おてて
わたしと理玖斗は、顔を見合わせた。
?
「とりあえず、行こっか」
理玖斗に言われて、鷹見先輩と伊吹先輩を二人にした。
わたしたちは、どこに向かうわけでもないが、園内を歩きながら理玖斗に質問した。
「なんで理玖斗は、わたしと伊吹先輩が付き合ってるって思ったの?」
「だって…そりゃ肩抱き寄せられて歩いてたし…」
「あー…。あれはフリなんだって。伊吹先輩は、鷹見先輩を大切におもっているみたい。だから、わたしたちは付き合ってないの。」
「大切におもうってことは、好きってこと?なら、あの二人って両思いなんだ?」
「えっ?そうなの?てか、理玖斗って鷹見先輩と付き合ってるんだよね?」
「いや、付き合ってないけど?なんか鷹見さんは、この前までオレと鷹見さん本人が両思いだと思ってたみたいだけどね。」
「あー、でもやっぱり幼馴染の伊吹先輩が好きって、なった?ってやつ⁇」
「だろうね」
「そっか…」
わたしは、なんだかホッとして…なんなら嬉しかった。
だって理玖斗がフリーってことでしょ?
このまま、今日いい雰囲気にもっていって、告白しちゃう?
…
でも、たぶんフラれるよね。
わたしたちは、ただの幼馴染だし…なんなら妹みたいな存在でしかないって、言われるよね。
だから、告白するのはやめにした。
「ねぇ、理玖斗」
「なに?」
「あれに乗りたい!」
目の前にある、キラキラのメリーゴーランドを指差した。
「うん、乗ろっか」
理玖斗とメリーゴーランド。
なんだか、メリーゴーランドってみるとワクワクしちゃうんだよね。
宝石箱みたいな…なんだろう。
キラキラしてて、かわいくて…
夢の中みたいなね。
そんな夢時間を、理玖斗と数分過ごすんだ。
なんか、嬉しいな。
そう思って、ワクワクしながらメリーゴーランドにのって、思ったとおり夢の世界にしっかり入り込んだ。
でも、夢はやっぱりあっという間に過ぎてしまった。
「ねえ、理玖斗、楽しかったね!」
「うん。夢の国って感じだったね」
「ほんとそれ」
「…あのさ、冬芽」
「うん?」
「あー…、次はなに乗りたい?」
なにか言いたげな理玖斗は、やっぱりなにかを言うのをやめたっぽい?
なんだろうって思ったけど、無理矢理聞き出すのは、いかがなものでしょうってことで、それ以上は聞かないことにした。
だって…こわいから。
何がこわいって、そりゃお化け屋敷に決まってる!
そこに入りたいっていうなら、鷹見先輩と伊吹先輩に一緒に行ってあげてくださいって、お願いしに行くようだ。
わたしは、絶対無理‼︎
ぜーったい入りたくない‼︎
「冬芽?どうした?」
「えっ⁉︎な、なにがっ?」
「なんか、へんだよ?」
「そ、そんなことないし」
チラッとお化け屋敷を思わず見てしまった。
すると理玖斗がニヤっとして、
「あー、わかった。冬芽お化け屋敷に連れて行かれると思ってるんだ?」
「そ、そんなこと…」
「入る?」
「いや‼︎ぜーったいイヤ‼︎」
「フフ、冬芽は昔からこういうのきらいだもんなぁ。なんならここ通るのも怖いくらいじゃない?」
「う…うん。ほんとはめっちゃ怖い。」
理玖斗は、眉をさげて小声でかわいいやつめって言ったかと思えば、いきなりわたしの手をキュッと、握りしめた。
「えっ?」
「だって怖いんでしょ?」
「う…うん」
手を繋いで、お化け屋敷をなんとか通過した。
理玖斗が察しのいい人幼馴染で、ほんとに助かったと、つくづく思う。
理玖斗の横顔をみながら、手このままずっと繋いでいたいなぁって、そう思ったけど仕方なく手、もう大丈夫だよって言おうとしたそのとき、伊吹先輩の声がして
「えっ⁉︎二人もそういう関係⁉︎」
と言ったかと思えば、伊吹先輩は鷹見先輩と繋いだ手を高々と上にあげた。
んっ⁉︎
わたしと理玖斗は、一瞬なんですか⁉︎ってなった。
そのなんですか?の表情をみた伊吹先輩が、ニコニコしながら、
「オレたちも付き合うことになりましたー」
と、照れ笑いしていた。
鷹見先輩は、なにも言葉を発さなかったけど、でも少し照れている様子だった。
いつもは、ツンとしているイメージだけど、今はなんだかかわいく感じる鷹見先輩がすごく羨ましかった。
でも、わたしたちは…付き合っていない。
スルッと理玖斗から手を離し、
「わたしたちは、付き合ってないです。」
と言い、お化け屋敷のことをはなしてから改めて理玖斗と、鷹見先輩と伊吹先輩におめでとうを伝えた。
伊吹先輩は、ニッと笑った。
鷹見先輩は、薄っすらとわたしに微笑みかけたようにみえた。
そのあとすぐに鷹見先輩が
「あれに乗りたいわ」
と、観覧車を指差した。
「あー、オレたちも乗ろっか」
と、理玖斗がわたしを誘ってくれた。
しかし、鷹見先輩がいきなり
「わたし…一回目は、蒼一とじゃなくてあなたと乗りたい」
と、こちらに駆け寄って来たのだ。
えっ⁉︎
なぜ⁉︎
続く。




