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第2話 魔女狩り②

 魔女の少女に指定された場所へと向かう。

 そこは街から少し離れた森。

 動植物が多く生息する、自然の豊かなで美しい森だ。


 もっとも、今いるのはその森の奥深く。

 魔獣の縄張りになっており、一般の人間が近づくことはまずない危険な場所だ。


 この世界には、普通の動物とは別に魔獣が存在する。

 獣の姿をしたものもいれば、竜のような姿のものもいる。

 人間と魔族が分かれたように、動物の一部もまた魔獣として進化したらしい。


「約束通り来てやったぞ」


 どうせ近くにいるであろう魔女に声をかける。

 すると、少女の声が今度は直接、耳に聞こえてくる。


「アハハッ! 早かったね! もっと待たされるかと思ったわ」


「人を待たすのは嫌いなのでな。さぁ、時間も惜しい。早く始めようか」


「そんな慌てないでよ~。ちょっと待ってねぇ~」


 魔女がそう言うと、正面から人影がこちらへと歩いてくる。


「初めまして。魔族の綺麗なお姉さん」


 魔女は、無邪気な笑顔を浮かべる。

 歳はまだ15歳くらいだろうか。

 背は低く、長い白髪をを左右に分けて編みこみ、肩のあたりに垂らしている。

 服は魔女らしくローブなのだが、少女の趣味だろうか、所々に花の装飾がされていた。


「随分と若い魔女だな。まだなり立てか?」


「そうなのよ~。ソーちゃんはまだ魔女になって1年目なの」


「そうか。まだオシメがとれたばかりの子供か。だが、魔法の技術は高そうだな」


「あら! 褒めてくれるの! ソーちゃん嬉しくて泣いちゃいそうだよ~」


 魔女は、「う~……」と泣くようにして腕で目を隠す。

 だが、どう見ても演技にしか見えない。

 口元が笑っている。


「魔法の技術は高いが、泣く演技は未熟なようだな。口元が笑っているぞ?」


 そう言うと、彼女は腕をどけて驚いてように目を見開く。

 相変わらず噓くさい。


「あら、やだ! お口を隠し忘れちゃったよ~。ごめんごめん!」


 魔女は、道化師のように表情をコロコロと変えていく。

 どれが彼女の本心であるか掴むことが出来ない。

 面倒だ。こちらから始めてしまおうか。


「茶番はいい。私と戦いたいんだろ? こっちはとっくに準備出来ているぞ?」


 何もない空間から大鎌を取り出す。


「アハッ! 大鎌が武器って、お姉さん。死神みたいだね? でももうちょっと待ってよ。1つだけ聞きたいことがあるの。いいよね?」


「さっさとしろ。でないとその五月蠅い口から二度と声を出せなくなるぞ?」


「おー怖い! 大丈夫! 1つだけだから」


 魔女が、無邪気にウインクする。

 気色悪い。


「お姉さんは、キルシュちゃんの友人? それとも……恋人かな?」


 キルシュちゃんだと。

 まさかこいつも……


「さぁ、なんだろうな。まだ出会って何日も経っていないからな」


「それは知ってるよ~……。だって、全部見ていたからね」


 魔女の雰囲気が変わった。

 口元は笑みを浮かべているが、目だけが笑っていない。

 先程までの子供のような無邪気さは消え去っており、殺気が駄々洩れだ。


「そうか。君は彼女のストーカーだったか。これは失礼した。挨拶もせずに彼女に近づけば、それは怒って当然か」


 私の言葉に魔女がむっとする。

 こんな安い挑発にのるなんて、見た目通りの子供のようだ。


「ああ? 誰がストーカーですって? 私はキルシュちゃんの恋人よ? 恋人に近づいてくる虫を払うのはパートナーの役目として当然でしょ?」


「恋人だと? ははっ! そんな冗談はよせ。彼女に恋人などいない」


「なんで、出会って間もないあなたにそんなことがわかるのかしら?」


「わかるさ。彼女に直接聞いているからな」


「なっ!?」


 魔女が目を見開く。

 そんなに驚くことなのか?

 ただ、会話の中で聞いただけのことだぞ?


