鈍感王と幼馴染の告白
俺、佐野宮斗の前の席には、幼馴染がいる。
名前はミレイア。外国の子だ。
教室の電灯の光が反射して光沢を持った真っ白な髪は腰の辺りまで長く、サファイアの様な濃くはっきりとした瞳、透き通るような白い肌。
それに、どの角度から見ても美しく、整った顔立ちをしている。特に時々見せる太陽のような輝きを放つ笑顔はこの上ないほどに可愛い。
幼稚園の頃からずっと仲良くしてくれた唯一の女子の友達とも言えよう。
時には喧嘩し、時には一緒に泣く。
そんな日々を送ってきたミレイアは、いつしか心の拠り所となっていた。
しかし、俺にとって気に食わない事が一つあった。
俺が教室に入るなり、ミレイアは楽しそうな笑みを浮かべながら、隣の席の男子と談笑していた。
俺が「おはよう」と言えば、「おはよう」と返してはくれるのだが、それっきりだ。
隣の男子というものは、学年で一番のイケメンと言われている奴だ。女子からの人気は高く……って、そんな話はどうでもいい。
とにかくミレイア、お前は数日前までは俺とずっと一緒に登校して、ずっと仲良くお喋りしてたじゃないか。
なのにどうして、他の男子なんかに目移りするんだよ。
そんな疑問と嫉妬が頭の中をグルグルと駆け回る。
そんな中でも嫉妬心が大きく、このままでは頭が爆発してしまう、この疑問を晴らしたいと言わんばかりに、俺は既に行動に移していた。
「すまないが、ミレイアに用があるんで……」
と言うと同時にミレイアの手首を掴み、少し強引に引っ張って廊下に連れ出した。
「ミレイア! なんで他の男子なんかと楽しそうに話してるんだよ! ここ数日、俺への態度が冷たい気もするし!」
つい声を張り上げてしまった。だが、思ったことをそのまま彼女に伝えた。
すると、彼女は安心したかのような表情をして。
「ふふ、良かったわ。まだ私、飽きられてなかったのね」
と、いたずらな笑みを浮かべ、鈴を転がすような声色で言った。
正直、何を言っているのか分からなかった。
俺が飽きる?ミレイアに?
ありえない。俺たちはずっと一緒に生きてきたのだ。今更彼女に飽きてほったらかすなんてことするはずがない。
「ど、どういうことだ?」
恐る恐る理由を尋ねた。
「ホント鈍感ね。私たちもう高校生よ。わ、私だって、恋愛感情が湧くのよ!」
突き放つように少し乱暴で、それでいて少し頬を赤らめて言った。
「えっと、恋愛感情が湧くって……俺に?」
「ず、ずいぶん自信があるようねぇ。鈍感癖が少し治ったんじゃないかしら? でも……間違いじゃないわよ」
ミレイアは上目遣いで少し潤んだ瞳をした。
この時、初めて恋愛的な「愛おしい」という感情が現れた。
「やっと宮斗が近づいてくれたんだもん。だから私……今までの、『幼馴染』としての関係が崩れてしまうかもしれないのを覚悟で言うわ」
ミレイアは拳をギュッと強く握っている。それ程の覚悟と緊張に押されているのが分かった。
いつもなら鈍感な俺ですら、次に何が起こるかを予測することが出来た。
固唾を飲み、彼女の言葉を受け止める準備をした。
「私……宮斗が好き。幼稚園の頃も、小学生の頃も、中学生の頃も、今も……ずっと好き。だから、私と付き合って!」
直後、俺の中で何かが崩れる音がした。と、思った時には彼女を抱きしめていた。
「ひゃっ!?」
「……俺も好きだ、好きだぞミレイア。もっと早く気づかなくてごめん」
「……ううん、いいのよ。今はこうして幸せなんだから」
ミレイアも俺の背に両手を回し、強く抱きしめ返してきた。
「……ううっ、ありがとうぅ」
泣きそうだった。いや、泣いた。
視界がぼやけていてよく見えなかったがミレイアも少し泣いていた気がする。
もっと早く彼女の本心に気づいてあげられたら、もっと早く幸せになっていたかもしれない。
だが彼女の言うとおり、今が幸せならそれでよいのかもしれない。
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「うーん、でもなんでさっきまで隣の男子と楽しそうにしてたんだ?」
「……やっぱり鈍感癖は抜けてないようね。宮斗にこうして気づかせるために仕掛けた、いわば罠よ。こうでもしないと、いつまで経っても幼馴染のままだったじゃない」
「うう、ミレイアには敵わないな……」
「ふふっ」
鈍感癖、早く治さなきゃな。
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