バイト
買い物が終わり、ラムネを一口飲んだ。
美味しいー‼︎
でも、やっぱりじゃま。
このビー玉って…
これってさ、鷹見先輩からみたわたし…じゃない?
…
そうだよね。
いつまでも彼氏貸してたら…そりゃね。
だれだってあんな態度にもなりますよね…。
ただ、舌打ちとか…
いったりきたりするビー玉をみながら、ぐびぐびとラムネを飲み干した。
…やっぱり苦手だな。
このビー玉も鷹見先輩も。
そして、こんな自分も。
こんなもん、とっちゃえばよくない?
力任せに蓋を開けてみた。
そしたら…
まさかの蓋があいた。
え…
幼い頃、何度もビー玉とろうとしても取れなかったのに…
まさかこんなに簡単に…
ビー玉が簡単にとれてびっくりしたし、嬉しかった。
綺麗に洗って、ティッシュで拭いて太陽にかざしてみた。
うわぁ!
キラキラしてて、とても綺麗だった。
瓶に入っていたときは、とってもうとましかったのに…。
瓶の中と外じゃこんなにも違うんだ?
決めた‼︎
わたし、変わる‼︎
ビー玉みたいになりたい‼︎
そう決めたわたしは、ギュッとビー玉を握りしめて理玖斗の元へ行った。
「理玖斗‼︎」
「おー、本日二回目のご来店じゃん。どうした?」
…
「あの…」
「うん?」
「あのね、理玖斗…もう、やっぱり一緒に帰らなくて大丈夫だから!だから、もう教室来なくて大丈夫だからね。ほら、わたしだって友達と帰ったり…するし」
理玖斗は、一瞬何かを考えたみたいだったけど、すぐに
「わかった。でも、なにかあったらすぐにオレにいいなよ?」
って、優しく言ってくれた。
…
そういうところが、やっぱりいいなって思って…涙が出そうになった。
でも、グッと堪えてビー玉をギュッと握りしめた。
なるんだ。
強くなるって決めたんだから。
鷹見先輩には、きちんと言おう。
もう一人で大丈夫って!今まで彼氏を貸してくださりありがとうございましたって言うんだ!
そう決めた。
学校で…ちゃんと…って思っていたのに…
え?
なぜ⁇
なぜか学校で言おうとしていたのに…その前に、バイト先で鷹見先輩と遭遇…
心の準備が…
「あれ?えと…」
「わたしの家、ここのケーキ屋さんなの。だから忙しい時だけ手伝っているのよ。別に黙っていたわけじゃないから」
…
「あ…、そうなんですね。よ、よろしくお願いします。」
「よろしく」
…
「あの、後でお話があるんですけど…」
「今日は、人手が足りないから学校とかで聞くでもいいかしら?」
「あ、はい。」
こうして、いきなり鷹見先輩とのバイトが始まった。
先輩は、意外と優しく丁寧に教えてくれた。
舌打ちされなくてホッとした。
その日は、バイトの内容を覚えるので精一杯で、無駄話も何にもせずに無事終了した。
なんか…学校とバイト先での鷹見先輩は、少し違った印象を受けた。
そりゃ、接客するのに無愛想じゃね…
お客さんに向ける笑顔は、やっぱりつくづく美人な人なんだな、敵わないなって強く思う。
次の日
鷹見先輩は、美人なんだよねーってボーッとそんなことを考えていたら、無愛想な鷹見先輩が、両腕を組んで不機嫌そうにこちらをみて立っていた。
それに気づいたわたしは、急いで席を立ち、鷹見先輩に昨日のお礼をいい、そのあともう理玖斗と一緒に下校しないことを伝えた。
すると鷹見先輩は、
「そう。」
とだけいい自分の教室へ帰っていった。
バイトのときとは違って、相変わらずクール美人だ。
鷹見先輩は、わたしが昨日話があるって言ったから、わざわざわたしの教室に来てくれたのかな?
…
放課後
その日は、バイトだったので鷹見先輩もいるのかなって思っていたら、いなくて代わりにいたのは、あの時鷹見先輩と一緒にいた男性だった。
「あ、今日一緒なんだねー。オレ伊吹ー、よろー」
…
「あ、はい。わたしは華乃冬芽です。よろしくお願いします」
伊吹先輩チャラい感じなのに、エプロンとかしてなんか可愛らしいな、って少し笑えた。
「えっ、どうしたの?ニコニコしちゃって。そんなにケーキ好き?」
「あ、いえ…気にしないでください。」
「そ?あ、お客さんだ。いらっしゃいませ」
「い、いらっしゃいませ」
と、少し遅れていらっしゃいませをすると…
「え?理玖斗じゃない」
「よっ、バイト頑張ってる?」
「うん、まだ不慣れだけどね」
「どれがおすすめ?」
「えと…」
わたしがどれもおすすめで迷っていたら、
「もちろんモンブラン。泉は、モンブランが好きだよ。」
ってわたし達に割って入ってきた伊吹先輩。
泉?
だれ?
「君は、理玖斗くんなんだよね?鷹見の幼馴染の伊吹です。」
「あー、鷹見さんの。」
「泉のこと、そんなに詳しくないんだ?泉は、いつもオレに氷河くんが、氷河理玖斗くんがって言ってるけど?」
「あ、オレたちはあまり話さないし、お互い刺激しあっているってだけで」
…
わたしと伊吹先輩は、一瞬ポカンとした。
話さないけど刺激し合う仲って何?と。
ポカンなわたしたちに理玖斗は、
「モンブランか。オレも好きだな。じゃあそれ三つください」
そう言いながらお財布を出す理玖斗。
わたしたちは、モンブランを丁寧に箱に詰める人と、お会計で二手に分かれた。
ケーキを受け取り理玖斗は、
「じゃ、頑張ってね」
と、わたしに笑顔を向けて大事そうにケーキを持ち帰っていった。
刺激し合う仲って何⁉︎
…
意味深な発言だけ残して帰ってしまった理玖斗なのです。
続く。