こわい先輩
さかのぼること数ヶ月前。
わたくし冬芽は、大好きな幼馴染の理玖斗の高校を受験いたします‼︎
そして、ただの幼馴染から恋人になれるように頑張っております‼︎
もちろん勉強もね。
てなわけで、どうしても受験に合格しなきゃだから、最近理玖斗の家に行けてないけど、合格したら、サプライズで入学式にびっくりさせてあげるんだぁって、張り切っていたの。
でもね…
理玖斗には、彼女がいたんです。
それはそれは超絶美人な人。
前に理玖斗に学校の写真見せてもらったんだけど…
その人と付き合っていたなんて…知らなかった…。
その先輩は、鷹見さんっていうみたいで…
理玖斗をみるなり、頬を赤く染めて朝から学校の門のところで、見つめあっていたの。
わたしは、明るくサプライズしたけど…ほんとうは、泣き出したいくらいだった。
彼女いたのもびっくりだけど、朝から見つめあっててさ…
しかも彼女めちゃくちゃ美人な大人の女性って感じがしてね…
わたしには、ない大人の要素満載って感じが溢れている人だった。
…
理玖斗の横を歩く彼女…。
わたしの知らない理玖斗と彼女の時間…
そうだよね。
わたしが受験勉強している間も…二人は、そういう仲になって…
だから、余裕な彼女はわたしを幼馴染ちゃんって呼んだり、彼氏をわたしに貸してくれるんだよね?
仮の彼氏なら、いくらでもどうぞって余裕なんだろうな。
彼女って立ち位置は、最強なんだって思い知らされた。
購買での理玖斗と彼女の会話は、とても生々しく…胸が張り裂けそうだった。
二人が…
理玖斗が…わたしの知らない理玖斗がいる…
…
でも…それでも理玖斗は、わたしのために彼氏役をしてくれると言ってくれた。
もうそれだけでわたしは、充分嬉しかった。
冬芽を守りたいって…その言葉が聞けて、わたしは…それだけで幸せな気持ちになれた。
いきなりの彼女発覚で、真っ暗な森に迷い込んだ気分だったけど、彼女さんの優しさでわたしは、救われた。
はじめは、そう思っていたの。
でも…
鷹見さんって人は、わたしと廊下ですれ違うときに、めちゃくちゃ睨んできたの。
理玖斗といた時とは、まるで別人のようだった。
でも、わたしと理玖斗が放課後一緒に帰ろうとしていたら、鷹見さんが現れて笑顔で
「じゃあね〜」
って言ってて…
なんだか、笑っているけど笑っていない…みたいな…
とても怖かった。
でも、理玖斗は…全然気づいていないみたいで…。
そんなある日、鷹見先輩がわたしの教室に来て、
「どう?最近は、変な男に付き纏わられてない?」
と、聞いてきたの。
だから、はい。大丈夫ですってこたえたんだけど…
ちょうど反対の校舎に理玖斗がいて、
「冬芽ー」
って手を振ってくれたの。
そしたら、鷹見先輩が笑顔で理玖斗に手を振りながら…
チッて、舌打ちをしたの。
わたしは、えっ?ってなったよね…。
で…
「彼氏、そろそろ返してもらってもいいかな?もうわるい虫いないなら大丈夫だよね?」
って睨まれてね…。
わたしは、はいって返事をした。
そして理玖斗にも、もう大丈夫だからって伝えたんだけど、オレ暇だし気にすんなって言われちゃってね…。
部活のない日は、いつもわたしを迎えに来てくれる理玖斗。
鷹見先輩と理玖斗は、同じバレー部どうしだから、たぶん部活のときに一緒に帰っているんだろうけど…でも、最近鷹見先輩が怖くて…だから、もうわたしは、大丈夫だし一緒に帰らなくていいって理玖斗に言ってるのに、理玖斗は心配だからって、ずっと迎えに来てくれてね…
この前、鷹見先輩についに
「あんた目障りなんだよね」
って言われて…
でも、周りのみんなは、鷹見先輩と仲良くていいね、って言って…
だれも鷹見先輩を悪く言う人がいなくて、先生からの評判もいい鷹見先輩…。
理玖斗にも、いつもニコニコだから…
だから、わたしは…どうしたらいいかわからなくて…
…
放課後、いつものように理玖斗がわたしのクラスにお迎えにやってきた。
「冬芽、帰ろっ」
て。
本当の彼氏なら喜んで
「うんっ!」
って返事するけど…
彼女持ちの偽彼氏なんだよね…理玖斗はさ。
だからわたしは、力なく返事をしたの。
「…うん」
って。
「どうした冬芽?元気ないじゃん?」
…
理玖斗は、すぐにそういうところ見抜いてくるんだよなぁ。
「ううん、なんでもないよ。アイス切れだ。早く帰ってアイス食べなきゃだ。ねっ!」
嘘の笑顔で誤魔化したんだけど…わたしの視線の先に鷹見先輩がわたしを睨んでいた。
理玖斗に見えない角度から…。
鷹見先輩は、わたしを睨んだあとすぐに
「氷河くん!幼馴染ちゃん、こんにちは!これから帰りかな?気をつけてね〜」
と、ニコニコ顔で言ってきた。
…
よくそんなにコロコロと表情を変えられるもんだなって、感心すると同時に怖さがまさった。
鷹見先輩は、ニコニコしてるけど…内心わたしが邪魔なんだから。
理玖斗に彼氏役断っても、心配だからっていうし…
鷹見先輩からは、うとまれて…
どうしたらいいんだろう…
…
鷹見先輩の怖い笑顔に見送られて、わたしは理玖斗と下校した。
続く。