どんぶらこ
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おじいさんは山へ山菜採りに、おばあさんは川へ酒瓶を冷やしに出かけました。
おじいさんは全身汗まみれになり、せっせと大量のフキを収穫することができました。カゴ一杯の山菜をかついで山を下りると、さっそくフキの皮を剥いて塩もみし、たっぷりのお湯で5分ほど茹でました。それの粗熱をとってひと口大に切ると、包にくるんで川へ向かいました。
おばあさんは石に腰かけてキセルを吸いつけ、青空を眺めながらぷかぷかと雲のようなけむりを吐き出しています。
「おーい、婆さんや。上等のフキが採れたぞー」
「うるさいね、ほんとに。そんなに大きな声出さんでも聞こえとるわい。このくそじじぃ」
おばあさんは、よっこいしょと腰に手をやりながら立ち上がりました。
「やれやれ、この石に長い時間は座れん。痛いわい。爺さんや、なんか適当な椅子はないかねぇ」
ふたりはきょろきょろと辺りを見渡しました。すると川上から、どんぶらこっこと大きな桃と丸太が流れてきました。
「爺さん、あれを見なされ!」
おばあさんは浮遊物を指さし、おじいさんも、よしきたとばかりにふたりは川下へとよぼよぼ歩いていくと、それを待ち構えました。
せーの、といってふたりは丸太を持ち上げ、川から出ると、適当な場所にそれを転がしました。桃はそのまま下手に流れていきました。
おばあさんは早朝から川の中の石影に沈めておいた酒瓶を持ってきて、湯呑みにどぶどぶと注ぎます。おじいさんは包を開きます。ふたりはフキを摘んでぽいっと口へ放りこんでから、酒を含みました。
「ぷはーっ!五臓六腑に染み入る旨さじゃ。ちんちんに冷えたウォッカとフキは最高の相性じゃ。のう婆さんや」
「わめくでねぇ!鼓膜が破れるから小さい声で話せといっとるだろうが、くそじじぃ」
おばあさんはキセルの口に刻みたばこを詰め、朝から用意してあった炭火で火をつけると、ぷかりと紫煙をくゆらせました。
数日後、川下の町で赤子の遺体が発見されたそうな。