手札すべてジョーカー 実は使えねぇ・・・
「それで貴方の能力は結局なんなの?
氷の壁を出すから氷関係の能力かと思ったらその次はどこぞの魔砲少女ばりのビームだすし、翼に輪っかまでるし」
「翼に輪っか?」
そんなものでてたのか?
「気づかなかったの?
魔方陣がでたと同時に貴方の背中から光る羽と頭には輪っかが浮かんでたわ」
そういえばあのときでた技っぽい名前は確か『ミカエルブレイザー』だったっけ。
「なるほどね。
ちなみに俺はまだ完璧に把握してないんだけど。
そうだな、とりあえずあのとき頭に浮かんだものを話そう」
「そうね、貴方は能力の説明を受けてないものね。
私は一応受けたからだいたいの把握は出来てるけど、あんな全然違う系統のことが出来たらそりゃ戸惑うわよね」
「俺は今の現状に一番戸惑ってる」
「それは言わないお約束よ」
そりゃそうだ。
「とりあえず、俺があのとき思い浮かんだのは・・・なんというか」
「なんなのよ、そんないいにくいものなの?」
まあ、確かに言いにくいというか表現しにくいというか。
「そのまま言葉で表すならPCのウィンドウだ」
「はぁ?」
そうだよな。
普通そう思うよね。
俺もそう思った。
「それで空欄の行と“生成”っていうアイコンがあるんだがそれを押すと空欄だった
行に技?っぽい文字がでて、その後にあの現象がでた」
「まって、出来ることはまさにファンタジーなのにそのいかにもファンタジーから外れてSFからも外れた珍回答は」
俺に分かったら苦労はしない。
「ちなみに最初の氷の壁の時は『フロストガード』、2回目のビームが『ミカエルブレイザー』」
そういったら美津はさらに頭を抱えてしまった。
「何、その中二みたいな技名は」
俺もそう思う。
「まあ、恐らくだけど心当たりがあるわ」
「あるのかっ!?」
このちんぷんかんぷんな能力に心当たりがあるってドンだけ!?
「ちょっと前に○○メーカーってはやってたの知ってる?」
「あぁ、脳内メーカーとかそういうやつだろ」
二つ名メーカー的なものをやってダチと笑った記憶がある。
「えぇ、それね。
それで亜種的なもので必殺技メーカーってのがあったのよ」
はぁ?
「まさかそれだと?」
「絶対ではないけど。
これから実験して見ないと分からないけど可能性はあると思うわ。
必殺かどうかは分からないけどね」
そりゃあそうだ。
『フロストガード』なんてどうきいても防御技だし。
「まあ、その理論で行くと同じ技が出る確率はかなり低い?
「多分ね。
技はあの極太ビームを見れば分かるけどかなり強力だけど選択肢がないならかなり使いづらい能力と言わざるを得ないわね」
なんかにやにやしながら言われるとかなりむかつくんだが。
「だって、私と比べて優遇されっぱなしなのにこれで能力がチート過ぎたら理不尽すぎるわ」
そりゃそうだが顔に出すなよ。
「まあ、色々試さないとだめね。
最初の壁と後のビームだけでも体力の消費が桁違いじゃない。
対人に使ってたら過剰戦力過ぎるし、連戦も無理だしね」
「出来たら移動系や回復系もあるといいんだけどな」
「ただの必殺技メーカーでないことを祈るのね」
「すでに只のではないがな」
「さて能力についてはいいわね。
他にあるかしら」
「そうだな・・・」
「とりあえずはこれぐらいか」
「そうね、知っていることは全部話したと思うわ」
割と長い時間話していた気がする。
おかげでのどが渇いた。
「それでこれからどうしようか」
「それはこれからは運動共同体と考えていいのよね」
「もちろん、同じ境遇のヤツがいるだけでも負担がだいぶ違うしな」
そういいながら地面に手をついて立つ。
普段着とはいえ男の時のと替わらない服でだぶだぶになった分を折っているのだがやっぱり動きづらい。
「まずは街探しかな。
いいかげんにお風呂に入りたいし、一般人の食事もしたい」
「同感ね。
情報探しも言葉の通じる人がいなきゃ出来ないしね」
そういいながら美津は俺の体を駆け上って頭に乗った。
「なぜ俺の頭に乗る」
「やっぱり猫になってしまった身としては人の頭でゆっくりしてみたいのよ。
頭に猫が乗ってる美少女って萌えじゃない?」
この女、俺より遙かにディープなオタクらしい。
「それが許されるのは2次元までだ。
リアルでやったら只普通に乗りにくくてすぐに落ちるだろう」
「ふっ、キャットオブザキャットの私にかかれば余裕よ!」
頭の上で何か偉そうな美津にあきれながら俺は歩き出した。
まあ、本人も久しぶりに人にあったから興奮しているのだろう。
今日くらいは大目に見ようと思う
。
「それにしても悠は口調を直したら?
せっかくの美少女が台無しよ」
「やだよ。
俺はお前と違って諦めていないんだ。
男口調は俺の最後の砦だ」
「私だって諦めてないわよ」
キャットオブザキャットと言ったのはどこのどいつだ。といってやりたい。
「で、どこへ向かってんだ?」
「えっ、悠、分かってて歩いてたんじゃないの?」
「いや、適当に歩いてたけど何も言わないから」
「えーっ、っ!?とっ、わわっ!?」
頭の上で落ちそうになっている美津を支えてやる。
「まあ、1ヶ月歩き続けた私が何も見つけられなかったんだからどっちへ行っても同じよね」
「この林の最深部に向かってないことを祈ろうか」
前途多難な俺達だった。