?」
って、頑張ってオレに微笑んでくれた。
オレは、黙ってうなずいた。
「じゃ、またね!」
少し…元気でた…かな?
どうしたら、あの人は…心から笑えるんだろう…。
心配だな…。
…
そんな心配をよそに、隣の席の由華絵さんって人は、今日もうるさい。
いや、うっさい‼︎
「ねぇねえ‼︎ねえねえねえ‼︎」
「んー?なんだよ…」
まだホームルームが始まらないので、寝ていたのに、起こされた。
「あのさ、海の見える学校ってさ…よくない⁉︎」
「え…?」
「いいよね‼︎だって、学校の教室から海見えるんじゃん?よくない⁉︎」
…
唐突に、どうしたっていうんだよ…
「あー、いいねー」
「もー…テキトーすぎー…」
⁉︎
んっ?
「あの…」
「はぁあー、あくびでたぁ」
…あ、なんだ。
あくびしたのか。
目がうるんでるから、泣き出すかと思ったぜ。
てか…
声が…
声が、あの人に似ていて少し驚いた。
それから数日後、またあの人がベンチに座っていた。
オレは、また黙ってそっと隣に座った。
「あ、また来てくれたんだ…。」
黙ってオレはうなずいた。
「あのさ…わたし、もうここには来れないの。」
…
「転校するんだ‼︎海の見える学校なの。楽しみだなぁ…。」
そう言いながら、涙を流した。
⁉︎
「楽しみなのに、泣くなんて…変だよね。今までありがとうね。うさぎさん!おかげで、あっちでも、頑張れるよ。」
…
「うさぎじゃねーよ。」
「えっ⁉︎しゃべった‼︎」
「今は、休み時間だし。あと、オレ犬な。そんでもって、オレは…」
…
「たかと…?」
⁉︎
「なんでわかった?」
「声…声が…」
…
「まぁ、バレたら仕方ないな。ごめんな…ずっと黙ってて。てか、さっきオレも気づいたんだ。学校とめっちゃ違うじゃん。化粧も服装も…。でも、話聞いて…もしかしてってさ。」
オレは、そっと着ぐるみの頭を外した。
「転校…するんだ?」
「うん。親が離婚する…って。」
彼女の目から、ポロポロ涙が溢れだした。
「居場所…」
「えっ?」
「居場所なら、あるじゃん。オレがいつでも話聞くから。だから、だから…そんな泣くなよ。オレがいつでもさみしい時は、ふっ飛んでいってやるから」
…
「うん…うん。ありがとう、たけし犬」
「だれがたけし犬だよ」
「ふふ」
彼女が笑った。
おしまい♡




