だれですか?
理玖斗に、彼氏役をうまく断れずに…ズルズルとしてしまっているわたし。
「あ、あのさ理玖斗…」
「ん?なに?」
「た、鷹見先輩って…いつもニコニコしてるよね…」
「あー、なんか最近そうだよね。オレもびっくり」
…
そう…なんだ?
じゃあ、今までって…無愛想な彼女だったのかな?
…
でも、それでも美人だしクールな彼女も理玖斗的には、ありなのだろう。
どうしよう…
彼女がわたしのこと嫌がってるから、もう一緒に帰らなくていいよなんて言えないし…
そもそもわたしが、ほんとうの彼氏でもいたらいいんだけど。
そんな人いるわけないし、そもそもわたしは…理玖斗が好きで…
「ハァァ」
思わず漏れてしまったため息を、すかさず聞き逃さない理玖斗。
「どうしたんだよ?なんか元気ないじゃん」
「え、そんなこと…あるに決まってる‼︎」
「やっぱりか。どうした?」
理玖斗があんまり優しく顔を覗き込むから…だからわたしは、泣きそうになったのを堪えて明るく、
「空曜日、却下されて落ち込んでるー」
って笑った。
そしたら理玖斗も、
「まだそんなこと言ってたんかい」
って笑い返してくれたから、なんだか少しホッとした。
このまま、前みたいに理玖斗の部屋でゲームとかしたかったけど、でも彼女がいるのだから、そこまで甘えちゃいけないってことで、わたしは極力理玖斗の部屋には、お邪魔しない。
なんなら、バイトを始めようかなって思っているところだ。
理玖斗離れしなきゃだ。
次の日
張り切って、バイトの面接に早速向かった。
んだけど…
あれれ?
鷹見先輩が理玖斗じゃない、ほかの男の人といる。
「もー、蒼一は黙ってて」
「えー、いいじゃん」
と、仲良さげだ。
二人をジーッとみていると、うっかり二人に気づかれてしまった。
「あ、幼馴染ちゃんだ」
さっきの笑顔は、どこへやらってくらい一気に表情が曇る鷹見先輩。
…
「あー…どうも」
「だれ?」
「氷河くんの幼馴染」
「あー、あの全然かまってくれない彼氏の」
…
それって、やっぱりわたしのせい…だよね?
「で、君は?」
わたしをじっとみいる鷹見先輩のお友達。
君は?とは、なんだろう?
…
「えと…なんですか?」
「君は、彼氏いないの?いるか。かわいいもんなぁ」
その君は?だったのか。
よかった。
君は、どういうつもりでいつも帰りおくってもらっているの?って言われているのかと思って、正直焦ってしまった。
…
「いませんけど…」
「マジ⁉︎なら、オレと付き合うか?」
バシッと肩を鷹見先輩に叩かれる男性。
「いてーだろ。ヤキモチやくなって」
「やいてない。あんたは、いつもそう。軽いのよ。ほこりみたいにふわふわふわふわ」
「ほこりっていうなや」
「ほこりは、ほこり」
…
なんか、楽しそう。
理玖斗といるときも、鷹見先輩はこんな感じなのかな。
「あの、わたしこれからバイトの面接なのでこれで失礼します」
「え?どこでバイトするの?」
興味津々な男性
わたしは、近くにあるケーキ屋さんを指差した。
「えっ?それは…」
鷹見先輩が驚いた顔をしていた。
そして何かを言いかけたとき、くいぎみに
「オレ、そこでバイトしてるよ。受かるといいね!そしたら、よろしくー。頑張ってね」
と、男性が言った。
…え、あの人そこでバイトしてるんだ?
ケーキ屋さんとか、ちょっと意外だな。
ところで鷹見先輩は、なんて言おうとしてたんだろ?
…
面接中、鷹見先輩とさっきの人が頭から離れなかった。
二人は、なんで一緒にいたんだろう?
たぶん男の人は、同じ学校じゃないよね。
みたことないし…
学校違うのに、あんなに楽しそうに…
理玖斗といるときよりも、生き生きしてみえた鷹見先輩。
え、待って‼︎
わたしが理玖斗と一緒に帰ったりしてるから鷹見先輩…浮気してるんじゃないよね⁉︎
面接がおわり、慌てて理玖斗のもとへ向かった。
「理玖斗‼︎」
「あー、冬芽じゃん。珍しいな、オレの部屋来るなんて」
呑気なこと言って…
「あのさ、鷹見先輩が…」
「なに?鷹見さんが?」
「えと…ううん。」
言えないよ。
そうだよね…。
彼女がほかの男の人といたよ?なんてさ…
「あ、わたしね。バイトするの。さっき面接受かって。で…鷹見先輩の知り合いがそこで働いてるって…ね。それだけ。」
「バイトかぁ。受かってよかったね。今度バイト先に遊び行っていい?」
「うん…」
…
理玖斗…
彼女とられちゃうよ?
もどかしい…
言いたいのに言えない…
鷹見先輩のこと…色々話したい。
でも…全部言えないことばかりで…
ラムネのビー玉が入り口で詰まって、ラムネが飲めないよってなる感じ…。
あのビー玉って…なんの役割なんだろう?
早く飲みたいって思えば思うほど…ビー玉が詰まって飲ませてくれない。
わたしが焦りすぎてるから、ビー玉みたいに言葉が詰まるのかな…。
…
わたしは、何やっているんだか。
「あ、じゃあわたし買い物いかなきだから帰る」
「おー。じゃあな」
「うん」
…買い物ついでにラムネでも買ってこようかな。
久々に飲んでみたくなっちゃったな。
続く。