「別に普通のことだろ? 彼女に始めてお店に招かれた時に会話の流れで聞いたよ」


「う、うそ言わないで!? 私でさえキルシュちゃんと会話する時は、緊張してまともに会話出来ないって言うのに……ぽっと出のあなたがそんなこと……出来るはずがないわ!!」


 やはり、そうか……

 この魔女も私と同じなんだ。


「ふふっ、なんだ。貴様もキルシュさんに惚れているのか?」


「!?」


 魔女の顔が真っ赤に染まる。

 図星なようだ。

 流石、キルシュさん。こんな可愛らしい魔女さえも虜にしてしまうとは、魔性の女だ。

 私が守ってあげなければな。


「べ、別に……惚れてなんか……」


「じゃあ、私が彼女の恋人に立候補しても大丈夫だな。さっさと告白してくるか……」


 魔女が慌てる。


「ダメに決まってるでしょ!? キルシュちゃんは私の物なんだから!」


「別に貴様の物ではないだろう? だって、彼女とまともに会話出来ないのだからな」


 私も変な口調になってしまうが、会話は出来る。

 この魔女よりは、何歩も先に行っている。

 魔女が悔しそうに唇を噛む。


「この……魔族の薄汚い女が……ぶっ殺す……」


「ははっ! いいね! 私も貴様にイライラしていたとこだよ! 彼女に群がる虫は取り除かないといけないからね!」


 大鎌を構える。


「アハハッ!! それは私のセリフよ!!」


 魔女も空中へと浮かび上がりながら、こちらに向かって手をかざず。


「貴様は彼女に相応しくない!!」「あんたはキルシュちゃんに相応しくないのよ!!」


 魔女狩りの時間だ。


 ◇◇◇


「ほらほらほら!!」


 魔女が空中に座り込みながら自身の周囲に、魔弾を生成してはこちらへと放つ。

 その密度は、尋常ではない。

 こちらに攻撃の隙を与えないように間髪入れずに放ってくる。

 森の中を走り回りながら、攻撃を避け続ける。

 避けられた魔弾は、地面に着弾すると凄まじい爆発を起こす。


 ……やはり、口だけでは無いようだな。


 想像した通りそこら辺にいる魔女とは違うようだった。

 いや、想像を超えているかもしれない。

 この密度で魔弾を放てる魔女には出会ったことがない。


 ……だが、接近してしまえばどうってことはないな。


 魔女の弱点は皆同じ。

 近接戦闘に弱い。

 だから、魔女は自分に近づかせないように遠距離から攻撃し、距離を詰めさせないように逃げ回る。


 ……だから、こうすれば……


 瞬時に避ける方向を変更して、魔女に肉薄する。

 これで――


「チェックメイトだとでも思ったかしら?」


「!?」


 脳が危険だと訴える。

 咄嗟に魔女から距離を取った。


「あら? もう引いちゃうの? もう少しで殺せたのになぁ~……」


 魔女の右手には魔法陣が展開していた。

 どうやらこちらが接近してくるのを待っていたらしい。

 危うく一撃をもらうところだった。


「魔法を2つも同時展開するとは、流石だな。称賛に値する」


「あ・り・が・と! お姉さんに褒められると嬉しいな!」


 通常、2種類の魔法は2つ同時に展開することは出来ない。

 これは魔法の詠唱が混ざり合ってしまい、魔法が発動出来なくなるからだ。

 だが、この魔女はそれをやってのけた。


「お姉さんも凄いわよ? あれだけの魔弾の中を一発も当たらずに私に近づくなんて、そんなの普通じゃできないわよ。ねぇ? 魔族だとそんな奴がゴロゴロいるの?」


「どうだろうな。私が知る限りはそんなにいないだろうな」


 多分だが、この魔女の攻撃を避けきることが出来る者は数えるほどしかいない。

 それほど、彼女を攻撃は苛烈かれつだった。


「そうなんだ。良かった~……こんなにも簡単に避ける人が沢山いたら、私泣いちゃってたよ~……まぁ、そいつらを全員殺した後にだけどね?」


「ふふっ、そうだな。殺さないといけないな?」


「そうよ。殺さないとね?」


 ……ああ、なんて楽しい時間だろう。これもキルシュさんのおかげだ。


 キルシュさんに感謝しつつ、魔女の首を狩りに行った。

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